おじさん達の「女性コンプレックス」ほど面倒臭いものはない

昨日、夫と仲の良いオジサンと立ち話をする機会があった。

このオジサン(Ｔさんとする・６０代後半)は、自営業で家族を養い、地域の活動にも積極的に参加している、とても元気なオジサンだ。

でも、そのＴさん。夫とは気が合うみたいで、すごく親しくしているのだけど、私に対してはどこか他人行儀で素っ気ない態度なのだ。

昨日も、Ｔさんとバッタリ会ったので、挨拶がてら世間話を少ししたのだけど、この時も、Ｔさんはずっと決まりが悪そうな態度で、私とは目も合わせないし(･･･というか、目が泳いでいた)、私に向かって話してくれる内容も、自然に出てくるものではなく、無理して作ったような感じで、必死になって絞り出すようにして喋っている･･･という雰囲気。

そんなＴさんを見ていると、何だか申し訳ない気分になってきて、私は早々にご無礼した。

◇◇◇

その晩、夫にＴさんのことを話してみた。

「もしかして、私のことが苦手なのかな？　私、嫌われているのかな？」

すると夫は、「えっ？Ｔさんは、根は明るくて良い人だから、そんな人を嫌って悪態をつくような人ではないよ。」と驚いていた。

でも、夫は途中で「あっ！」と何かを思い出したようで、「もしかしたら、Ｔさん、女性が苦手なのかもしれない。」と話し出した。

以前、Ｔさんが所属していたボランティア組織に、女性の役員さんが入ることになった。今までは男性が取り仕切っていた組織だったので、初めての女性の加入になる。この新メンバーの女性は、年齢はＴさんと同世代だけど、東京から嫁いで来た人で、しかも有名な四大卒で語学も堪能･･･という田舎では珍しい超才女だった。そんな才女が、自分の属する団体に入ってくると知り、Ｔさんはとても不安がったという。「大丈夫かな。そんな立派な人と自分は上手くやっていけるのだろうか･･･」と。

その時のＴさんの様子を、夫は間近でずっと見てきた。

同性の男性に対しては、歯に衣を着せずバンバンと言いたいことを言って豪快な人なのに、女性･･･自分より頭の良くてしっかりしている女性が相手だと、急に小さくなって口ごもり「大丈夫かな、大丈夫かな･･･」と心配し不安がるＴさん。

そんなＴさんのことを思い出した夫は、私に「もしかしたら、Ｔサンは女性にコンプレックスがあるのかもしれないよ。」と教えてくれた。

へっ？何ですって？

女性コンプレックス･･･？

Ｔさんの顔を思い浮かべる。あの時の態度、様子、言葉･･･。

全てが「コンプレックス」と符合した。

あっ･･･。

なるほど･･･。

そういうことか～。

私は腑に落ちた。

Ｔさんに嫌われているというより、単に「才女コンプレックス」が発動されただけなんだ･･･と。

私はそんな才女ではないけど、Ｔさんから見たら、私も四大出の才女の部類に入るらしい。(･･･と夫が説明してくれた)

そういう女性が目の前に出てくると、何を話せば良いのか、どう振る舞えば良いのか、さっぱり分からなくなって、軽いパニック状態に陥るらしい。

だから、あの態度、あの仕草、あの話し方だったのか･･･。

もちろん、Ｔさんには奥さんがいるし、娘さんもいる。家族に女性はいるのだから、決して女性嫌いというわけではない。家族思いの良いお父さんだ。

でも、人生のどこかで「勉強ができる女子」に対して、強いコンプレックスを抱くようになったのかもしれない。

そう思うと、Ｔさんくらいの６０代後半から７０代以上の男性って、女性に対して素っ気ない態度の人が多いなぁ･･･と感じる。

夫くらいの年代(アラ環)の世代は、男女分け隔て無く仲良くしてくれる人が多いけど、それ以上の世代は、異性に対してどこかぎこちない。時には、Ｔさんのように、すごく素っ気なかったり、こちらを無視したり、最初から存在しない者のように扱ってきたりして、嫌な気分になることがたまにある。

そういう高齢男性に遭遇するたびに、「何でそんな態度なの？私は嫌われているのだろうか？」とずっと心を痛めてきた。

しかし、今回、夫の話を聞いて「もしかしたらＴさんだけでなく、あの年代の男の人たちって、実はみんな女性コンプレックスなのかしら？」とふと気づいたのだ。そう、高齢男性が、女性に対して失礼な態度を取るのは、単に女性コンプレックスをこじらせているだけなのかもしれない。

そう思うと、やはり全てが符合する。

じゃあ、女性側がどんなに言葉や態度に気をつけて誠意を込めて接しても、原因が男性側の「女性コンプレックス」なら、解決しようがないじゃん。そりぁ、男のほうが自分のコンプレックスを自覚して、克服する努力をしない限り、両者の溝は埋まらんってことだ。･･･と悟った。

それにしてもなぁ･･･。

私はずっと、あんな態度をされるのは、自分に何か問題があり、自分に非があるからだ･･･と自分を責めて思い詰めていたのだよ。それなのに、なーんだ、相手の心の問題だったのか～。

じゃあ、仕方が無い。悩んでいた自分がアホだったわ。

･･･ということで、これからＴさんに会った時は、Ｔさんのよそよそしい態度は一切気にせず、今まで通り「自分らしく」普通に接していこうと思った。そうそう、それで良い。