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おまえもオトナになったなぁ…
「俺さあ、前立腺肥大なんだよ」
「なんだい、ヤブから棒に」
「なんか、恥ずかしくてさあ」
「そか? 」
「子供に笑われる」
「お前、子供いねぇだろ? 」
「いや、近所の子供が聞きつけてさあ……」
「放っといてやれよ。子供のことだ」
「それは、そうなんだけど」
「子供ってそういうの好きだよな……」
「うん……」
「俺たちも、そういう頃があったなあ」
「……(にやにや)」
「なんだい、急に」
「いや、若い頃、近所のちびっこの女の子が、俺のこと、『王子さま』、『王子さま』と、言っていたなあ、と思い出してな」
「はあ!? 」
「可愛かったなあ」
「ああ、ああいうのはトロケるな……目をキラキラさせてさ……」
「おまえも、分かるか? 」
「うん」
「……」
「……」
「俺たち、おとなになったな」
「ほんとだ(笑)」
丘の上で、この会話を耳にした、おばさま、おじさまがたが居た。
その、それぞれが顔を見合わせ、
(若いねえ……)と、頷きあう。
ある、のどかな晩秋の昼下がり……
えんど
©2024.12.3.山田えみこ