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映画感想:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-
本日封切りの映画「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」を拝見しました。この表記で「機動戦士ガンダム ジークアクス ビギニング」と読みます。
わりと直前までどうしても「ジークアクス」が覚えられなくて、ジーク……アウス? みたいになってて我ながら切なかったです。歳を取る程にマジで横文字に対する順応性が衰えていくのを感じます。
さて、本作に関してはPV公開時点の日記で所感を述べていました。内容のほとんどが監督を蔑ろにして、庵野秀明のネームバリュー一点張りで好き放題言うインターネットの有象無象に対する憎しみに彩られている一方、こんな予想も残していた。
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や、野郎まさか……
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人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀が過ぎていた。地球の周りの巨大な人工都市は人類の第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった。 宇宙世紀0079、地球から最も遠い宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。この一ヶ月あまりの戦いでジオン公国と連邦軍は総人口の半分を死に至らしめた。 人々はみずからの行為に恐怖した。戦争は膠着状態に入り、八ヶ月あまりが過ぎた……
ナレーションが終わるとともに原点通りのSEと共にタイトルロール。事前情報の中に仕込みがあったので恐らくやるだろうとは思われていたものの、こうまで原文ママとは恐れ入るぜ。そんな訳で、冒頭から始まる「シン・機動戦士ガンダム」に劇場が騒然。個人的にもつい映画館でハハッ、と声を出して笑ってしまったシーンではありますが、もとよりガンダムで「ビギニング」とくれば、井上大輔氏が遺した劇場版の名曲が真っ先に浮かぶので、サプライズというよりはやはり来たか、という感じではあります。
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コロニー落としの描写も当然に再現
もはや当たり前かのように、連邦のV作戦を察知した"ジオンの赤い彗星"、シャア・アズナブル少佐が部下のザク小隊を引き連れてサイド7に侵入。なに言ってんだコイツって感じですが、実際にここまでは再現してるんだからしょうがないぞ。ちなみにシャアの声はご存知の池田秀一氏……ではなく、「東リべ」の主人公、花垣武道を演じていた新祐樹さん。これはリメイクによる若返りというよりは、「シン・仮面ライダー」の本郷猛と同じ理屈で、オリジナルとは別のアプローチからシャア・アズナブルを再構成する試みの一環であると個人的には予想しており、庵野秀明の存在をほのかに感じられる部分です。
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しかしおよそ原作踏襲と言えるのは、ここまで。というかこの時点で既に原典とは状況設定において細かな違いがあり、まずシャア自らがお馴染みの赤いザク(シャアザク)で先行している点、そしてなにより部下のジーン、デニム、スレンダーのうち、ジーンのザクは故障により出撃を免れています。よもやこれがジオンの明暗を別つ分水嶺になろうとは……。
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こうした些細な、されど重大な異同により、功名心から焦ってサイド7を奇襲するジーンの存在がなかった事になり、アムロがガンダムに乗り込むきっかけが見事に失われます。その結果、どうなるかというと……、
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弱冠20歳で少佐に登り詰めた若き日のシャアが、現場でみすみす手柄を立てるチャンスを逃すはずもなく、迂闊なジーンに代わり、極めて手際よく連邦のモビルスーツ工場を破壊していきます。冒険王版だ! 若さゆえの過ちを気にする必要がなくなった。そうしてサイド7破壊のRTAチャートが進行した結果、コックピットハッチが開いたままのRX-78-2「ガンダム」をあろう事かデニムが発見し、シャアに報告する事態へ。こうなると次に何が起こるか、もはや「ギレンの野望」ユーザーの目には火を見るよりも明らかです。
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こうして「Zガンダム」第2話を顧みるまでもなく、シャアによるガンダム強奪が無事に達成されます。ついでと言わんばかりに「5倍以上のエネルギーゲインがある」みたいなアムロのセリフも全て回収。あまつさえ、
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有名どころのカットを全てガンダム in シャアに置き換えて完遂。相手は都度ガンキャノンとかプロトタイプガンダムに置き換わっていて、そこそこ善戦はするものの、やはりアムロ以外は大した相手にならず。異世界転生したシャアかと思うくらいの無双っぷりを魅せます。なお言うまでもありませんが、この後ガンダムは赤く塗装されます。
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また、シャアが特に障害なく勝ち続けた結果として、"木馬"ことホワイトベースも脱出前にパオロ艦長ごとメインブリッジを焼き払った上で接収。(この時点でのブライトさんはただの士官候補生なのでおそらく生存)ついでに、ファンの間では「シャアの麾下に入ると死ぬ」と囁かれるほどに生存率の乏しかった部下たち(ドレンなど)も生き延びる事が出来ました。まぁもともと彼らの死因の100%がアムロのせいなので、当然と言えば当然なのですが。
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とはいえ、流石にシャアのガンダム無双だけでは戦争の大局を覆し得るものでもなかったらしく、気が付けばしっかりとソロモンが失陥して、ジオン本土の最終防衛ラインにまで追い込まれていました。この辺りでしれっと大佐に昇進していたシャアは、ファーストとほぼ同様の経緯でニュータイプの適性を見出され、ついに元祖ニュータイプである"あの男"と邂逅します。
……。
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そう、皆さんご存知のシャリア・ブル大尉ですね。ガンダムシリーズ史上、劇中で初めてニュータイプであると言及されたキャラクターとして、ファンの間では密かにお馴染みです。しかし哀しいかな、「機動戦士ガンダム」の劇中では、高い素養と実直な人柄を兼ね備えていながら、それゆえに政治的な板挟みに翻弄され、ついには見かねたシャアから敢えて死に場所を与えられるという末路を辿ります。
余談ですが、この時のシャアの「ニュータイプは万能ではない。戦争の生み出した、人類の哀しい変種かも知れんのだ!」というセリフで「人の革新」の空虚な本質を第一作から突きつけてくる凄さ。
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もともと不憫な立ち位置の上、劇場版三部作の折には出番そのものをカットされた経緯を持つシャリア・ブル大尉ですが、本作では物語の鍵を握りそうなメインキャラクターへと大出世。シャアのアプローチで派閥争いから脱却し、彼の志に共鳴した結果、戦後も生き長らえてナイスミドルに。もっとも、その後はその後で行方不明になったシャアをひたすら探し続ける羽目にはなっているため、いまが幸せなのかはわかりませんが。
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そんなこんなで、あれよという間に一年戦争も終盤。連邦軍に残された唯一の拠点ルナツーが、45年来に及ぶドズルの悲願であったビグ・ザムの量産という、まさしく"ソロモンの悪夢"に襲われて陥落寸前の中、ワッケイン司令率いる艦隊がせめてジオンを道連れに、と生命線である月面のグラナダ基地に対して、アクシズ落としならぬコンペイトウ(ソロモン)落としを敢行。ジオン絶体絶命の窮地を救うべく、シャアの部隊が逆ロンド・ベルじみて要塞内部の誘爆による軌道変更を試みます。「逆襲のシャア」までを一気に観た小学生が考えた展開? あとどうでもいい事ですが、これでアクシズやア・バオア・クーとも、ジオンの衛星拠点は軒並み質量兵器に転用された経験を有する事になります。
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自分が逃げ出せば兵の士気に関わると、キャスバル坊やに一縷の望みを託してグラナダに居残るキシリア様(C.V.名塚佳織)。おそらく初代の彼女であれば、いの一番にチベで逃げ出していたであろう事を思うと、まったく大した成長ですが、シャアからすればこの時空でも所詮は親の仇なので、必死こいてグラナダを守る振りをしつつも殺る気満々でした。
ちなみに本作におけるザビ家の動向については、ガルマがシャアの復讐の手を逃れて除隊したことが言及され、ドズルのみソロモンが陥落しているので死亡説が濃厚。ギレンはともかく、少なくともキシリアに関しては戦後も生存が確定しています。公王陛下は……わかんない。居てもいなくても別に変わらないし。
シャア的にはここまで順風満帆なifルートの代償ゆえか、親の仇に対する復讐達成スコアがいまいち伸び悩んでいる印象ですが、そもそもファーストにおいてもガルマを手に掛けた時点で復讐の虚しさを悟り、キシリアを殺したのも、あくまで行きかがりついでの清算だったため、まぁそんなものかなという感じです。今作はガルマの件で自省する機会がなかっただけ、内心まだまだ復讐する気ではいたようですが。
そんな具合で部下にすら黙ってウキウキでキシリアをぶっ殺す算段を企てていたシャアですが、いきなり連邦の凄腕ガンダムに阻まれます。切り結ぶ中、ニュータイプの感応力で見出した敵のパイロットの正体、それは……
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ララァが死ぬ遠因にもなった、戦場での妹アルテイシア(セイラさん)との邂逅。従来の作品でも後に「あの時、妹のアルテイシアが現れなければ……」と述懐しているのもあってかなりの鬼門でしたが、それは今作でも逃れ得ぬカルマだった様子。もっともセイラさんがファーストでガンダムを乗り回した時には、ろくに操縦できずに泣きながらゲロを吐いてたほどなので、本作におけるシャアの直感が正しいのかは現状、判断できません。
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あわやグラナダに衝突する寸前だったソロモンは突如として謎の光に包まれ、最終的に不思議な力によって落下コースを変えていきました。これにより連邦軍最後の抵抗は失敗に終わり、一年戦争(ジオン独立戦争)はザビ家が健在のままジオンの勝利で幕を閉じます。なおソロモンの崩落に巻き込まれつつ、光の発生源にいたシャアは乗っていたガンダムごと行方不明になりましたとさ。どうしてこの人はララァもアムロも居ないのに、一人で「逆襲のシャア」RTAを完遂させているのでしょうか。まるで意味がわからんぞ!
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とまぁ、概ね以上のような出来事が、物語の導入部でした。あまりの事に肝心の本編に入る前から4000字近く費やしてしまったせいで、今日はもはや続きを書く気力がございません。この記事までたどり着いた人に言うことではないのですが、ここから先はぜひ自分の目で確かめてほしい。本編に入ると雰囲気が一転して、色彩豊かな令和版「フリクリ」が始まるので、庵野がどうこうとか言えなくなります。グレート、確かに紛うことなき鶴巻作品だぜ、こいつァ……!