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「体育会系調理補助(演出台本)」(第2話)〜逃げろ〜 

 前回は、こちら


そして、今回はこの2本を受けて




  上記  :  挿入歌キンモクセイ「逃げろ」

 

 2022年冬、わたしは やっぱり遅れていた。
 なかなか、調子が安定しなかった。

 「山田さん!急いで!!」
 チーフのイワさんのゲキが飛ぶ。

 小鉢の盛り付けに30分以上かかった。それもそのはず、煮付けにグリンピースを盛り付ける二重作業で、私は、計算に手間取り、グリンピースを乗せるのにも手間取っていた。

 「手でやったほうが早い!」
イワさんの的確なアドバイスが飛ぶ。

 私は、Yちゃんの、レンゲに乗せて押し付けるようにして乗せるやり方を真似て、キレイには出来るが遅く仕上げていた。

 「はい!」

 このあと、小鉢を全部仕上げても、1つずつの小鉢にラップを掛ける魔の工程が待っていた。

 1番簡単なときの3倍工程だ。

 (無茶苦茶やねん!今日は、朝からMAXの人数[患者さん]だったんだよ??)

 調理補助を5年もやっていて、何度も泣きたい場面はあったが、それにしてもMAX人数の時の、あったか小鉢(あったかい小鉢だとラップを掛ける)、複数工程、なんて、○本ノックはやめて欲しい。時々、栄養士のサクラさんの嫌がらせかと、被害妄想が起こることがある。おまけに今朝は、ジョアを出す日でそのせいで時間はかかり、工程もずれ込んでいた。

 いつもより、15分遅れての洗浄開始だ。

 これから、どう頑張ったって、30分はかかる。リミットは20分後。

 洗浄の途中で、M坂さんが、出勤して厨房に入ってくる。私は心の何処かに甘えが入ってほっとするーーもう、大丈夫だーー。

 M坂さんは、1番ペテランで「救世主」とも言われているーー。


(甘えてはいけないのにーー)



 仕事が終わった。


 M坂さんが、洗浄の後の下膳に行くまでの作業を手伝ってくれていた。

 私は、疲れで糖分の干上がっ頭でふらふらと、30度身体を折り曲げ敬礼し、お礼を言った。
「M坂さん!有難う御座いました!」


 (この御恩はーー)

 何度か頭の中で思ったことなのだが、
 この職場の人たちの何人にも思ったことなのだが、


 なかなか実現しない。
 


            つづく

©鈴木江美子2022.10.27

画像は、
北岡たちき/マズロー研究家・電子書籍作家さんの「ヘッダー・アイキャッチ画像や使えそうなイメージ画像【みんなのフォトギャラリー用】」です。
       有難う御座いました。

☆シナリオ化指導をしてくださり、この機会をくださった まねきさん とても有難う御座います。

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