灰色の海
目の前にはきらめく青い海、ではなく、灰色の海が広がっていた。
幼馴染との沖縄旅行。張り切って水着も買ったし、きれいな青い海を楽しみにしていたのに。10月の沖縄にしては肌寒く、どんよりとした空からは小さな雨粒が落ちてくる。
「どうする?海、入る?」
普段ならこんな天気の日に海なんて入らないだろう。でもこの日の私たちは、不思議な高揚感に包まれていた。
「せっかく来たから入ろうか!」
一人が言うと、私たちは水着に着替えて海へ走っていく。急にやってきたスコールすら楽しくて、土砂降りの中を笑いながら走った。
いつも地元で会っていた私たちにとって、これが初めての旅行。見慣れた景色を飛び出し、3人だけで沖縄の海を目の前にしていることが嬉しかった。
この2人となら、絶景が見れなくても、ハプニングが起きても、きっと楽しめる。灰色の海で笑う2人の顔を見て、そう思った。
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