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そこそこの読書量の40代男性による私的2021年書籍ベスト3

毎年、年始に「今年は100冊は読むぞ」と意気込んで目標を立てるのだが、2021年も結局40冊程度しか読めずに終わってしまった。

そんな心もとない読書経験の中から、私的ベスト3を発表したい。ベスト3と銘打っているものの、選出した三冊にジャンルが異なるため優劣はないと思っている。

全野球ファンの必読書「嫌われた監督」

折に触れて絶賛し続けている落合政権下の中日を描いたノンフィクション。その素晴らしさは以下のエントリでも書いた。

文章力や構成が素晴らしいのはもちろんだが、本作の凄さは、描かれている場面のディテールにある。選手たちが喫茶店で食べていたものがシロノワールであり、球団社長が手にしていたのが烏龍茶だったというディテールが、読者にその場面をよりリアルに想像させる。

実際に食べていたのはミルフィーユであり、持っていたのは十六茶だったかもしれない。そして、仮にそうだったとしても物語には、さほど影響を及ばすことはない。それでも、そうした細部の描写にこだわることが作品全体のレベルを高みに押し上げていると言えるだろう。

登場人物全員が少しずつ「ダメ」・「『低度』外国人材」

日本政府が使用している「高度外国人材」という言葉の対極を示す言葉としての「低度外国人材」。本作では、これを「(年齢だけは若いかもしれないが)学歴・年収が低く、日本語はろくに喋れず専門知識もない、非熟練労働に従事している」人たちといった意味で使っている。

本作の著者が描き出す、外国人材は「そこはかとなくダメ感」が漂う人たちばかりだ。見通しが甘い、どこか気が抜けている、要領がよくない…。そうした人たちを搾取する側にとって有利な「技能実習生制度」のような「ダメ」な仕組みは確かに改められるべきだろう。ただ、制度が改まったところで、すべての問題が解決するわけではない。

この関係者全員が、少しずつダメであり、それがゆえに複雑な問題を著者がバランスのよい距離感で描き出している。ルポとしては秀逸だが、全体に読後感はメシマズとなっている。

圧倒的エンタメ小説「同志少女よ、敵を撃て」

言わずと知れた直木賞候補作品。第二次大戦中のソ連における女性狙撃兵が主人公。

故郷と家族をドイツ兵に焼かれた主人公が打つべき本当の「敵」とは何なのか。戦争の悲惨さとその中に生きる人間の複雑さを描く本作は、とにかく全体の構成が巧みで、特に後半は怒涛の如く伏線が回収されていく。読んでいると、「あー、あそこの描写をここで生かしてくるのか」と膝を叩きたくなるような爽快感を感じることができるだろう。

本作を契機に同じくソ連の女性兵士を描いたマンガ「戦争は女の顔をしていない」も読んでみたが、こちらも傑作だった。それにしても戦争は辛い。バカみたいな感想だが、しみじみと感じる。一つの華々しい英雄譚の背後には、1000を超える無名かつ無慈悲な死、絶望があるのだろうと思わされる。

番外・「三体」シリーズ

各所で絶賛されている「三体」シリーズも、2021年に入って読破した。

この作品は、とにかくスケールがでかい。地球を超え、宇宙を超え、次元を超え、時間を超え…と、己の卑小な想像力をはるかに超える大きさで物語が展開していく。

ⅠからⅡの上巻の中盤ぐらいまでは、その世界観についていくのが大変だったが、ここを乗り切ってからは終わりまで、ほぼノンストップで読み進めることができた。

本作については、ぜひ読んだ人たちと語り合いたい。っていうか、雲天明がかわいそうすぎない?

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2021年も、上記以外を含め、様々な良作に出会うことができた1年だった。来年は自分も何らかの「作品」を世に出すことができたといえる一年にしたいとおもっている。


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