堀田量子 第4章の解説
この章全体の流れについて
この章には難しいところはほとんどありません。
この章では「テンソル積」を導入して、二つの系を合成した密度行列を作る方法を学びます。また、合成した密度行列から一方の系の密度行列を復元させるための「部分トレース」という計算方法を学びます。
二つの系に相関が全く無い場合にテンソル積を当てはめると、大変イメージしやすい性質を再現してくれます。この章ではそのことを確認していきます。
この章の中では少しも触れられていないのですが、次の第5章では二つの系に相関がある場合の話が出てきます。実は相関がある場合には合成系の密度行列はそれぞれの系の密度行列の単純なテンソル積では表せなくなってしまいます。この章で説明されている合成系の密度行列は相関が全くない場合の仮のものです。そのことを念頭に置いて読んだ方が良いと思います。
この章で説明されるテンソル積や部分トレースは、二つの系に相関がある場合にも変わりなく使っていけるように定義されます。少々回りくどい感じの説明になっているのはそのためです。
章末の演習問題になっている証明は、二つの系に相関が全くない場合にはほとんど自明なことなので、このような面倒な計算をする必要は無いのではないかと思えてしまうかもしれません。しかしこれは次章以降で二つの系に相関がある場合を念頭に置いたものになっています。合成系の密度行列がそれぞれの系の密度行列の単純なテンソル積で表せる形になっていなくても成り立つということを証明しています。4.6節の説明もそのために少々回りくどい方法を取っています。
この章では特にこれ以上解説しなければならないことは無いと思うので、ここまでの全文を無料で読めるようにしておきます。もしもここまでの話がお役に立てましたならご購入いただけると助かります。
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