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謎解き・バナナフィッシュにうってつけの日10「啓示」


dig フカボリスト。口がわるい。


e-minor 当ブログ管理人eminusの別人格。


☆☆☆☆☆☆☆


 どうもe-minorです。


 digだよ。


 さあいよいよ山場だね。


 ここまでで9回。どんな大長編を取り扱ってんだって感じだけどな。


 digの口からそれ言われてもなあ(笑)。いやいや、付き合ってくれて感謝してるよ。やっぱり精読は楽しいね。いろんな作品を勢いに任せて読みまくるのもいいけれど、たまには一作をじっくり深掘りもいい。テキストはこれくらいの長さが限度だけど。


 短けりゃいいってもんじゃないぞ。遣り甲斐のあるテキストでなきゃな。そのてん、バナナフィッシュなら相手にとって不足なしだ。


 直接の下敷きは『荒地』だけど、もちろんその基層には聖書がある。それらを繋ぐものとして、アーサー王伝説がある。とても多層的な構造だね。しかも、それらがサリンジャー≒シーモアの苛酷な戦場体験に裏打ちされている。それでいて外観は、「ニューヨーカー」誌にふさわしくポップで瀟洒。えらいもんだよ。


 アーサー王伝説の中でも特に「漁夫王(いさなとりのおう)」な。フィッシャー・キング。漁夫王のイメージがシーモアには重ねられてるんだ。漁夫の王だから魚を求めるわけよ。エレベーターの中でのあの出来事の意味も、漁夫王のエピソードを参照しなけりゃわからない。


 優れた作品はそれ単独で成立してるわけじゃないってことだね。きっと何らかの原テクストがある。とりわけこの短編のばあい、作者がヒントを作中に置いてくれてるわけで……


 サリンジャーは人が悪いから、罠があちこちに仕掛けられてて、おそろしく厄介ではあるけどな。

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1,180字
全13回にて完結しています。

サリンジャーの短編「バナナフィッシュにうってつけの日」の謎を対話形式で解読。

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