猛暑のなか、京都へ⑧
実は、京都在住の友人と京都市内を散策したとき、とても珍しい場所に連れて行ってもらった。
それは京都市内にある伊勢神宮で、「日向大神宮」という。昔、都の人が伊勢まで参拝するのが大変だったため、都の中に伊勢神宮を作ったのだそうな。その神社は、蹴上インクラインを通り抜け、蹴上の琵琶湖疎水を渡った先にある山の中にあった。
琵琶湖疎水にかかる小さな橋を渡る。この川の奥にあるのが(ちょっと見にくいけど)疎水トンネル。友人の話によると、琵琶湖から京都まで、琵琶湖疎水を船で行くクルーズツアーが始まったそうで、予約でいっぱいらしい。私も疎水記念館で琵琶湖疎水の歴史を知った後だったので、非常に興味を持った。とても人気があるクルーズなので、早めに予約をしておくといいらしい。
橋を渡り、少し行くと、こんな碑が立っていた。ここから先が神社の参道になるらしい。
それにしても暑い。ものすごく暑い。気温38℃のなか、休み休み坂道を上る。木陰に入ったら立ち止まり、そこで持参した麦茶を飲む。汗だくで歩き続けた。途中、人家があり、空き家になっているところもあれば、人が住んでいる気配のところもある。だけど、こんな急で細い坂道では(高齢者だと特に)住むには大変だろうな・・・と思う。
テクテク歩き続けて、ようやく神社らしきものが見えてきた。最後の坂を登り切ったとき、普通の佇まいの神社が目の前にあった。
鳥居をくぐる前に、神社の由来が記されてある看板を読む。
これを見ると、なかなか由緒ある神社みたいだ。でも、歴史学科卒の友人は「(ここに記されてあることは)口承や伝承も含まれているだろうし、史実として確認できない部分がいろいろあるから、実際のところ、本当かどうかは分からないんだよね~」とつぶやいていた。
鳥居をくぐると舞台があり、さらにその奥に行くと、手前に外宮・奥には内宮を模した本殿があった。境内はきれいに手入れが行き届いている。山の中の神社は維持管理が大変だと思うのだけど、宮司さんがいらっしゃるそうで、自然(虫、雑草、獣、天候など)に負けず、人の手が入ってきれいに管理されていた。
こちらが外宮にあたる本殿。確かに伊勢神宮と同じ造りだ。大きさはミニチュア版だけど、これは間違いなく外宮。
ここで最初にまずお参りをしてから、更に奥に進む。
そして、こちらが内宮。建物の雰囲気や様式は、確かに伊勢神宮の中と同じ。雰囲気は内宮そのものだった。
(ちなみに、こちらでは外宮も内宮も最初にしっかりお参りをさせてもらった後に、神様の許可をいただいて写真を撮らせてもらっている。)
友人曰く、ここは京都市内でもコアでディープな聖地らしく、京都の人でも知らない人が結構いらっしゃるらしい。ましてや観光で訪れる人もいない。私も感じるに、この参道は女一人で上るには淋しい坂道だから、地元の氏子さんは別として、一般の参拝者の場合は、(よほどのファンでない限り)ここまではなかなか来る機会は無いだろうな・・・と思った。
友人は、この先に面白いものがあるから、そこもお参りしてこよう・・・と言う。「何?」と聞くと、なんと『天岩戸』があって中が通り抜けられるようになっているそうな。
内宮の横から、また山道に入っていく。今度は少し上ったところで、それを見つけた。
これが『天岩戸』。中は細いトンネルになっていた。合掌して心を静めてから、この穴の中に入る。
今回の旅では、私は「岩をくぐる」ことが多いなぁ・・・とふと思い出す。
そうそう先日は「安井金比羅宮」で、切りたい縁と結びたい縁を書いたお札を手にもって、小さな穴をくぐったのだった。
そして、ここでも、私は「天岩戸」と呼ばれる穴をくぐっている。
そうだ、この穴は産道だ。これは生まれ変わりの儀式なのだ。
過去を手放して、新しく生まれ変わる。そのための儀式で、私は京都に来て、聖地でいろんな穴をくぐり抜けているのかもしれない・・・。
岩をくぐり抜けて出口に出たら、不思議と気分がスッキリした。何とも清々しい気分!私はとてもありがたい気持ちになった。
もと来た坂道を下り、内宮の横に出た。そこでもう一度お参りをして、今度は、伊勢神宮(伊勢にある本物の方)の遙拝所に行ってみることにした。
外宮の横の方から、遙拝所に向かう山道があった。早速入ってみる。最初は広かった道が、どんどん険しい獣道へと変わっていった。
これが遙拝所に向かう道。木が根こそぎ抜かれて倒れていて、本当に酷いことになっていた。友人の話によると、昨年の台風の被害ではないか・・・とのこと。昨年の台風直撃で、京都市内の神社仏閣は甚大な被害を受けたのだけど、ここの神社のような小さな所は、お金の工面が難しく、荒れたままになっているところも多いのだとか。きっとこれでも氏子の人たちで整備して人が通れるように直したのだと思うけど、もとのきれいな状態にするには、なかなか大変だろうな・・・と感じた。
ちなみに、この遙拝所への道は、京都トレイルのコースになっているらしく、猛暑の中でもトレーニングウェアを着てサクサクと走っている人を何人か見かけた。
荒れた道を抜けると、緑が生い茂る山の中へ入っていく。またまた急な坂道をひたすら上る。
この坂道の先の明るい所に遙拝所があった。
ここが遙拝所。この向こうに本物のお伊勢さんがある。友人とお参りした。
山の頂上らしき場所なんだけど、草が生い茂りすぎて、景観はイマイチ。でも、草の間から、かろうじて京都の街を望むことができた。
神社から遙拝所に向かう山道で見つけた小さな碑。長い歴史の中で、ここを通る参拝者を多く見守ってきたのだろう。
今はトレイルランを楽しむ人を守っているのかもしれない。
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