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顔のない夢遊病者が自動書記システムにより刻む正夢

2023年最後の短歌まとめ。
月毎にiPhoneのメモにまとめるようになってから本当に短歌まとめが楽になった。
コピペするだけなので。

12月は不調だった11月に比べ、個人的に気に入っている短歌がたくさん読めた。よかった。

深夜から浮かび上がった朝焼けに減圧症の眩暈が襲う

NICO Touchs the Wallsというバンドが好きだった。
解散してしまったのだが。
彼らの「Diver」という曲が好きなのだが、減圧症という言葉が出てくる。

減圧症というのは主にスキューバダイビング後に急に浮上することで筋肉痛や目眩、意識障害などの症状が出るというものだ。
なんか、このフラフラする感じというのが、寝起きの感じに似ているというか。まぁ私はダイビングしないけど。
私は特に死ぬほど低血圧なので毎朝起き上がれない。
寝るのって飛び込む感じに似ているような気がして、寝起きのフラフラした感じは夜から浮上した時の減圧症なのかもとかそういう歌。

徒花を束ねて作る花束を夜明けを待って海に投げ込む

「非常時に押してください」のボタンを押してもきっと許される今
なんか、精神的に参ってるときに地下鉄の駅で「非常時に押してください」のボタンが目に入って、あ、今非常時なのでは。と思った。

なにもかもすべてが夢のようでした。忘れられない眩しい光。
ステージに立っていた人をもう二度と見ることができなくなってしまったとき、思い出せるのは光に包まれて歌う眩しい姿だった。

平日の朝は公園で群れてる鳩の灰色によく似ている

規制線張られた奥の奥の方ここであなたは(以下読み取れず)
これはやや気を衒っている。

何年も同じ話を繰り返しながらいつかは海にかえるよ

12月、生活という手触りを醒めた意識が上滑りする

ありのままなんてろくでもないからさ少し背伸びをするような愛
何かを好きであるっていうのはいつだってちょっと背伸びをしなければならないと思う。自分が自分のままでは好きなものにふさわしくあれないというのはいつも考えてしまい、それによっていい点もあれば悪い点もあって、でも誰かのことを考えるというのは違った考え方を受け入れることだったりするわけで、それはやっぱり愛だったりするのだろうと思う。

ばらばらの雪が昨日は雪だるまだったのをまだ覚えてるから
大通公園にはよく雪だるまがあって、それは子供が作るのか観光客が作るのだかわからないけれど、大体翌日までは残っていない。
何かそういう、生きているものを模して作られたものを破壊する存在がいるというのが非常に恐ろしいなと思う一方、人形であれ絵であれそれらに命の意味を与えるのは一方的に見ている側なのだよなとも思う。

まだ眠るフロアにひとつサンマルクカフェのぼんやりやさしいあかり
たまに朝に寄る商業施設のトイレのある地下フロアがこの時間帯サンマルクカフェしかやっておらず、尚且つ地下鉄コンコースから入りにくいためいつもひっそりとしていてあまり混んでいない。フロアでその店だけがぼんやり明るくてその風景がとても好きだ。

星のない空などないともう少し信じさせてと曇天を撃つ

電球を替えたみたいにぴかぴかだ。きみの言葉が流れる夜は。
「きみ」「あなた」「僕」「わたし」をなるべく使わないようにするというルールを最近は見事に守っていない。
エモい短歌なんてしゃらくせぇと思っているのだが二人称使うと簡単にエモさが出てしまうので来年はもっと無機質でクールな短歌が読めるようになりたい。

一瞬で冷めてしまったコーヒーの熱が溶けてる部屋の寒さよ

夜が来て曇り硝子の向こう側赤色灯の踊る国道

光など誰彼問わず無差別に射す通り魔と何が違うの

この土地の羊はみんな食べられてしまった何を数えればいい
北海道はジンギスカンを食べるので不眠症の人間が多いという統計データはない。

昼休みインスタで見る外国の鳥ははらぺこあおむしカラー

両腕を前に伸ばして上体を起こして前に滑り降ります
飛行機の緊急脱出。短歌的には詩的でなければ外道であると言われているらしいが、私は詩的だと思ったので別にいい。

ニワトリはパンに挟まれ空港で売られ私と空を飛んでる
チキンカツサンド。

雪雲に突っ込んでいく飛行機のモニター越しに灯る生活

昨日見たドーム客席よりはるか暗い高速バスの車窓は

真っ白で多分発泡スチロール上の模型の街に住んでる
本当に冬の北海道の風景はこういう感じ。

どこまでもパッケージングされた死の並ぶ国道沿いの街並み
地方都市の国道沿いは病院、サ高住、葬儀屋しかない。

生きているうちに呼ばれることのない戒名に似た海鮮の文字
海鮮丼とかの海鮮って少なくとも生きている魚には使わないよなと思って。

日が落ちて認識される対岸にゆらめくスパンコールの瞬き

さわれない星も誰かの幸せも遠いあなたも目の中にある
目というのは不思議なもので、絶対に触れることができないものすら受容する器官だ。

こんにちは。共通言語圏外の宇宙を廻る衛星軌道
これは谷山浩子の「銀河通信」のオマージュだったりするのだが、直接的にそのまま持ってきたわけでもない(それはそう)
銀河通信は当時でいうところのパソコン通信のことを歌っているらしいが、まぁダイヤル回線がWi-Fiになろうが5Gになろうが顔も知らない人間に何らかのメッセージを送り続けているのは変わらないのだろうと思う。
BUMP OF CHICKENの「voyager」もちょっとテーマとしては似ている。

死んでいる彼らの方が生きているわたしなどより息をしている
これは常々思っている。
死者の方が活き活きしている。

耳鳴りが鋭利なピアノ線状の波形で裂いた僕の断面

顔のない夢遊病者が自動書記システムにより刻む正夢
これはかなり気に入っている。

訪問者ばかりの街はもう既に暮らす機能を失っている
観光都市たる札幌に住んでいるからというのもあるのだがどこ行っても観光客だらけでなにがインバウンドやクソがってなる。

並ばずに帰りにパンが買えた日は明日の朝を恐れずに済む

アルコール臭い車内に火のついたマッチを落とし爆破させたい
忘年会時期の公共交通機関は地獄。

好き勝手終わりを定義した奴が勝手に終わるだけだよいつも

国境の壁にかかった額縁を穴があくまで見てる人々

複雑な迷路のような本の中ふいに見つけたあなたの名前

不揃いを不味いに空目してしまうとってもおいしいバナナバウムよ
無印の不揃いバナナバウムおいしい。

今つなぐ手を振ることもないままにいつか離してしまう日が来る

遠くまでひとりぼっちになるためにモノクロームのハイウェイ走る

近づいた気がした昨日、離れてく気がした今日もなにもなかった

年内に300首作るが一応達成できた。
来年もぼちぼちやってく。
がんばらなくても続けていくことがこういうのは大事なので。

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