マッチングアプリ体験談17-1

これまで1話完結の読み切り作品しか投稿してこなかったが、今回は初の長編となる。1話で終わらなそうなことだけは分かるが、最終的に何回に分けるかは書いている気分で決めようと思う。新着エピソードにして超大作になりそうな予感だ。

●第17話「マグロ男」1

私はほぼ9割見た目でしか男を選ばない。数多く男がいるマッチングアプリでどうふるいに掛けるかというと、まずは顔を見て、合格ラインなら身長と喫煙者かどうかで判断するといったところだ。この男は登録してある顔写真の3枚の振り幅がかなり大きく、どれが本人に近いかよく分からなかった。しかし、全て私の好みであることには違いなかった。

向こうからのいいねに私が返してマッチング成立。1週間ほど他愛もない話題でメッセージが続く。2人ともサービス業でお互いの休日が合わず、なかなか会う予定を決められずにいた。

「会うまでの繋ぎとして一度電話しますか?」向こうが提案してきた。じゃあ明日電話しましょうと約束をして当日を楽しみに待った。アプリの通話機能で話すのかなと思っていたら男は「なぜか認証が通らなくて通話機能使えないので、電話番号教えていただけたらこちらから掛けます」と言ってきた。

連絡先を教えることには違いないのだが、電話番号を伝えるのは気が引けた。LINEのIDを伝え、追加してもらった。2週間近くメッセージを続けた相手とやっと話ができる。声が聞ける。初めての通話は3時間以上も続いた。相手の声が好きだった。少し低めで落ち着いていて、私の好みにぴったりだった。声フェチの私としてはいつまでも聴いていたくなる声かどうかはかなり重要だ。

通話の中で男からタメ語でいいんじゃないかと提案された。そこからは一気に距離が縮まった。仕事のこと、家族のこと、休日の過ごし方など話題は尽きなかった。その2日後、だらだらとLINEをしていたら突然男から電話が掛かってきた。「いきなり掛けてごめんなさい。どうしても声が聴きたくなって。」心の底から嬉しかった。その日も1時間半通話していた。お互い無言の時間もあるが、それが気まずくない関係なのが心地よかった。

会話の中でふと「LINEや電話を待ってる自分がいる」と言った時、「なんで我慢するの?連絡したい時にいつでもすればいいじゃん!」と言われた。目から鱗だった。今まで私が一方的に好きな恋しか経験がない。重たい女と思われないようにいつも愛情表現をためらっていた。好きな頻度でしていいなんて考えたこともなかった。

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