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精神を病む女性たちをモチーフとする韓国の文学や映像作品は、現代韓国社会の何を表しているのだろうか

【 ハン・ガン「菜食主義者」】

ヨンへはある時から「肉」を食べなくなった。
食べないだけでなく家にある肉類をすべて廃棄した。
夫が理由を訊くと「・・・夢を見たの」と言う。
そのうち夫との関係も拒否するようになる。
「あなたの体からお肉の臭いがする」
シャワーを浴びたばかりの夫にそう言う。
「・・・毛穴のひとつひとつから」
理由を訊いても「夢を見たの」と答えるだけだ。
夫や姉・弟、両親が菜食主義から“普通の食事”に
戻そうと必死になるがヨンへは頑として聞かない。
そして家族の食事会が刃傷沙汰にまで及んでしまう。
あくまでも「肉食」を拒否する韓国女性の姿は
何を表しているのだろうか。
ヨンへが最後に握っていた“モノ”は何だったのか…
読み進めるにつれて現在の韓国政治の分断、
年代間の分断、男女間の分断、そして南北の分断が
脳裏に渦巻いて眩暈がする思いだ
 (ハン・ガン(韓江) 2024年ノーベル文学賞受賞)

【 82年生まれ、キム・ジヨン 】

「あのコーヒー、1500ウォンだよ。あの人たちも同じコーヒー
 飲んでたんだから、いくらだか知ってるはずよ。
 私は1500ウォンじゃなくたって、1500万ウォンだって同じだよね。
 私の夫が稼いだお金で何を買おうと、そんなのうちの問題でしょ。
 私があなたのお金を盗んだわけでもないのに、死ぬほど痛い思いを
 して赤ちゃん産んで、私の生活も、仕事も、夢も捨てて、
 自分の人生や私自身のことはほったらかして子供を育ててるのに、
 虫だって。害虫なんだって。私、どうすればいい?」
 (チョ・ナムジュ(趙南柱)著:2016年刊行)

韓国社会の一面を知ることができた作品

【 あしたの少女 】

韓国・全州市の女子高生キム・ソヒは担当教師から紹介された
大手通信会社のコールセンターで実習生として働き始める。
その仕事は解約を希望する顧客を説得して解約を防止すること。
絶え間ないストレスにさらされてソヒは追い詰められていく。
慕っていた上司のチーム長の自殺、本社から派遣された新しい
チーム長からの圧力、実習生という理由での成果給の未払い、
顧客要望を無視する会社…。
そしてチーム長への抗議で3日間の出勤停止処分を受ける。
両親や担当教師に仕事を辞めたいと訴えても聞いてもらえない。
絶望したソヒは真冬の貯水池に身を投げてしまう・・・。
(この映画は2017年に韓国で実際に起こった事件に基づいている)

観終わった後、下北沢で暫くボーッとしていた

【 韓国の若者の絶望感 】

  1. 2011年~2022年の11年間で韓国籍を放棄した人数26,2万人
    (同期間の日本籍を放棄した日本人は2万人)

  2. 2023年の合計特殊出生率 韓国 0.72 日本 1.26

  3. 15歳~29歳の若者の失業率は6.5%  全体失業率2.6%の約2.5倍

  4. 『スプーン階級論』: 親の資産・出身大学で就職先が決まってしまう

  5. 『7放世代』: 恋愛、結婚、出産、人間関係、持ち家、就職、夢を放棄

  6. 極端な学歴社会 : SKY(ソウル大学・高麗大学・延世大学)が特別な位置を 占めておりこの大学卒業者が財閥系大手企業・官公庁への就職の登竜門 この大学へ入るには大学就学能力試験で“上位1%”に入る必要がある

  7. 財閥系企業と中小企業の格差はいまだに解消される気配はない

  8. 運よく就職できても40代でリストラされることが多い

  9. 55歳以上の高齢者の無年金者が過半数  一般の国民年金月額は31万ウォン(2万9千円)  基礎年金は13.1万ウォン(約1万2千円) 等々

【 3月7日(金)公開予定の映画 】

「ケナは韓国が嫌いで」

「ケナは韓国が嫌いで」:“ケナ”役のコ・アソン

チャン・ゴンジェ監督
ケナ:コ・アソン → グエムル-漢江の怪物-でヒロイン役

この子です


グリーンカレー:菜食主義ではないので鶏肉入ってます(米はジャスミン米)





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