"仏"と呼ばれる私がキレた!とある取材の話 〜反面教師から学ぶ良いインタビュアーのたった一つの条件〜
私は「仏の詠美衣」と呼ばれるくらい、めったなことでは人に怒らないんですよ。が!!!!久々にすごくイラっとしたことがあったので、今日は書いて発散させていただきたいと思います!!笑
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私のことをもっと知りたいから話を聞かせてほしい!という人から取材の依頼が来た。その人は友人の友人で、一度私のライブにも来てくれていた人だったのだけど、そのときは軽く挨拶くらいで、きちんと話したことはなかった。
取材がスタートして開口一番、「どうして音楽活動を始めたんですか?」と、超初歩的かつざっくりとした質問が投げかけられる。
(え、もう音楽活動始めて7年目になるのに、そこから話さなきゃダメー?!)と正直思いつつ、(でも一度ライブにも来てくれてるし、基本的なプロフィールは知ってるはずだよな…もう1年も前のことだし、忘れちゃったのかな?でも取材前に下調べくらいしてるよね?もしくは、すでに知ってるけど、あえて読者のために形式的な質問から始めてるのかも…!!)と思うことにして、最初は頑張って丁寧に答えようとしていた。
けど、話が進めば進むほど、"ここまで下調べしてないインタビュアーっているのかー!!!!"と思わされるほど、愚問続き。。。もうだんだん答える気力も笑顔も失せてしまった。
しかも、スマホにメモを打ち込むのに必死で、私が喋ってる間、目も合わせない。(さすがにそれはその場で、話に集中できるようにメモじゃなくて録音にしたらどうかと提案したけど。ってか、メモとるならせめてノートとペンにしてくれ…)
だんだんイライラと困惑が隠しきれず、口数も少なくなってしまった私のために、同席してた友人がフォローして別の質問に変えたり、深く突っ込んだ質問をしたりしてくれて、なんとかインタビューとして成立したんだけど、この友人のほうが、いや、比べるのは申し訳ないくらい遥かにインタビューがうまかった。
例えば、自分の視点を織り交ぜながら、「もしこのとき、私が詠美衣だったらこういう風に行動していたと思うんだけど、詠美衣はなぜそうじゃなくて●●をしたの?」という具体的な聞き方をしてくれたり。
インタビュー後、彼から感想を聞かれたので、正直に「下調べを全くしてないのが、話しながらよく分かって、ショックだった。プロフィールとかブログとかを読めばすぐわかるようなことばかり聞いて、それを一から説明させるのは相手に失礼だよ」と答えた。
すると、予備知識なしで、先入観なくその人に会って話を聞くのが自分のスタイルなのだという言い分(言い訳?)が返ってきました!((((;゚Д゚)))))))
(このスタイルで100人以上インタビューしてきたとのこと・・・ひえええ恐ろしい!!しかし今までインタビューされた人たちは何も感じなかったのだろうか、そして何も彼にアドバイスしてあげなかったのだろうか、、、)
これをリクルートの面接に置き換えると、いかにヤバイことなのかわかりやすいと思います。
求人に応募して、履歴書を丁寧に書いて事前に先方に送ったとします。
面接当日、面接官が事前に送った履歴書に目を通さず、すでに履歴書に書いた基本的な情報を質問してきたら、ちょっと不信感募りませんか?それずっと続いたら、答えるの嫌になってきませんか?
締め切りに間に合うように、一生懸命、丁寧に履歴書を書いた時間も、今同じことを答えてる時間も、なんて無駄なんだろうーーーって思いませんか??
面接の一番の醍醐味って、履歴書に書いてあることを踏まえて、気になったことや、もっと詳しく聞きたいと思う点を深掘りして質問して、答えてもらうことじゃないですか。
だから、彼がやってることは、そもそもインタビューではない、インタビューとは呼べないものなんですね。インタビューが上手な友人が言っていたのが、
"インタビュアーは、読者が知らないような、聞きたいと思ってることを相手から聞き出すのが仕事"
つまり、調べれば誰でもわかるような基本情報以外のものを引き出してくるのがそもそもインタビューってことですな。
まぁ、真っさらな状態で、先入観なくその話を新鮮に聞きたい、という気持ちもわからなくもない。
でも、、、!!!!インタビュアーとしてそれをやっちゃうのは、勇者以外の何者でもないでしょーーーーーー!!!!
有名なプロインタビュアーさんでも、"下調べは本人よりも詳しくなるほど徹底的にやる"って言っているくらいなのにーーーー!!下調べなんていくらしても足りなくて毎回インタビューの後に悔しい思いをすると言ってるくらいなのにーーーー!!
それに、先入観ってのは、"中途半端な情報"だけをかじるから生まれるもんだと思ってる。ちゃんと多面的に情報を集めたり、実際に自分の目で確かめたりしていけば、よりニュートラルに見れるようになると思うんだけどな。
それはイチロー選手の記者会見で愚問と良問の差がはっきりと露わになったことからも言える話じゃないですか。イチロー選手や野球のことをよく知りもせず、中途半端な予備知識(もしくは皆無)とステレオタイプだけで適当なボールを投げた記者は皆、イチロー選手に相手にすらしてもらえませんでしたよね。。。
一瞬にして相手の懐に入れる高度なコミュニケーション力がある人ならともかく、やっぱり質問される側としては、自分のことを理解してくれてるなぁと感じる人や、自分の大事な作品をちゃんと聴いたりしてくれている人の方が、好感を持って、心を開いて話しやすいのです。
せっかくお互い貴重な時間をとって、直接会って話すんだったら、ネットとかで探したらすぐ手に入るような既出の情報よりも、もっとお互いの化学反応で生まれるような創造的で深い対話を引き出してもらいたいなって思います。
っていうか、もし私のことを本当に知りたいって思うなら、ライブとかトークライブに何度でも来てもらうのが一番いい方法なんだけどね。(ぼそ)
これは、ライブに来て欲しいから言うんじゃなくて、本気でそれが一番良い方法だと思ってるから。私はライブで、過去も現在も未来もすべてさらけ出すようにしてる。かっこつけミュージシャンがやりがちな、ステージの表と裏のギャップが大きくならないように、自分に正直であることを心がけてる。
どういう想いで音楽をしてるかとか、どういう想いでこの曲を作ったとか、どういう想いで海外に行ったかとかこれから何をやっていきたいとか・・そういうのも、他のアーティストよりMCで伝えてる比重は大きいほうだと思う。
それでも私に直接聞きたいことがあるのなら、そのとき初めて取材を申し込んでください・・・と言いたい。私に限らず、これから誰かを取材し続けるなら、どの人に対してもそういう心積もりであってほしいなと思いました。
はぁ、、、なんか、ほんと、疲れたなぁ。
イチロー選手の引退会見には到底及ばないけれど、予備知識なしで愚問を連発する記者にキレていたイチロー選手の気持ちに、少しだけ近づけた気がしたので良しとします。