
N社からK社への移行のとき、軌道修正を任されたチーフ
かつて、私が病院の厨房で調理補助として働いていたとき、同じ病院内で 元いたN社からK社への代替わりが行われたときがあった。我々、食品提供会社は、病院の食事を委託されて提供している。
代わったばかりの新会社、K社は ひとりのチーフと事務兼栄養士兼調理師の社員に任された。
狭い厨房で、あまり人は入れられないので 少人数しか、職場のノウハウの伝達ができず、新しい会社に本格的に移ったときには、舵取りには、その二人に任されるしか手はなかった。
その二人に舵取りを任されて、なんとか新会社は軌道に乗ろうとしていた。
リーダーは、理論的、頭脳的でありながら、決断力、リーダーシップ、胆力、思いっ切りの良さがあった。
気の強さがあり、故にリーダーを任されたか。
3ヶ月の移行期間を経て、職場のノウハウを受け継ぎ、しかも、新しいK社のやり方を浸透させるまで、2ヶ月の期間、そのリーダーSは、闘っていた。
栄養士のМと、共に病院の厨房に泊まり込んでふん張っていた。
まるで、その様子は 不時着陸する飛行機の、機体のバランスを取りながら、推力、浮力、動力を上手にコントロールしながら推進していくパイロットのようだった。
相当、社内は荒れたが、なんとか新会社K社は軌道に乗り、無事に運営が出来るようになっていった。
そして、2ヶ月後、無事に移行期間を終えたSチーフは仕事場を去っていく。
社会へ出ると、こんな大人がいるのだ。
マンガの中のヒーローや、テレビのドラマで浮き立っている珍化な子供と違って、ちゃんと実社会で成長し、実社会で大人になり、生活や現実を自分でコントロールする人間がいる。
「子供とは、レベルが違うのだ」
心のなかで、何かが呟いていた。
©2024.2.16.山田えみこ