
カーター元大統領の国葬で見たアメリカ合衆国の現状とこれからの世界
【 2025年1月10日 】
「すごいな、この絵面・・・」
スーパーパワーを手中にしていた面々とこれから再び手にする人…
【 中列 】
45/47代大統領 : ドナルド・トランプ 共和党
44代大統領 : バラク・オバマ 民主党
43代大統領 : ジョージ・W・ブッシュ 共和党
45代大統領候補 : ヒラリー・クリントン 民主党
42代大統領 : ビル・クリントン 民主党
【 前列 】
44代副大統領 : ダン・クエール 共和党
49代副大統領 : カマラ・ハリス 民主党
46代大統領 : ジョー・バイデン 民主党
※2025年1月8日 日経オピニオン
FINANCIAL TIMES 東京支局長 Leo Lewis
『 (中略) 冷戦1.0時代、キッシンジャー氏は正確にそう言った
わけではないかもしれないが、「米国には永遠の友人や敵は
存在せず、あるのは国益だけだ」といった意味の話をしており、
その言葉は真実を突いている。米国の政策を解釈する上でこの
言葉が繰り返し取り上げられることは、米国が世界からどう
見られているかを如実に物語っている・・・』
米国で多くの人々が好んで使っているキッシンジャー氏の言葉と
されるこの言葉の元々の出典は、イギリスの政治家で外交官である
パーマストン卿(1831年~1865年に外相や首相として英国の外交を
推進した)が1848年3月1日の議会演説で次のように述べた言葉だ。
「英国には永遠の同盟国もなければ永久の敵国もない。英国の利益
こそが永遠かつ永久であって、我々はその利益を追求する義務がある」
かつて七つの海を制覇した大英帝国や冷戦1.0を制したアメリカ合衆国
という世界の覇権を握った超大国の外交の本質をこの言葉は表しており
そのスタンスは今も廃ることなく脈々と受け継がれている
【 2024年 リベラルの敗北 】
接戦が予想されていた米大統領選挙だが
激戦州7州すべてで民主党は敗北した
トランプ氏はこれまで民主党の基盤だった
労働者層・マイノリティ・若者の何れからの
支持も拡大させることに成功した
有権者の最大の関心事は3つ
“インフレ(economy)”と“不法移民(Immigration)”
それに移民対策としての“国境(border)”だ
欧米の民主主義が抱える諸問題の根底に
「経済格差」があることは否定しようがない
経済的弱者は社会の底辺から抜け出す術を
見いだせなくなり社会から見放されていると
感じて絶望感を抱いている
自国民の不平や不満を蔑ろにして移民や難民を
受け入れる富裕層優遇の既存リベラル政党は
人種・民族的なアイデンティティ政策を重視し
経済格差などの階級問題を軽く見ていた
自分の周辺の経済、つまり家計を重視する人々は
白人もマイノリティもトランプに投票した
この傾向は欧州も同様で、思想の左右ではなく
経済階級の上下分断に対応できていないことが
各国での極右政党躍進の原因となった
【 2016年8月 トランプ陣営選挙運動のテーマ 】
2016年米国大統領選挙の共和党陣営の選挙対策本部CEOは
あの“スティーブ・バノン”
彼が掲げたテーマは次の3つだった
1. 大量の不法移民を防止し合法的な移民を制限
2. 製造業の雇用をアメリカに取り戻す
3. 無意味な海外での戦争から撤退する
それから8年経った2024年の大統領選挙でトランプ陣営が
訴えたことは基本的には全く同じ“MAGA”だ
(ちなみに彼は議会侮辱罪により4ヶ月間服役していたが
24年10月29日に刑期を終えて出所した)

【 ウクライナとパレスチナ 】
トランプ新大統領体制発足後、ウクライナの戦争は
停戦に向けて各国は具体的に動き出すのだろうが
その結果はウクライナと支援していた西欧諸国側は
ロシアに妥協を余儀なくされるがトランプ政権は
この問題の解決を欧州に求めるだろう

パレスチナ問題に関してはイスラエルが人質全員の
救出を錦の御旗としてハマス・ヒズボラの殲滅や
イランの弱体化を狙い、ガザ・ヨルダン川西岸地区の
完全占領、ゴラン高原への入植など領土・権益拡大の
野心をむき出しにして増大させているが
アメリカはその行動を支持し支援し続けるのだろう

トランプ政権はこのように国内事情を最優先させる
その結果は様子見をしていたイスラム圏やアフリカ、
中南米諸国、中央・南アジアの国々を米国ではなく
ロシアや中国寄りの姿勢を取るようにしてしまう
可能性が非常に高い
【 多様性に係る米国企業の方向転換 】
米国で企業の社会的責任とみられていた「DEI(多様性、公平性、包摂性)」
推進の活動方針を取り下げる動きが相次いでいる
数値目標などを設けて多様な人材を集め、イノベーションなどにいかす
取り組みとして注目されてきたがDEIに対しては、保守層の反発もあり
トランプ氏の大統領就任を前に政治的配慮も背景にあるとみられている
多様性対策を廃止または見直しを行った主な米企業は
ウォルマート・マクドナルド・メタ・アマゾンなど

またロサンゼルスの山火事について環境問題か行政の怠慢かなど
被害の責任論争が激化している
トランプ氏は、自身のSNSで「今回の火災は過去最悪の行政失態だ」と
非難し「州政府は森林管理に失敗している」と主張した
特に、消火用水の不足については「政治的な過ちが生んだ悲劇」として
ギャビン・ニューサム知事を激しく糾弾した。
また火災対応の遅れについてロサンゼルス市長カレン・バス氏の失策も
見逃せない。同市では過去数年間にわたり消防予算が削減されており
これが消火活動の遅れに直結したとの指摘があり、また市の防災計画に
おける水資源管理の不備も問題視されている。
民主党が推進してきた温暖化対策によって行政の適切なリスク管理が
損なわれ今回の大規模な被害に繋がったとトランプ氏は攻撃している

【 “はったり” か “本気”か? 】
《 トランプ新大統領の発言 》
●グリーンランドを買収する
●パナマ運河を米国の管理にする
●メキシコ湾の名称をアメリカ湾にする
●カナダを併合する
●就任初日に不法移民の強制送還作戦を開始する
・・・
【 ベトナム戦争以降の米国が介入した戦争・紛争 】
《 期間 》 《 名称 》 《 大統領名 》
1965–1973 ベトナム戦争 ジョンソン~ニクソン~フォード
1982–1984 レバノン内戦 カーター~レーガン
1983 グレナダ侵攻 レーガン
1989–1990 パナマ侵攻 ブッシュ(父)
1990–1991 湾岸戦争 ブッシュ(父)
1992–1995 ソマリア内戦 ブッシュ(父)
1994–1995 ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争 クリントン
1994–1995 ハイチ介入 クリントン
1998–1999 コソボ紛争 クリントン
2001–2021 アフガニスタン紛争 ブッシュ(子)
2003–2011 イラク戦争 ブッシュ(子)~オバマ
2007–現在 ソマリア内戦 ブッシュ(子)~オバマ~トランプ~バイデン
2011 リビアへの国際介入 オバマ
2015–2019 アメリカのリビア介入 オバマ
2014–現在 イラクへのアメリカ主導の介入 オバマ~トランプ~バイデン
2014–現在 シリアへのアメリカ主導の介入 オバマ~トランプ~バイデン
2022–現在 ウクライナ戦争へ軍事支援で介入 バイデン
【 西洋の敗北と新世界 】
1989年 米国のブッシュ大統領とソ連邦のゴルバチョフ大統領が
マルタ会談で冷戦の終結を宣言
自由(リベラル)民主主義体制が共産主義専制体制に勝利した
しかし現在の自由民主主義は『リベラル寡頭制』となってしまった
故に欧米はもちろん韓国や台湾もエリート主義とポピュリズムが
激しくぶつかるようになってきている
近代西欧の経済活動を支えたマックス・ウェーバーの
“プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神”はその知性とともに
消滅してしまったのだ
多極化なのか、はたまた無極化なのか・・・
いずれにしろこれまでの80年間に経験したことのない
超不安定な世界を我々は生きていくことになる