読書感想:グミ・チョコレート・パイン
~オタクの置き場~
■サブカル女子の行きつく先
10代から20代まで、サブカル女子だった。
古着や古い音楽、古い映画が好きで(基本全部古い…)
特にガレージパンクと言われる音楽や、
エログロナンセンス映画、日本の昔の怪奇漫画にハマりまくった。
18歳で『ピンクフラミンゴ』に衝撃を受け、
ディバインの存在に胸を打たれた。
「この人は私のやりたいことを全部やってくれている!」
スターだった。
そして、20代で見た『ゴーストワールド』は、まさに自分の人生だと思った。
宝物は楳図かずおの『イアラ』の辞書みたいな初版本。
ヒット曲に嫌悪感というか、演歌っぽいしめっぽさを抱き、
恋愛話で盛り上がる女子を羨ましがりながら、
自分は絶対にサブカルを極めるのだ!
何かの世界でサブカルの女王になるのだ!
と勝手に思っていた。
漫画家の夢は背景描くのが面倒で諦めた。
イラストレーターになりたかったけど、練習も中途半端。
結局普通に地元九州の会社に就職した。
でも、就職しても一年も続かず、ひょんなことで東京に来た。
25歳で東京に来た私は、2年後会社をクビになる。
その後偶然、立ち上げたばかりの今の会社に入社。
周りには、
1つめの会社で親しくなった人を介して、
映像や音楽を作っている仲間ができた。
その人たちの知り合いのサイトのイラスト描きとか、手伝ったりもした。
平日は働いて休日は趣味にふける。
そんな日々を過ごしていたけれど、急に仕事が忙しくなった。
自主映画とかイラスト描きとか、趣味を忘れる。
それほど仕事にカッキーン!と打ち込む。
30代はとにかく働いた。(あ、今でも!)
吹けば飛ぶような会社が、少しずつ大きくなっていった。
そんな変化も不思議だったけど、面白かった。
そして、私は、気づいたら35歳になっていた。
その2年後、出産を希望したため妊活をした。
40歳で出産。
それまで十年以上、がむしゃらに働いてきた。
産休から臨月まで、少しだけ時間ができた。
そこでふと自分を振り返った。
「あれ?私、サブカル女子だったよな」
産休でできた時間を利用して、4コマ漫画の練習をした。
社内のスタッフに直談判をして、読み物サイトに掲載してもらいもした。
画力もないし、内容も秀でていない。
でも、あふれ出てきてしようがなかった。
そうか、私は自分のオタクの置き場を探していたのか。
そうか、そうか。
なんとなくホッとした。
■育児の合間の『グミ・チョコレート・パイン』
そんなとき、思い出したかのように大槻ケンヂ氏の『グミ・チョコレート・パイン』を読んだ。
3巻は長かったけれど、仕事、家事、育児のあいまの
「オタク」時間に夢中で読んだ。
中学生のオタク男子が主人公の青春小説。
おっぱい、セックス、オナニーや男性器のことがやたら出てくるけど、
ページをめくるたびにワクワクした。
自分よりも年上で、
カルト映画に没頭して、好きな女子のことを思って自慰行為に励む。
同じような人がいたんだ!
キラーン!と光った。
まるで私が初めて『ピンクフラミンゴ』を観たときみたいに。
やれやれー、もっとヤッチマイナー!
と、主人公大橋ケンゾー君を心の底から応援した。
そして、オタクも大人になるし、一見してサブカルな女子でも、
「普通の主婦」に見える洋服を着る。
でも、それはただの見た目だけで、
オタク部分は、やっぱり変わってないのだ。
そして、オタク部分は誰にでもある。
それを上手に公開して置いておくところを誰も探しているんだと思う。
『グミ・チョコレート・パイン』を読むと、同じように思った人が大勢いる、
となると、寂しいよう(結局自分は特別じゃないと確信)で、
やっぱり救われるのだ。