「楽しくなければテレビじゃない」と「楽しい日本」の『失敗の本質』
【 修羅場で見える本質 】
インド洋の島で作業員が感染症でバタバタ倒れているのに、上官はマラリア蚊を防ぐ服の新調を認めない。マレー半島の捕虜収容所では高官たちの本性をみた。部下の戦犯容疑をかぶって獄についた者、戦死者に罪をおわせ自分と部下をまもった者。いっぽう「のらりくらりと立ち回って責任逃れを図る者」もいた・・・
( 近藤 道生(みちたか) 元海軍軍人・大蔵官僚、国税庁長官を経て博報堂代表
取締役社長 「私の履歴書」より )
【 平成三年七月の予言 】
( 中略 ) 自らの依って立つ概念についての自覚が希薄だからこそ、いま行っていることが何なのかということの意味がわからないままに、パターン化された「模範解答」の繰り返しに終始する。それゆえ、戦略策定を誤った場合でもその誤りを的確に認識できず、責任の所在が不明なままに、フィードバックと反省による知の積み上げができないのである。その結果、自己否定的学習、すなわちもはや無用もしくは有害となってしまった知識の棄却ができなくなる。過剰適応、過剰学習とはこれにほかならなかった
( “失敗の本質”文庫版 あとがき)
【 ひとは正しいと信じるからこそ法に従う 】
米ペンシルべニア大学カリー・コリアネーゼ教授らの論文
チェックリスト型のコンプライアンスシステムは違法行為防止効果がかなり緩いと結論付けており、形式的コンプライアンスを重視すると倫理的であろうとする内発的動機が薄れる可能性があると指摘している
米エール大学トム・タイラー教授の1500人インタビューの結果
“ ひとは正しいと信じるからこそ法に従う ”という考え方を示している。
つまり“ 倫理や道徳が法に先行する ”ということで、これはコンプライアンスも同様だということができる
米ハーバード・ビジネス・スクール リン・ペイン教授のケース・スタディ
企業の倫理活動を「法令順守型」と「価値共有型」の2類型
( 前者:企業倫理の制度化、後者:内発的動機を引き出す形 )とし
この2類型を米国の大企業従業員を対象に米ペンシルベニア州立大学の
リンダ・トレビ―ニョ教授がその効果を調査した結果
「価値共有型」アプローチの方が“倫理的行動”や“組織コミットメント”を
引き出す上で効果的であるという結果が出た
→『組織風土』を育む「企業理念」や「使命」「目指す世界観」という
ものがいかに重要であるかがこういった研究結果で裏付けられている
【 野中郁次郎名誉教授の指摘 】
欧米流の科学的管理手法にこだわり、ともすれば機械的・直線的な繰り返しに陥りかねない側面に注意をする必要がある
重要なのは“内発的動機付け”で人間のモチベーションの源泉は外的または
物質的なインセンティブや罰則ではなく体の内側からふつふつと湧き上がってくる心理的な欲求なのである
【 組織の文化・風土とは 】
文化人類学では文化は「シンボルによって獲得され伝達される、明示的・黙示的な行動の形」、あるいは「教示もしくは模倣によって獲得した共有された諸概念、条件づけられた情緒的反応、習慣的行動の形などの総和」などと定義されている
(中略) 組織が新たな環境変化に直面したときに最も困難な課題は、これまで蓄積してきた組織文化をいかにして変革するかということである
(「失敗の本質 / 文庫版」370頁 )
歴史上の国家の盛衰においても現代の企業の不祥事などを見ても
強国・大国といわれた国家もエクセレントカンパニーと称された
企業も長期政権となった組織はことごとく崩壊するか分裂、または
縮小を余儀なくされている
リーダーが強烈であればあるほどその言動による影響力が大きく
組織の価値は指導者の日常の言動・行動を通じて伝承されていく
環境変化への対応は主体的に自己変革を起こさねばならないが
環境に適応してきわめて“安定した組織”が出来上がってしまうと
組織内において何も疑問を持たず、思索せず、勉強・研究もせず
批判・反駁などもっての外、上から降りてくる指示に従って
同じパターンを正確に繰り返すようになる
とても居心地が良いので新陳代謝も進まず抜本的な組織変更や
運営方法の見直しなどは行われない
たまに現れる「跳ね返り」や「異分子」は定期的に取り除かれ
組織内から排出されていく
熱力学第二法則によれば“孤立系”はエントロピーが増大する方向に
自発的に変化し、最終的にエントロピーが最大の平衡状態に達する
この法則は生命体にも容赦なく降りかかり構成分子は傷つき壊れる
それを放置しておけば生物学的に言えば『死』が訪れる
新陳代謝が進まなければ自ずと不調になり病を得ていずれ死ぬ
『仕事はきまったことのくりかえし、長老は頭の上に載せておく
帽子代わりでよい、というのは平和時代のことである。
戦時には、トップこそ豊富な経験と知恵の上に想像力と独創力を
働かせ、頑強な身体と健全なバランス感覚で、誤りのない意思決定を
しなければならなかった』 ( 失敗の本質 377頁)
まさに「明治の頭で昭和の戦争をした 」
(日本帝国海軍はなぜ敗れたか / 吉田 俊雄 )
旧日本軍のように
「昭和の頭で平成・令和の政治・経営を行った」
この40年だったのだろう
【 コーポレート・ガバナンスと企業文化 】
だが、どんなに巨大な会社でも、組織の機能やオペレーションを管理する
責任がCEOにはある。そのCEOと経営陣を監督するのが取締役会の役目で、
それを正しく機能させるのが取締役会長の責任だ。取締役会長とCEOが
同一人物であるということは、CEOが自分で自分を雇っている、自分の上司
は自分自身、ということにほかならない。会長が自分の好みに合わせて
取締役を選びはじめたら、取締役会は劣化する一方だ。要するに、1人の
人間に権力を集中させ、株主の声を聞かないのは、最低のガバナンスだ。
それがエンロン以降、米国の企業からこの統治構造が姿を消していった
理由の一つである。
GEのトップダウン文化にも大きな責任がある。ウェルチもイメルトも、
そして多くの中間管理職も、この文化を自分に都合よく利用した。
彼らは、少々のミスなど簡単に覆い隠せる巨大組織において、目的のため
には手段を選ばないメンタリティと、規律なきコスト感覚を社員に植え付け
てしまった。年々歳々、こうした風潮の中で問題のある慣行が大手を振って
行われれば、会社が立ち行かなくなるのは明らかだ
(GE帝国盛衰史より抜粋)
【 フジテレビの番組基準 】
株式会社フジテレビジョンは放送の公共的使命と社会的責任を認識し、
全ての人がより良い地球環境の下で平和に共存し、
心身ともに健やかな生活を維持できる世界の実現に努める。
電波が国民共有の財産であることを重く受け止め、放送番組を編成する。
番組編成に当たっては次に掲げる基本方針に基づくとともに、具体的基準については日本民間放送連盟の放送基準に準拠するものとする。
基本方針
1. 基本的人権の尊重など民主主義の原則を貫き
公平で平和な自由社会を守ることに努める
(以下略)
【 2024年1月30日のメモ 】
■豊田織機 背景に「受託体質」 車用3機種で不正判明
「上司に相談しても無駄」
23年3月に豊田自動織機で発覚した品質不正問題を調査していた
特別調査委員会は29日、原因などについての報告書を発表した
23年に発覚したフォークリフトの品質不正に限らず車向けでも
調べたところ、車向けを含め不正対象のエンジンが拡大した
・三菱電機と同じ構図ではないか
・人はみな自分がかわいい 守らなければならない家庭や生活がある
・企業の創業者・トップ、経営幹部が既得権にしがみついて自分を
守ることを優先すると判断を間違える
・人は立場が上がるにつれて直属の上司しか見なくなる
・人は立場が上がれば上がるほど見たいものしか見ようとせず
聞きたい事しか聞かなくなる
・毎日朝起きたらまず次のことを自分に問うこと
“何のために仕事をするのか” “何のための会社なのか”
・会社に迷惑をかけないために、やむなく“不正”を行うという
考え方・判断は正しいのか? → 正しいわけがない → しかし…
その考えに至りそれを選択して行動に移してしまう社員を
作ってしまう風土・文化・環境の組織の闇は絶望的に深い
・目的は手段を正当化する
・理念や原則を無視したり逸脱したひとは仲間であっても
ルールに従って厳しく対処しなければならない
「泣いて馬謖を斬る」
【 2024年3月5日のメモ 】
「JTC(ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー)の蹉跌」
JTCと揶揄される昭和のカルチャーを残す組織の多くは意思決定の速度や
戦略的な発想を欠いており、リスク回避や縮小均衡に傾く体質も重なり
グローバル化・ネット化・フィンテック化にうまく適応できなかった。
経営モデルは陳腐化し人材は劣化、事業の選択と集中に遅れ、国際展開は
消極的と、日々を生きのびることに汲々としている。
「続く経営トップの人権不祥事の背景」
社内の論理の中で出世してきた人物が社長になるという、旧来型日本企業
( いわゆる“JTC” )の後継者選任手法では変化している世の中の価値観に
対応できない。特に会社組織の“同質性”が不祥事の原因につながることは
過去の多くの事例が示している
→ トップに近い男性幹部はセクハラ関連の内部告発を受けても無意識に
トップをかばう傾向があり、事案を矮小化したり形だけの対応をしたり
場合によっては事案そのものを無かったことにしてしまう場合がある
・取締役には会社法によって善良な管理者の注意をもって職務にあたる
「善管注意義務」を負う そして取締役会の一員として代表取締役を
含めた取締役の職務執行を監督することも定められている
※24日、石破総理は施政方針演説で
一人ひとりが自己実現できる「楽しい日本」を目指し
地方創生を核とする「令和の日本列島改造」
を打ち出した
ある意味すごいな
このタイミングで
『楽しい…』
というワードを打ち出すとは
それにしてもマスコミ・ジャーナル界隈の
劣化状態の酷さは想像を絶するものがある
一部の新聞記者orフリージャーナリストと称する
活動家達はまともな質問すらできていない
これでは真の問題点や本質にはせまれない