見出し画像

『空気を読む脳』を読む②~「呪い」からの解放

2021年のお正月にやっていたTVドラマ『逃げ恥』は「呪い」からの解放についてのストーリーでした。

1.容姿や性へのペナルティ

女性の容姿が優れているかどうかで人生が変わる。

これは本当なのでしょうか。結論からいうと、本当です。しかし、それは実は多岐に渡っています。じじつ1979年のコロンビア大学の調査によると、「外見の良さは管理職で雇用されるばあい不利に働く」というレポートをしています。また男性は女性が肌を露出すればするほど「モノ」として見るようになる、つまり、対象を気遣ったり、尊重しようとする気持ちが失われるという調査結果もありました。コミュニケーションを必要とする仕事の場合、容姿が優れているほうが有利です。ほかにも男性の場合は「体育会系男性が就職などの際、高評価される」「女性は読めないタイミングで妊娠出産があるから「使い勝手」が悪い」といった言説もあります。

こういった「女性らしさ」「男性らしさ」が求められる社会は平安時代からありました。紫式部日記には「わたしは漢字どころか「論語」だって読めるけど漢字の「一」すら読めないふりをしている。(なのに、清少納言は恥も外聞もなく漢詩なんかの知識をひけらかしてムカつく)」と書いてあるくらいです。

こういった「妬み」の感情はなぜ出てくるのかというと「オキシトシン」という脳内物質がつかさどっていると言われています。「オキシトシン」は絆を高めたり、仲間と助け合ったり、親子の愛情だったり、信頼を強めたり、といった行動に直結します。飼い犬と目が合うとオキシトシンが分泌される、ともいわれます。けれど、オキシトシンはやっかいな物質で、増えると同時に妬み、憎しみなどの感情も高まるのです。つまり「仲間とうまくやっている共同体の和を乱すなんてとんでもない!!」ゆえに、その相手を攻撃をしてもよい、という脳の働きになってしまうのです。

オキシトシンの濃度が高い時にひとは「外集団バイアス」と「社会的排除」という心理現象を起こします。それは自分たちの集団以外の集団を貶めること、そして異質な人を排除する、ということです。具体的にはヘイトスピーチや倫理的問題に対するSNSのバッシングなどに行動となって現れます。このやっかいな点は、客観的には醜悪でも本人にとっては正義の行動である点です。最近の研究では一時期「生産性がない」というヘイトスピーチを受けた同性愛は実際には動物のあいだにも一定数あり、その存在は群れの子孫繁栄に寄与している(子育てや繁殖活動をしない個体があることで、群れの生産性があがる)とする研究もあります。

わたしたちはもう少し自分たちから異質なものを除く行為に生産性がないことを認識し、客観性を確保するようオキシトシンのコントロールが必要かもしれません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?