J・G・バラードの「ハイ-ライズ」 と オルテガ・イ・ガセットの「大衆の反逆」
この2冊は警告の書である。ハイライズは1975年に、大衆の反逆は1929年に発表されているが、同様の警告は人類史上数えきれないほど繰り返されてきた。悲しむべき事に今の日本においてこれらの本で描かれた風景は「予言」や「警告」ではなく「退屈な現実」である。
(周りからみれば)どうでもいい理由で人を殺してしまう事件と、それを面白おかしく取り上げるメディア。繰り返される紛争と戦争。高度なテクノロジーとグローバリゼーションが生み出す腐敗した豊穣の中で熟成される狂気とそこに身を委ねることで得られる危険な安心感。
自分がすでに狂人になってしまった事を自覚するためにもう一度この本を手に取ってみることにした。そしていつかこんな本をおすすめしなくてもいい世界が来ることを願って、この2冊をおすすめしたい。