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435.みなえみ日和7 ~いっしょに帰る~

職場の昼休み。奥さんのむすんだ、大きなおむすびをほおばりながら、再任用職員のSさんが、台風情報を見ながら、ぶつぶつつぶやいている。
 
「墓に迎えに行かなあかんが、13日が台風やったら、線香が消えてしまうから、1日早いが12日に行かなしゃあないな」
 
(墓に迎えに行く?)
 
お盆には、お墓参りをすること、ご先祖さまが帰ってくることは知っていたけれど、きゅうりの馬に乗って、戻ってくるのだと思っていた。
 
心を向けたときにいつでも、先祖故人はそばにいて、守ってくださっていると感じているので、迎えに行くという概念がなかったことに気がつく。
 
Sさんによると、お盆の迎え日に、お墓の掃除に行き、線香に火をつけてお参りしたあと、その線香とともに、ご先祖様といっしょに帰るという。
 
ゆらゆらとたなびく、お線香の煙に乗って、ご先祖様一同が、野辺の道を家へとたどる様子が浮かんで、頭の中は、「日本むかしばなし」の世界!
 
「その日は、ご近所のかたたちみなさんが、お墓にお迎えに行かれ、お線香を携えて、ご先祖様といっしょに、おうちに帰られるのですか?」
「そやな。時間は、ばらばらやけど」
 
(保育園のお迎えみたい!)
 
徒歩圏内に先祖代々のお墓がある土地に、ずっと暮らしているSさん。
子どものころから、ずっとそうしてきたのだろう。
 
電車や車で何時間もかかる霊園から、お線香の火を絶やさずに帰ってくることはできない。
私も、私の子どもたちも、お盆に、そのような光景に出逢ったことがない。
 
宗派によって、地域によって、慣習は違うだろうけど、人々によって継がれてきたものを、絶やさずにいることの大切さを思う。
 
浜田えみな
 
3と7のつく日は、「みなえみ日和」
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