AIは精神疾患を滅ぼすか？

みなさんこんにちは。精神科医のkagshunです。
2022年のChatGPTの誕生以降毎日AIを触っていますが、日々その開発が加速しているのを肌身で感じています。

AIの進歩は人類を、文明をどのように変えるのか。日々AI情報を取得しているうちに、私たちの大半が予想する未来の姿と、AI企業の最前線を走るトップランナーの間では大きな乖離があることに気がつきました。

Dario氏はChat GPT最大のライバルであるLLMとも呼ばれるClaudeを作成するAnthropic社のCEOです。彼の予想する未来予想はあまりにも私たちの常識からはかけ離れているものでした。以下に彼のエッセイのまとめを記載します。ぜひ最後までお読みいただけると幸いです。

Dario Amodei氏のAI論考：人類の進歩を加速させる「強力なAI」の可能性

AnthropicのCEOであるDario Amodei氏は、AIのリスクについて頻繁に発言していますが、AIの未来に対しては楽観的な見方を示しています。Amodei氏が2024年10月に発表したエッセイ「Machines of Loving Grace」
では、強力なAIがもたらすリスクではなく、AIが適切に開発された場合に人類にもたらされる恩恵について考察しています。

Amodei氏は、強力なAIが特に以下の5つの分野において、人間の生活の質を直接的に向上させる大きな可能性を秘めていると述べています。

1.生物学と身体的健康

2.神経科学と精神衛生

3.経済発展と貧困

4.平和とガバナンス

5.仕事と意味

Amodei氏は、強力なAIの登場により、これらの分野において今後5〜10年の間に人類が100年かけて達成するであろう進歩を遂げることができると予測しており、これを「圧縮された21世紀」と呼んでいます。

強力なAIとは？

Amodei氏が想定する強力なAIとは、今日のLLM（大規模言語モデル）と似た形式のAIモデルであり、以下の特徴を持つものを指します。

●知能の面では、生物学、プログラミング、数学、工学、文章作成など、ほとんどの関連分野においてノーベル賞受賞者よりも賢い。

●テキスト、音声、ビデオ、マウスとキーボードの制御、インターネットアクセスなど、人間が仮想的に作業できるすべてのインターフェースを備えている。

●受動的に質問に答えるだけでなく、数時間、数日、あるいは数週間かかるタスクを与えられ、必要に応じて明確化を求めながら、優秀な従業員のように自律的にタスクを実行することができる。

●コンピューターの画面上に存在する以外に物理的な体はないが、コンピューターを通じて既存の物理的なツール、ロボット、実験装置を制御することができる。

●モデルのトレーニングに使用されたリソースは、数百万のインスタンスを実行するために再利用することができ、モデルは人間のおよそ10倍から100倍の速度で情報を吸収し、行動を生成することができる。

Amodei氏は、このような強力なAIを「データセンターの中の天才の国」と表現しています。

強力なAIは万能ではない：限界と課題

強力なAIは非常に困難な問題を非常に速く解決することができますが、その速度を正確に予測することは容易ではありません。Amodei氏は、強力なAIが世界を瞬時に変えるという極端な見方と、強力なAIは既存の技術進歩にほとんど影響を与えないという極端な見方の両方が誤りであると考えています。

Amodei氏は、強力なAIの影響を分析する際には、「知能の限界収益」という概念を用いることを提案しています。これは、ある状況下では、知能以外の要因がボトルネックになる可能性があるという考えに基づいています。

Amodei氏が挙げる、知能を制限する、あるいは知能と補完的な関係にある要因は以下の通りです。

●外界の速度: 細胞や動物は一定の速度で活動するため、それらに関する実験には一定の時間がかかり、それを短縮することは難しい。

●データの必要性: データが不足している場合、知能が高くても解決できない問題が存在する。

●本質的な複雑さ: 本質的に予測不可能またはカオス的な事象は、強力なAIをもってしても、人間や今日のコンピューターよりも大幅に正確に予測することはできない。

●人間からの制約: 法律を破ったり、人間に危害を加えたり、社会を混乱させたりすることなく、多くのことは行うことができない。

●物理法則: 光速を超えることはできない、エントロピーは減少することはないなど、物理法則には絶対的な限界が存在する。

これらの要因は短期的には強力なAIの能力を制限しますが、長期的にはAI自身がこれらの要因を回避する方法を見つける可能性があります。

ここからは、各分野における具体的な展望をお話ししていきます。