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<おとなの読書感想文>やこうれっしゃ
最近よく眺めている絵本。
「眺める」とはつまり、字のない絵本なのです。
「やこうれっしゃ」(西村繁男作 福音館書店、1980年)。
上野駅の中央改札をふかんするシーンで始まりますが、ここだけでも色々な発見があって見飽きません。
そもそも夜行列車とは、なんと魅力的な言葉でしょうか。
わたしはまだ夜行列車に乗ったことがありません。
いつかシベリア鉄道に乗ってみたいと思うのですが、その話は長くなりそうなので割愛します。
正面の猪熊弦一郎の壁画は今も変わらず。
ただ、掲示板には「常磐線」「東北・奥羽・磐越西線」「高崎・上越線」「高崎・信越線」などとありますが、「北陸新幹線」「上野東京ライン」はもちろんありません。
よく見れば、電光掲示板ではなくて、発車時刻の書かれた紙を手で貼り替えている人がいますね。
唐草模様のふろしきを背負う人、ベビーカーではなく赤ちゃんをおんぶするお母さん。
そして改札には、切符を切る駅員さんがいます。
自動改札以前の「切符切り」、記憶があります。
ちゃきちゃきちゃきちゃき、とリズミカルにはさみをならしながら、渡した切符のはしをちゃきん!と切ってくれるのです。
なつかしい。
駅の機能としての要素は同じでも、構成するものが今と昔でこんなに変わってくるのだなあと思います。
出発した列車はやがて、雪の中を駆け抜けて行きます。
みんなどこに向かうのかな。
名残の冬の、小さな旅行気分はいかがでしょうか。
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