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294.白澤裕子ちゃんとのてんけん隊復活! at 室生山上公園芸術の森(2) ~大野寺 対岸は彼岸~
(さっそく!)
(というか、いきなり!)
予測していないビューポイントの出現に、テンションあがりまくりの浜田。
さっき出発したばかりなのに、もう車から降りる私たち。
てんけんの日は、薄曇りで、そのせいか、緑のグラデーションが際立ってみえる。
開けている河原も、そびえたつ岩盤も、宇陀川の静謐な流れも、水音も、何もかもが、美しい。
その中に、立っている。
(対岸は彼岸)
(本文より)
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承前(これまでの話は、(1)で)
◆室生口大野
滋賀県から車で来る裕子ちゃんとは、近鉄電車の「室生口大野」駅で待ち合わせをした。
近鉄電車は、JRを除く「日本最長の私鉄」で、路線は二府三県にまたがっている。
特急電車の種類も多い。
ホームに表示されている電光掲示の行先を見るだけで、日常の中に非日常な世界が紛れ込んできて、心が躍る。
たくさんの人が降りたので、駅名を確認すると「長谷寺」だった。訪ねたい場所だが、行き方を調べたことがなかった。
室生口大野まで、あと二駅。
(室生口大野)
長谷寺駅とちがい、降りる人がいない。
ホームに立って、電車を見送る。
裕子ちゃんは、来ているだろうか?
それにしても。
室生寺の最寄り駅なので、「室生口」というのはわかるが、
(「大野」というのは、なんだろう?)
そう思いながら、改札に向かったら……
(大野寺!)
ポスターが貼ってあった。
岸壁に大きな弥勒菩薩が刻まれている。
「弥勒磨崖仏」と書かれていた。
すごい。
近くに、このような史跡があるのだ。
改札を出て、ロータリーを見渡したが、裕子ちゃんの車は見えない。
ちょうど、駅に隣接して、観光案内所があったので、資料を見せてもらうことにした。
観光案内所にいる年配の女性は、とても親切で、これからどこに行くのかと尋ねてくれた。
室生山上公園芸術の森に行ったあと、どこに行くか決めていないので、このあたりのガイドマップがほしいと伝え、弥勒磨崖仏の写真を指差し、すごいですねというと、
「ここから見えますよ」
「えー―――っ ほんとですか!?」
室生口大野駅は、ロータリーを見下ろす、やや高い位置にあり、改札付近から、まわりの山々を眺望できる。
おばさんの指差すほうを見ると、たしかに、そこだけ緑が途切れ、白っぽく抜けたようになっている。
遠目にも、かなり大きなものだとわかった。
「自然の岩に仏さんが刻まれているとかで、みなさん行かれます。私ら、住んでいるものからしたら、どこがどうってことないですけど」
というようなことを、もっと地元の言葉で話し、首をかしげて困ったように笑うのが、おかしかった。
たしかに、地元のかたにしたら、小さなころから慣れ親しんだ、日常の風景なのだろう。
裕子ちゃんが、下から上がってくるのが見えた。
(しまった! 待たせすぎ!)
思いのほか、観光案内所のおばさんと話し込んでしまったので、私がなかなか降りてこないことを心配して、駅まで様子を観に来てくれたのだ。
「裕子ちゃん!!」
姿を見てびっくり。
前日に、裕子ちゃんのフェイスブックに投稿されていた自撮りの写真を見て、(この服いいなあ。この靴いいなあ)と思っていた、その姿だった。
(裕子ちゃん最高)
観光案内所で、パンフレットをたくさんもらったこと、弥勒磨崖仏がここから見えることを、マシンガンみたいに話し、二人でロータリーに向かう。
「えみなさん、変わってないねぇ。そんなんだったって、会ったら思い出した」
と言われ、(そんなんって、どんなん?)と思ったけど、あれもこれも、すごい勢いで話し出して、順番もめちゃくちゃで、わちゃわちゃしていることかな?
裕子ちゃんとの「てんけん隊」は7年ぶりだけど、会うのは2年半ぶりくらいだろうか。
室生口大野のロータリーに停まっている、なつかしい裕子ちゃんの愛車に乗り込む。
「芸術の森でいい?」
「うん!」
室生寺にも行きたいし、龍穴神社も行きたいけど、まずは芸術の森へ。
裕子ちゃんのスマホナビを起動して、車を走らせていると、
(えー――――――――っ)
いきなり、河原がひらけ、駅のポスターの世界。
「弥勒磨崖仏!」
(さっそく!)
(というか、いきなり!)
予測していないビューポイントの出現に、テンションあがりまくりの浜田。
さっき出発したばかりなのに、もう車から降りる私たち。
てんけんの日は、薄曇りで、そのせいか、緑のグラデーションが際立ってみえる。
開けている河原も、そびえたつ岩盤も、宇陀川の静謐な流れも、水音も、何もかもが、美しい。
その中に、立っている。
「五十鈴川も、こんなふうに、降りて、水にさわることができたよね」
しばらく進むと、大野寺の山門があった。拝観しなかったが、境内は枝垂桜で有名とのこと。
ご本尊である対岸の弥勒磨崖仏を拝む遥拝所が設けられていることが、外側からわかった。
(対岸は彼岸)
だから、このように、美しいのだ。
浜田えみな
次回、いよいよ、室生山上公園芸術の森へ
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