【短編】溶けたチョコレートみたいな朝焼け
溶けたチョコレートみたいな朝焼けに
フーっとため息ふきかけて
冷めたマグカップ
こびり付いたあぶく
霞のかかる後頭部
透き通った視界
空っぽの胃袋
野暮ったい唇
重ね方を忘れた言葉たちを
思い出そうとして諦めて
かび臭いカーテンの奥に
溶けたチョコレートみたいな朝焼け
背伸びして飲んでみた
砂糖を入れると
泡が消えちゃうから
我慢してそのままで
それからずっとカプチーノ
潰れたボールペンで
ぐるぐると円を書いて
いつか繋がったらいいのに
なんて、そんな夢物語
コーヒーにストロベリーの
チョコを溶かして
笑った甘党のあなたの前で
私は背伸びしてカプチーノ
声も笑顔も
体温も匂いも
会話も全て
忘れてあげるね
溶けたチョコレートのような朝焼けの向こう
ケトルで沸かした熱湯を
温かいマグカップに注いで飲んだ
カフェオレの甘みは
私の口にこびりついて
これからずっと、離れない。
Fin.