あの頃以前と、あの頃以降
あの頃わたしたちは、どうかしてた。
知らないモノ
見えないモノ
今までに無いモノ
どこから来るのか分からないモノ
不安と恐怖に世界が包まれた。
ソノモノの怖さもあったけれど、
何年も経つうちに、次第に
人のココロを蝕んでいった。
1番怖かったのは、
隣りの人間だった。
人々がそれぞれを監視する生活。
他県ナンバーの車
どこへ出掛けていたのか
マスクしてない人を全員が見る
楽しい時間はSNSに載せられない
消毒してなかったよ、あの人
誰が一緒に外出してたのか
大きな咳が聞こえる
隣の人の距離、なんか近い
肩身がせまくて、
誰もがマスクのせいだけじゃなく、
息を潜めて、苦しい呼吸をやっとしてた。
ウィルスが怖かったんじゃないの?
でも
徐々に周りの人の視線が怖くなった。
誰も幸せじゃなかった。
そんな事する自分は嫌だった。
でも、
黒い見えない何かが私たちを覆って、
そして、
人間が試された。
次々と消えていったイノチ。
原因が人間の場合もたくさんあった。
私たちは大切なモノを、
強制的に明らかにされて、
それ以外のモノを、
自然と排除しようとしていた。
家族を守るため
自分の職を守るため
今までの日常が戻ってくる時を待って
この土地で生活していくため
生きる為の手段を、あれこれ並べて、
自分を、生活を守るために、
正義という名でくくられる理由を
必死に考えて、
みんなが保身していた。
排除する選択しかなかった。
排除されたモノ達は、どこへ行ったのだろう。
本当にいらないモノだったのか。
惑わされて失くしてしまったのか。
手離してはいけないモノもあったと思う。
また今、
コロナ禍以前の日常が戻ってきてるけど、
もう取り戻せない大事なモノは、
誰が想い出して、
誰が抱きしめてくれるんだろうか。