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これが最後のサマータイム?
サマータイム。ヨーロッパに住む人たちにとっては心躍る夏時間が始まる日。イタリアでは3月の最終日曜日、つまり今日(正確には明日)の夜中2時に時計を1時間進める。この頃にはすでに日が長くなってきているうえに、さらに一時間、日が長くなるというわけだ。まだ明るい夕刻に繰り出してアペリティーボ(食前酒)、オープン席でのディナー・・・楽しい夏の始まりである。これは10月の最終日曜日まで続き、そこで1時間、時計を戻すのだ。時計を1時間進める時に対し、1時間戻す時は日が一気に短くなり、この上なく寂しい気持ちになる。でもこの長い夜は、それはそれからすぐやってくる楽しいクリスマスを感じさせ、またそれも心躍らされるのである。
これは別に人々に心躍らせるためではなく、エネルギーの節約のためとして始まったものだったのだが、実際のところはエネルギー消費量にそれほど大した差がない上、年に2回体内時計を狂わされることによる健康への被害が大きいらしい。そんなわけで、サマータイムへの否定的な流れがでてきたなか、欧州の460万人にアンケートを取ったところ、約84%がNOと答えたのだとか。
そこで欧州議会は昨年、「サマータイム制度」を2021年に廃止する法案を可決した。とはいえ、実際のところは国によって意見は違い、イタリアは先のアンケートでもサマータイム反対派はヨーロッパ平均よりだいぶ少なかった。一方、北欧の多くの国やお隣のフランスなどはすでにサマータイム廃止案を発表している。最終的な決定は4月末になされるらしいが、コロナ対策、ワクチン問題等に追われているEUはそんな話どころではない感じに見える。そしてそもそもヨーロッパの国々を一つの意見にまとめるのは大変。これまでだって何かを決める時にはいつも苦労してきたのだ。私はそもそもEUという存在自体に無理があったのではないかと常々思っている。ヨーロッパの国の一つ一つがあまりにも違い過ぎて、あまりにも個人主義すぎる。
とにかくEUの可決案通りにこのまま進むなら、今年で夏時間/冬時間の設定はなくなるはずで、それによっては今年の10月にはもう冬時間にはならないかもしれない。または次に冬時間に戻したら、もう来年には夏時間はやってこないのかもしれない。まあ、夏時間、冬時間の変更のたびに、待ち合わせに遅れたり一人だけ早く着いたりしなくても済むのは助かるけど。