メロディもコードも持たぬ凡人が三十一文字を詠う指先
9月の短歌まとめ。
メンタルの調子がよろしくなかったので短歌をたくさん詠んでいる。
ものづくりのいいところは「できた」という事実により自己肯定感が上がるところだ。
「あー今日はなんもできんかったダメだー」とかいう日であってもそれを短歌に詠んでしまえば罪悪感が減る。
スマホと親指一本あればいっくらダルくても作れるんすよ短歌って。
轟音の飛行機渋谷上空をループするかのように飛んでく
交遊録のとき、入場前に渋谷www xの前で呼ばれるまで待ってたら上を何回も飛行機がめっちゃ飛んでてそのときのやつ。
本物になれないことを理解ってて演じるライツ・カメラ・アクション
別記事にも書いてるけどライツカメラアクションという言葉が好きで短歌に使いたかった。
自分が偽物だなぁという意識がうっすらずっとあって、所詮誰かの劣化模造品なのではないかって思ってて、それに加えて他人の前では常に偽物を被っている自覚があり、それはスイッチを切り替えるようなもので、終わらない役者業をやっているような感じで、まぁそれならせめて主人公らしく振舞っていたいとは思うよね。
映画やドラマや小説やアニメの中で生きている人々が私の世界線では虚構であるように、別の世界線では今私の生きている人生は誰かが演じている虚構なのかもしれないと思うと、映画やドラマや小説やアニメの中の何気ない日常を生きる彼ら彼女らのようにせいぜい悩んで苦しんでたまにハッピーみたいなそういう振る舞いをしていけばなんとなくそれなりになるのかもしれない。
つらいのも苦しいのも悩みが尽きないのも主人公だからなので諦めてください。
飛行機で夕日を見つめ食べているとっても固いビーフジャーキー
初めから遠いよずっといつまでも近くならないそれでもいいや
名前とは似ても似つかぬ燃え落ちる空はあなたに似ていたとても
帰りの飛行機でセンチメンタルになりながら作ったやつ3首。
なんで短歌って単位が「首」なんすかね。怖。
「あいつらと違う」とか言うどこにでもいるつまらない人になったよ
これはほんとにそう。
眩しくて目を伏せた日はみじめさを誤魔化すようにやさしくなるね
これとはちょっと違うんだけど、嫌なことがあった時とか調子の悪い時ほどコンビニと店員さんとかご飯屋さんとかに対する態度に出さないように、なんならちょっと機嫌がいいですよぐらいのテンションで接するようにしている。
なんていうか、「他人に明るく優しく接することができる自分」に安心したいのだと思う。
っていうか普通に態度悪い客ムカつくから自分はあぁなりたくないとか、自分が嫌な気分ならせめて他人は嫌な気分にさせたくないとか、まぁいつもできるとは限らないんだが。
他者への優しさっていうのは自分の中ではなんらかの打算や後ろめたさとセットになっている事が多い気がするので、純粋に心から相手に対して優しくあろうとする人とかすげーな聖人かよって思う。
まぁ人の心の中なんてわからないので実際どうであろうと表に出てくる「優しさ」だけが作用するのだ多分。
停止線超えた車に舌打ちを。君には今日も無償の愛を。
誰しもの頭上に違う雨が降ることを同じと言うのはやめて
よく親から言われるんだけど「つらいのはあんただけじゃない」とか「⚪︎⚪︎の方がつらい」とか他人と比較して私の感情を定義されるのが本当に嫌で、私が今つらいと思っているこれはよその誰かのものじゃなくて私のものなのになんでそんなこと言われなきゃならないのかと。誰かも同じならつらくないわけじゃないし痛いのもつらいのも別に無くならないのにこの気持ちはここにあるのにと。
雨って「雨」という現象だけど一つ一つの雨粒ってバラバラで、人に当たる雨粒って全部違うものだよなーっていうのがなんかそういう、人に降りかかるものは全然違うのに同じものとして定義されてしまうものに似てるよなとかって。
メントスを碁盤に並べ怒られる君は最悪の本因坊
メントスって碁石に似てるよね。
昼飯の味がしているうちはまだ大丈夫とかいうそれがダメ
本当に人間のメンタルがあかんくなるとご飯の味がしなくなるんですけど、それを「あぁ、つらいけどまだご飯の味がするから大丈夫」と思っているそれ自体がもう既にあかん状態っていう。
墨汁を流すウォータースライダーみたいなんだよこの帰り道
通勤時間のエスカレーターみんな彩度の低い服を着ている。
泥水を啜れど顔に塗られてもそこに咲くのは美しい蓮
君のこと悪くいう奴ら全員ぶっ飛ばすからって思ってる
マジでそれ。
夢にくる君のクオリティは低い。今後出禁でお願いします
夢に好きな人出てくるのうれしいと思ってたけど、全然本人そんなことしないしそんなこと言わないしクオリティ低すぎて自分の解像度と想像力のなさに幻滅したので好きなミュージシャンとかアイドルとか夢に出てこないでほしい。
消えていく身体性と眼に映る揺れるアンテナ灰色の空
相変わらず歯医者に通院しているのだが、麻酔えぐいしめっちゃ歯削られるし窓から見えるアンテナ見ながら「うぁー早く終わってくれぇー」って毎回なってる。
好きな店、好きなバンドがなくなった世界で生きとるんかワシは
「これ無くなったら生きていけない」みたいなものはたくさんあったのにみんななくなってしまったのになんで自分はなくなってないんだろうなーってたまに思う。
どこまでも位相のずれた地図の上ぐるぐるまわるコンパスを手に
届くことのない漸近線上のアリアを歌う眠れない夜
気取りすぎてて嫌ですねこれは。
この先にないことばかり浮かぶのさ海に行ったり笑いあったり
海に行くことって私の中ではちょっと特別で楽しいことだったりするのだが、それは普段海の見えない場所に住んでいるからで、海が毎日見える場所に住んでいる人にとっては当たり前の風景なんだろうな。
海に行ったからって別に泳いだりバーベキューをしたりとかはしないで砂浜をぼーっと歩いたり漂流物を拾ったりするだけなんだけど。
夜中に車で海まで行って夜明けまでくだらない話をして朝日見ながらコーヒー飲むっていうのすげぇ憧れがある。
でも友達にしろ恋人にしろ夜中に海まで行って朝までくだらない話をするような関係性なんて死ぬまで築ける気がしないし人といるの疲れちゃうしなんかこういうのに対してぼんやり「いいよなこういうの憧れちゃうよな。」って思いながら死んでいくのだなと思う。
全然そういうんじゃないけど私の大好きな豊田徹也の漫画で「珈琲時間」って短編集があるんだけど、あれに入ってる「冬の波乗り」って話が海でコーヒー飲んでて、すげぇいい。しかも一緒にコーヒー飲むのが探偵と調査対象っていう全然深くもなんともない関係性のところがいい。
大鴉飼い殺す脳ネヴァーモア繰り返しては影に呑まれる
エドガー・アラン・ポーの「大鴉」という詩があり、さまざまな作品に引用されたりしているのだが、多分私が知ったのは太田忠司の「新宿少年探偵団」の大鴉博士からだろうか。宇多田ヒカルの「kremlin Dusk」でも引用されていますね。
「二度とない」と繰り返す鴉、いいですよね。
全然関係ないけどデュシャンの「大ガラス」のこと「おおがらす」って読んじゃう(だいがらす)。
この街は人の心が無さすぎて時々手放したくもなるよ
言い訳を沈めた瞼まばたきの隙間零れて床を汚した
お前らのいう正しさは頭から足の先まで間違っている
通じない言葉を高く積み上げてつくる塔から見える絶景
メロディもコードも持たぬ凡人が三十一文字を詠う指先
今月の記事題短歌。
気に入ってるからTwitter(現:X)の短歌垢のプロフにした。
短歌のことを「三十一文字(みそひともじ)」って言うの洒落てるよな。
マジで私は音楽の才能がないことに対するコンプレックスがエグいので別のクリエイティブを音楽できなかったことの代替にするしかない。
下らないルールはいいよ禁じ手をかましていこう神を出し抜け
醒めきった瞳で未だ夢を見る最早数える羊はいない
これも気に入ってる。
高みへと登り続けてなれるのは馬鹿と煙とそれからハサミ
有言の実行をするために押すエンターキーが見つからないの
秋雨の最前線が今まさに頭上を過ぎる夜の間に
雨の日のヘッドライトの色に似る水溶性の僕の心は
土砂降りが街を洗って尚もまだ深い淀みを漂う身体
家を出て昨夜の雨で濡れたまま開いた傘が日差しを弾く
雨シリーズ。
永遠に地獄に続く地下道を歩き続ける罰を受けてる
靴底を減らして進むこの距離は直線でなくのたうつ波だ
飛ぶ鳥の落とした影に覆われた街はこの先ずっと夜だよ
息継ぎが上手くできないスイマーが足の着かない遠泳をする
砕け散る硝子が刺さる痛みさえまだ光るからこの目を伏せた
そうやってあなたはいつも笑うから風に舞ってる手首ひらひら
スプーンですくうプリンの大きさと同じくらいは救われたいの
ドーナツをひとくち食べて皿の上積み上げていくランドルト環
ランドルト環っていうのは視力検査のアレ。
折り合いで折れていくのは心とか感性だとかプライドだとか
宇宙柄のマグカップで飲んでいる宇宙のにおいとされる紅茶
フランフランの宇宙柄マグカップめちゃめちゃ気に入っている。
蓋が月になってる。
有楽町のコニカミノルタプラネタリウムのスーベニアショップによく行くのだが(プラネタリウムは未だ一回も行ったことがない)、そこに売られている紅茶が宇宙の匂いをイメージしたもので、宇宙は一説にはラズベリーの匂いがするらしく、宇宙船の船外活動で宇宙服に付着するギ酸エチルがラズベリーの匂いだとかなんだとか。全部飲んじゃったからまた買いに行くか、、、
週末のミスドはいつも混んでいて心に穴が空きっぱなしで
目玉とか髪の毛だとか言うことをきいてくれない多分よその子
漠然としてる不安の輪郭が視界の端に見え隠れする
最近文字書くの楽しいから時間があったらダラダラ書きたいけど本読んだり仕事忙しかったり体調悪かったりするからまぁ無理ないペースで書けるときに書くか、、、
ショートショートも久しぶりに書いてるけど、書き終わるかわかんないからボツになるかもしれん。
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