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演繹と帰納


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演繹法
 デカルトの唱えた推論方法。
 ルネ・デカルト(仏: René Descartes 1596 文禄5/慶長1 ~1650 慶安3)。フランス。哲学者・数学者。合理主義哲学の、すなわち近世哲学の祖。
 演繹法は、疑いようのない普遍的原理から、論理的推論によって個別の事柄を導く。代表的なものは三段論法。大前提・小前提・結論の順で事柄を説明する。
 大前提「すべての生物は死ぬ。」
 小前提「人間は生き物である。」
 結論「すべての人間は死を免れない。」

 特徴としては、
「明晰性」……速断と偏見を避け、明らかに判然しているものだけを使う。
「分析」……問題をできるだけ細かく分割する。
「総合」……単純かつ認識しやすいものから始め、順を追って複雑なものに進む。
「枚挙」……見落としのない完全な数え上げを行う。


 理性によって「絶対確実」といえる原理を確立し、そこから物事を考えていく思考法。近代合理主義の出発点となった。





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帰納法
 ベーコンの唱えた推論方法。
 フランシス・ベーコン(英: Francis Bacon, 1st Viscount St Alban 1561 永禄4~1626 寛永3)。イギリス。貴族。哲学者・神学者・法学者・政治家。デカルトとは別のルートから近代合理主義への道筋をつけた。イギリス経験論の祖(の一人)にして、「近代科学の父」(の一人)。
 帰納法は、観察・実験・実証を通して集めた個々の事実から、それらに共通する普遍的な法則を求める。そのさい彼は、正しい知識の習得を妨げる先入観や偏見を「イドラ」と名づけて批判した。


 イドラの4タイプ。
 種族のイドラ……人間中心的な考えから生じる、人間の本性そのものに根ざすもの。
 洞窟のイドラ……個人の身体的特徴・受けてきた教育・置かれている環境などから生じる、その人に特有のもの。
 市場のイドラ……言語の不当な使い方から生じる、コミュニケーション上のもの。
 劇場のイドラ……その時代・その社会を支配する言説や空気などへの無批判な埋没から生じるもの。


 これら4つのイドラを批判することで、ベーコンは、自然や社会に起こる出来事すべてを神の仕業とする従来の神学的世界観に反旗を翻した。観察・実験・実証によって様々な事例を収集し、それらを組み立てながら物事の本質を明らかにしていく。すなわち経験主義であり、科学主義である。


 演繹法と帰納法とは、一見すると対立しているかのようだが、けして相互に矛盾するわけではなく、いずれも物事を科学的に考える際に有効な考え方である。いわば相補って人間の思考を精確するものだ。対象および状況に応じて適切に使い分けたり、併用したりするのが望ましい。



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