マッチングアプリ体験談17-14(完)
●第17話「マグロ男」14
前回の話はこちらから。
私はもう攻守交代と言いたいところだったのだが、「勃たせてよ」と言われたら従うしかなかった。この男がいいとかそういうことではなく、もう我慢させられっぱなしで欲求不満になっていた。
ちょっとは私のこと気持ちよくさせようとか思わないわけ?いや、思わないだろうなあ。だって私の口の中気持ちいいんだもんね。仕方ないね。
手を動かして気持ちよくさせるのが下手な私は100%口に頼らざるを得ない。仰向けに横たわった男。咥える私を愛でることすらしない。気持ちよくさせてもらってるなら手ぐらい動かしやがれ。甘い言葉の一つも掛けやがれ。
こういうのをマグロと言うのだろうか。女性に対してしか使わないと思っていた。大きさからしても確かに魚市場で横たわるマグロを彷彿とさせるのかもしれない。
口をずっと大きく開けて下を向いていると、唾液が止めどなく滴り落ちてくる。たとえ自分から分泌されたものでもこの感触が嫌いだ。顎関節は痛い。息が苦しい。体勢もきつい。
この状況で私が気持ちよくなりたいなら、男が完全体に復活するまで頑張るしかないのだ。もうそろそろいいだろうと思って口を離すと、お決まりの一言「付けて」が出た。私は子どもに服を着させるような気分で装着した。
私「ねえ、後ろから突いて」
男「さっきやったじゃん。じゃあ後ろ向いて」
私は四つん這いになって背を向けた。
男「もっとお尻下げて。手じゃなくて、お腹下げて肘付いて」
違う。これでは先程の体勢と同じではないか。私が四つん這いになる体勢でしたいのだ。
ああ、イライラする。焦らされるのは好きだが、それはあくまで望んだ結果が得られることが前提だ。ご褒美のない焦らしプレイはただの拷問でしかない。待って待って待ったのに、私は男の性欲処理でしかなかったのだ。
男は夕方から予定があるということで出かける準備をし始めた。え、シャワー浴びないの?私も服を着替えるよう促され、身支度を始めた。
準備が終わると、男はベッドサイドテーブルに置いてある使いかけの不織布マスクを取った。それいつ使ったやつ?なんか黒い汚れ付いてるんだけど。昨日会った時はポリエステルのマスクしてたよね?最後までちゃんと不潔の極みを貫き通している。裏切らないなあ。マジ無理なんだけど…。
一緒に家を出ると車で最寄り駅まで送ってくれた。改札で「また連絡するね」と言ったきり、男からLINEが来ることはなかった。無論、私が連絡する理由もない。
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