っポイ!からのブルース・リー
私が子供の頃に好きだった漫画で、やまざき貴子さんのっポイ!という作品がある。
天野平と日下万里というとても可愛らしい男の子達が繰り広げる青春と恋のお話で当時とてもキュンキュンした。
私の記憶が古いので曖昧な部分だが、そんな素晴らしい作品の中で主人公天野平のお母さんが、幼少期の平ちゃんに「強くたくましく育つように」的な願いを込めて動物の着ぐるみを月曜日から日曜日まで日替わりで着せていたエピソードがある。
当時私にはそれがなんだか可愛くてとっても素敵だなと思い、いつか息子ができたらやりたいなと考えていた。(女の子はまた別の方向性がありこれもまた後に悲劇を生む)
ただ、私はどうにも発想と行動がポケットにいれた有線イヤホンみたいに絡まってしまうので、息子が産まれるとわかった瞬間にネットで購入したのが
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ブルース・リーだった。
私の中で強く逞しい男の代名詞はブルースかジャッキーかランボーの3択で、ゲームのキャラ選択画面ならば1時間は悩んでしまうラインナップ。
誰を選んでも確実に強くなれる。伝説の男達だ。
ああ息子よ、強くなれ、逞しくあれ、あらゆる敵を倒して生きていくのだ!そんな強い願いであった。
先に産まれた娘がなにぶん大きく早く成長したものだから、それを見越してなぜか私は大きいサイズを息子に買ってしまい。
そして産まれた息子はブルースの服の存在を忘れさせるくらいの衝撃と生活を提供してくれた。
現在、ついに息子の体が成長しようやっとこの衣装を着せられるように…
というかもう、存在を忘れていたのだが衣装ケースを整理していたら出てきた。
(これを着せて…私は病院だか療育だかリハビリだかに行くのか?)
平ちゃんのお母さんは毎日着せていた。
私も平ちゃんのお母さんに習い、夢(願い?)を叶えるのであれば
月曜日ブルース、火曜日ジャッキー、水曜日ランボー、木曜日ウルヴァリン、金曜日デップー、土曜日ドウェイン・ジョンソン、日曜日レオン、祝日ショーン・ストリックランドになってしまう。
これじゃもう願いの大渋滞で事故多発だ。
しかし、兎にも角にもサイズアウトする前に着せねばならぬ。もったいない。
私は今日は療育日だったので、意を決してブルースを取り出した。
「息子よ、強くあるのだ」
着替えさせようとしたその時、仕事から夫が一時帰宅した。
私はなぜかわからないが、咄嗟にブルースを布団の中に隠した。また訳の分からないことを始めたと思われそうだったからである。
「今日は雪が凄いから運転が危ないよ」
話し合いの末、事故を回避するためにも療育はお休みすることになった。
夫がまた仕事へ戻ると、私はブルースを布団から取り出して「まだ、その時ではない…明日は病院だから、明日にしよう…」呟きながらタンスに詰め込んだ。
明日の天気予報をニュースでみていると、大雪と流れていた。明日も休むことになるだろう。
息子に着せれず残念でならない。
着せずとも息子はすでにたくましく育っている、しかしもう私だって後戻りはできない。
ジャッキーの時はお母さん、サモハンの格好して一緒に歩くよ。