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2024年6月後半の日経平均振り返り


①    日経平均チャート

6月後半相場を振り返ると、日経平均株価は高値39788円、安値37950円となり上下値幅1838円となった。
今回の高値は4月4日以来のものである。
安値も4月19日の36733円から徐々に切り上げおり、もみ合いながらも、やや右肩上がりに推移している。

②    海外投資家の売り越し

このもみ合いの一因は海外投資家の売りである。
海外投資家は6月第3週まで5週連続で売り越しているが、これに国内個人や事業法人(自社株買いが中心)の買いがぶつかった結果、もみ合いを形成した。
ただ6月後半は物色銘柄に多少変化が見られた。

③    円安有利の輸出関連株

円安で業績に追い風となるはずの輸出関連株などに買いが集まらない。
市場では円安進行による業績へのプラス影響はすでに株価に反映されているとの見方が広がっており、逆に日本政府・日銀による円買いの為替介入に対する警戒感が高まっている。
急激な円高に転じて売り材料になることへの懸念から、投資家は上値を追っていけないのである。

④    バリュー株

こうした中、資本効率の改善を手掛かりにした割安(バリュー)株が相場を押し上げている。
気が付けば28日にTOPIXは3月22日に付けた年初来高値を更新した。

⑤    超円安水準

前回のレポートで為替介入について記述したが、26日に円相場は一時160円80銭台と37年半ぶりの水準まで下落した。
政府・日銀は円安是正に向けて有効な手を打てないとみて、ヘッジファンドなどは円売り圧力を強めている。
為替介入による円安抑制効果はわずか2カ月で切れた。
鈴木俊一財務相はかねて『介入は過度な変動への対応』との認識を示し、投機的な動きをけん制している。

⑥    過度な変動

足元の動きは「過度な変動」にあたるのかどうか。
直近の円安進行は1日に数十銭程度下落する「じり安」である。
主要7か国(G7)の合意では『為替レートの過度な変動や無秩序な動き』が経済に悪影響を及ぼす場合は介入を許容する。
市場では今の変動率では介入に踏み切りづらいとの見方が大勢だ。
2022年以降の歴史的な円安局面は、一貫して日米長期金利差の拡大に連動して円からドルに投資マネーが流れる構図だった。
よって日銀が金融政策を正常化する過程で米連邦準備理事会(FRB)が利下げ局面に入り、日米金利差が縮小する・・・これが円安是正につながる数少ないシナリオだった。
2024年に入り、日銀がマイナス金利政策を解除、FRBも利下げ転換の時期を探り始めたことで金利差は縮小に転じたが、円安圧力はむしろ強まっている。
現在の金利差は23年末とほぼ同水準。
当時の円相場は1ドル=140円台で、現行水準とは20円ほどの開きがある。
金利差との連動が崩れた背景には、円相場を巡る受給構造の変化がある。
23年までは貿易・サービス収支の大幅な赤字が金利差拡大と相まって円安要因になっていたが、24年に入って貿易・サービス収支の赤字が縮小、1~4月の赤字額は3兆円強で、23年の同期間を2兆円余り下回った。
受給面でも円安圧力が弱まったように見えるが、代わりに思わぬ伏兵が現れた。

⑦    新NISA

1月から始まった新しい少額投資非課税制度(NISA)を活用した個人の外貨資産投資だ。
財務省の統計によると、投資信託などを通じた海外投資を映す「株式・投資ファンド持ち分」は24年1~5月の合計で5兆円を上回る大幅な買い越しとなった。
一部は為替リスクを回避した投資も含まれるが、売り越しだった23年の同期間に比べ、最大5兆円強の円売り需要が生じた計算になる。
企業から個人へと主体は代わったものの、企業の貿易・サービス収支を大きく上回る円売り需要が新たに生じ、需給面から円安を支える構図が鮮明になっている。
しかも新NISAを通じた個人の海外投資の場合、長期間運用を前提にした積立方式の投資も多く、金利差の変化にかかわらず、継続的に円売り注文がでるのである。
政府・日銀は円安インフレによる消費低迷などを強く警戒し、大規模な円買い介入を実施して過度の円安を抑え込む姿勢を鮮明にしている。

⑧    資産所得倍増プラン

だが一方で、岸田政権が掲げる「貯蓄から投資」の看板政策である新NISAが大幅な円安を推進するエンジンになるという皮肉な構図が浮かび上がる。
政策の2面性を市場は突いているとも言える。
海外の投資家もこうした需給構造の変化を受け、円売り・ドル買いの姿勢を変えていない。
政府・日銀の介入にもかかわらず、米商品先物取引委員会(CFTC)によると、ヘッジファンドなどの投機筋によるドルの買い越し額は6月に入って再び膨らんでいる。
市場関係者の間では日米金利差が大幅に縮小する状況にならないかぎり、円安に振れやすい構造は変わりそうにないとの見方が広がっている。

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