私が胚培養士を辞めた理由
お久しぶりです、はぴきちです🍀
2020年、私は胚培養士としてのキャリアを終えました。
2019年秋頃から「はぴきち」としてTwitterでの不妊治療に関する発信を行ったり、皆様からの質問に答えたり、体外受精セミナー講師をしてみたり、自分が当初予定していたよりも幅広い活動を行ってきました。
胚培養士の母数がそもそも少ないこともありますが、Twitterで活動している方はあまりおらず、日本でのフォロワー数No.1胚培養士にもなりました。
Twitterを通じFemtechのベンチャー企業からオファーをいただき、アドバイザリーとしても半年ほど活動させていただき、とても貴重な経験を得ました。
そんな中、私がなぜ胚培養士を辞めたのか、今日は書こうと思います。
Twitterでの活動を通し感じたこと
そもそも私がTwitterを始めようと思ったきっかけは、自分が胚培養士としての業務の中で患者様に説明をする機会がありお話ししたところ、「ここまで親身に答えてくれる方はいなかった」「説明がとてもわかりやすく理解度が高まり、今後の方針を決めることができた」というようなお言葉をたびたびいただいていたからです。
胚培養士は実際の患者様と対峙する機会は少なく、配偶子や受精卵を相手にする時間のほうが長いため、Twitterで実際の声をたくさん聴けるということは非常に貴重であり、Twitterでいただいた質問を実務で織り交ぜて話すことで更に患者様の満足が高まっていくのを感じました。
業務で毎日同じような説明をしているなかで、実際にどこがわかりにくいのか、どういった部分で疑問が生まれやすいのか、ボランティアで質問に答えていた一方自分のスキルアップにも繋がりました。
Twitterを通し、私が想像するよりもずっと患者様の理解度は高いと感じましたし、なかには論文まで検索されている方もいらっしゃって、下手な胚培養士よりもはるかに知識がありそうな方もいらっしゃいました。これはとても驚きでした。
そういった背景には医療機関での説明不足のために患者様同士で情報の共有が活発となっていることも感じました。これは医療者側が責務を全うできていないことが大きく関与しているように思います。
医療機関の技術格差、不妊治療の保険適応、法整備、胚培養士の国家資格化などなど、自分が思うよりも当事者の皆様の問題意識が高いことにもとても感銘を受けました。
ネットではエビデンスの乏しいような記事が多く、医療業界は変わらなければならないと思う一方、自分が胚培養士として働いていても何も変わらない実情に嫌気がさすことも多々ありました。
辞めるにあたって
胚培養士はあくまでも技術職です。
日々どれだけ技術を高め、安定した手技を行えるかが仕事です。
その中で、私がしたいことって本当に技術を高めることかなと考えたときに違和感を覚えました。
私はすでに不妊治療の基礎的な知識を身に着け、日々相談を受け回答し、また業界を変えたいとすら思っているのに、一技術職でいる必要性を感じなくなっていました。
もちろん私が「現職の胚培養士」であることに価値を見出している方はたくさんいらっしゃると思います。
ただ、私はどのように新たな知識を手に入れるかもわかっており、相談に乗るうえでは「現役である」という看板はもう不要だと考えています。
私が胚培養士という職業を嫌いになったわけでも、不妊治療業界を見捨てたわけでもありません。
今後は違う角度からかかわっていきたいなと考え、また自分の別のやりたいことのために退職した、それだけです。
今後について
私は不妊治療関連ではありませんが、すでに違う職業に就いています。
ただ「はぴきち」として、不妊治療には関与していきたいと考えています。
いまは不妊治療施設に属していませんので、今後は今まで避けていた施設ごとへの言及もしていきたいと思います。
最近は不妊治療施設に特化した口コミサイトやデータベースサイトが増えてきていますが、「そこに焦点を当てる必要は特にないのでは?」「もっとこういう視点で選ぶべきなのに」と思う部分も正直あるので、自分の内部を経験した視点ならではの発信ができればいいなと思います。
はぴきちとしての現在の夢は自分の不妊治療データベースを作ることです。
それを見て、乱立する不妊治療施設の選び方がクリアになり、患者様も無駄な治療を受けることなく、また不必要な施設が淘汰されていけばいいなというのが理想です。
また「はぴきち」として、「誠実な胚培養士像」のブランディングを行ってきましたが、これからは不妊治療関連以外の発言もしていけたらいいなと思っています。
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