きよはらえみこ

イラストレーションやえほんの制作をしています。たまに、読書感想文を書くことも。 Illustrations , Picture books / Japan / ○https://lit.link/emikokiyohara

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マガジン

  • おとなの読書感想文

    今まで読んだ本のあれこれ。これを見て、あ、読んでみようかな、と思っていただけたらとても嬉しいです。

  • きよはらえみこ 個展 2020

  • ぬりえであそぼうおうち時間

    「ぬってみよう!アマビエぬりえ」を無料公開中。みなさんの作品も展示しています。

  • LINEスタンプ販売中!

最近の記事

クリスマスリースをつくった話

いつもは動かさない筋肉をぐいと伸ばすように、思い切って新しいことを体験してみるのは心地よいものです。 ある休日の午後、わたしは西の方へ向かっていました。 山が近づくにつれて視界いっぱいに紅葉が広がり、気持ちの良い秋晴れでした。 目的はクリスマスリース作りのワークショップに参加するためです。 リースなんて今まで買ったことはなく、おとなになってクリスマスらしいことにも無頓着だったわたしが、なんでワークショップなんか参加しようと思ったのか。 はっきりした理由は自分でもよくわか

    • もろもろ、七転八倒の記

      少し前のこと。 何事も、どうしてもやる気が出なくて、困ってしまった。 夏の暑さに背骨が溶けて、アメーバになったかと思った。 楽しいこと、好きなことを思い浮かべても、普段ならば楽しい気分になりそうなのにまったく元気が出なかった。 そもそも、気分転換にと散歩に出れば熱中症になってしまうような暑さなのだ。 炭酸の粒があっという間に弾けて消えていくように、思考も行動もとりとめなく散漫だった。 いちばん困ったのは、「絵を描く」ことが苦痛になってしまったことだった。 このときどうし

      • パフ

        もともとはフォークソングらしいけれど、子どもながらに聴くと切ない気持ちになっていた。 おとなになるとより刺さるなあ。 竜はその後どうなったんだろう。 うなだれて、鱗が落ちて。 ハッピーエンドを期待すれば、え、これで終わり?という終わり方。 なんとも悲しい曲だという印象が残る。 けれどもふと、たとえジャッキーがパフを忘れても、また次の子どもたち、いく世代ものジャッキーが、パフの友達になってくれるんだと思った。 この歌を歌う限り、竜は生き続けるんだと思った。 童話や絵本の世

        • Kちゃんのこと

          造形教室でアシスタント講師をしていたとき、Kちゃんという子がいた。 担任の先生が、別のクラスの先生に暴力を振るって要注意人物になっているんだと言うから、初めはどんな不良なのかと身構えた。 会ってみればなんてことはない、まだあどけない低学年の少年なのだった (暴力というのはどうやら、力加減せずに先生をひっぱたいてしまったらしい。悪気はなくても、低学年であっても、それはかなり痛い)。 Kちゃんはとにかく元気な子だった。 彼はおしゃべりが好きで、授業中に学校のこと、家族のこと、

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          39本
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        記事

          <おとなの読書感想文>無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記

          お葬式などで人が集まって「その人」について語りたくなるのは、寂しさを紛らわすためでもあるだろうし、また誰かを失って浮遊する心を地上にどうにかつなぎ止めるためでもあると思うのです。 故人はこんな素晴らしい人で、このような思い出があって、最期はこのように安らかでしたよ。 ほかの誰かと共有することで、故人と自分との関係の中だけでは収拾がつかなかった感情にも、ひとつの名づけができるのではないか。 名づけを一区切りに、遺された人は残された時間を、精一杯生きるしかないのではないか。。

          <おとなの読書感想文>無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記

          手を放そう、立ち上がろう

          つかまり立ちができるようになった乳児は、ねんねばかりだった頃から一気に視界が開けて、とても嬉しそう。 一日に何回も何回も立ち上がってみては、尻もちをついて笑っています。 手頃な棚やテーブルなどに手を付き、ぐっと身体を起こす姿は、人類の大きな一歩という感じで感動的です。 ところが、気に入ったおもちゃなどを握りしめ、握りしめたまま立ち上がろうとするから、おしりをぴょこぴょこさせて苦戦していることがあります。 放せばいいんだよ、おもちゃを手放せばいいのだよ。 そうは言っても赤ち

          手を放そう、立ち上がろう

          <おとなの読書感想文>ちいさなトガリネズミ

          先日、急性胃腸炎になり、2、3日の間まともに食べられなくなるという経験をしました。 体はとても正直で、食べ物を食べなくなると本当に動けなくなるものです。 立ち上がるのもものを考えるのも億劫で、筋力が急激に衰えたかのように力が入りません。 やっとおかゆを食べられたとき、それだけで体温が上昇したような安心感がありました。 普段通りの食事が摂れるようになると、それまで寝てばかりだったのが嘘みたいに外に出てみたくなりました。 向かったのは西荻窪の絵本屋さん「ウレシカ」さん。 お目

          <おとなの読書感想文>ちいさなトガリネズミ

          新刊「絵本歌劇 エブリ博士の大発明」発売!

          新刊「絵本歌劇 エブリ博士の大発明」発売!

          ふでばこ、消しゴム、鳩サブレー

          学校の七不思議の噂は尽きないものの、ふりかえって今、不思議に思うのは「げたばこ」「ふでばこ」という言い方。 記憶する限り、本当にこれらに下駄や筆が入っていたためしはありません。最近はさすがに「くつばこ」「ペンケース」が主流なのかなあ。 さて、「ふでばこ」ですが、わたしは今までに一体いくつのふでばこを使ってきただろうと考えます。 かつては、お弁当箱か、というほど大きなふでばこを使っていました。 それが当時のはやりで、じゃらじゃらとチェーンがついていたり、どういうわけか小さな

          ふでばこ、消しゴム、鳩サブレー

          柑橘天国

          以前からきよはらさんはみかんが好物なんですね、と言われていました。 いつも何かをむきむきぱくぱくしている気がするとのこと。 実際、わたしは柑橘類が好きな方かもしれません。 身体に一枚幕がかかったように、力の出ない日が続いていたのが、スーパーで買ったいよかんひとつによってみちがえるようにしゃっきりできたのは最近のこと。 細胞レベルで欲していたのはこれだったかと、すみずみまで新鮮な水が行き渡る感覚を嬉しく思いました。 レモンティーに入っているレモンをもらってしゃぶっていた、

          <おとなの読書感想文>うさぎとハリネズミ きょうもいいひ

          なんかついてないなあと思う日、みなさんはどうしていますか。 わたしは可能であれば、仕事を中断して早々に寝てしまいます。 たしか「百日紅」の中で、北斎が娘のお栄に向かって「寝ちまえ寝ちまえ、寝て起きれば次の日だ」とか言ってみんなして本当に寝てしまうシーンがあるのですが、まさにそんな感じ。 強制的に日付を超えて身も心もリセットしてしまうのって痛快です。 さて、2021年最後の日に手に取った1冊がこちら。 「うさぎとハリネズミ きょうもいいひ」 (はらまさかず 文 石川えりこ

          <おとなの読書感想文>うさぎとハリネズミ きょうもいいひ

          <おとなの読書感想文>二分間の冒険

          毎年感じる「年末だなあ」という空気感とともに、なぜか実務的にもせわしくなる師走のこの頃です。 最近、近所に公立図書館の分館が存在することを知りました。 この分館は、図書館というよりは近所のおばさんが個人的に開放している文庫に近い雰囲気です。 というのも、おそらく小学生以下の子どもたちが利用する想定で、主に児童書・絵本ばかりが並んでいるからでしょう。 バラック風(と言っていいのか)の建物に靴を脱いで上がると、部屋の中央には木製の低い本棚が並びます。 通っていた小学校の図書室

          <おとなの読書感想文>二分間の冒険

          <おとなの読書感想文>くまとやまねこ

          出先から戻ってきて、朝出かけたときと同じようにちゃんと家が建っているのを見ると、奇妙な気分になることがあります。 通常は、自分の不在時に火事が起きていたり、どろぼうが入ったり、川があふれて水浸しになったりしている可能性は、それほど高くありません。 まず起こり得ないだろうと思う気持ちを担保に、戸締りだけ確認して気兼ねなく家を出て行きます。 それでもふと、こうしたことが「あたり前」ではないんじゃないかと感じることがあるのです。 奇妙な気分はこういうときに現れます。 日常は、ある

          <おとなの読書感想文>くまとやまねこ

          しょっぱい、甘い、おいしい

          先日、久しぶりに本屋さんの中のカフェに行きました。 前日までは夏の暑さが残っていたのに、今、窓の外は冷たい雨が降っています。 周囲を見渡すとさすが本の世界に没入している人が多く、雑音ごと水の中に閉じ込められているような内省的な気分になります。 わたしは、喫茶店でトーストを食べるのが好きです。 お店の名物や他のメニューに目移りすることも多いけれど、コーヒーと一緒にちょっとどうぞ、という感じのトーストが心底ありがたいときがあります。 香ばしく焼かれたパンは厚めにカットされてお

          しょっぱい、甘い、おいしい

          <おとなの読書感想文>ちいさいおうち

          都立小金井公園内にある「江戸東京たてもの園」をご存知でしょうか。 主に江戸時代から昭和にかけて建造された歴史的価値の高いたてものの実物が、そのまま屋外展示されているのです。 かの有名な「千と千尋の神隠し」に登場する湯屋の、モデルとなった銭湯があることでも知られています。 江戸時代の豪農の家の炉端でボランティアさんの語る民話を聞いたり、モダンな文化住宅で優雅な気分を味わったり。 わたしは子どもの頃小金井公園によく遊びに行きましたが、おとなになった今でもたてもの

          <おとなの読書感想文>ちいさいおうち

          <おとなの読書感想文>ヨーロッパ退屈日記

          仮にも西洋絵画を専攻した以上、いちどは本場に行ってみるべきだろう。 大学を卒業したあとにそう考え、初の欧州行きを計画したわたしは、諸々の手続きや準備のかたわら1冊の本を手に取りました。 「ヨーロッパ退屈日記」 (伊丹十三 新潮文庫、2005年) 買った時から、ヨーロッパに行くのにヨーロッパ退屈日記を参考にするのは間違っているだろうという気はしていました。 これから楽しい旅行をしようというのに、なぜに「退屈」。 しかもこの本が書かれたのは1960年代

          <おとなの読書感想文>ヨーロッパ退屈日記