少女S
”認められたい”
”完璧じゃなきゃいけない”
”いい子でいなければいけない”
”勉強ができなければいけない”
”何かで1番でなければいけない”
そんな歪んだ思考を小学生になる頃までに身につけた少女はがむしゃらに頑張った。
お母さんに褒められることが最大の承認。
少女はお手伝いを他の姉妹より何倍も頑張った。
綺麗にお皿を洗い、几帳面に角を揃えて洗濯物を畳む。
お家に帰ると宿題と予習。
お風呂に入ってご飯を食べて、8時にはお布団に入る。
お母さんはニコニコしていた。
「さっちゃんはいい子ね」
学期末の漢字テストで100点を取る事は誰からも認められるすごいこと。
少女はとにかく勉強した。
毎日毎日書き取りをして、ノートを何冊もつぶした。
少女は自信満々でテストに臨んだ。
「できた!絶対間違ってない!」
帰ってきた答案は98点。
一ヶ所だけ小さなハネを忘れていた。
少女は答案を眺め静かに席に戻った。
98点の答案はお母さんを喜ばせられなかった。
「あら、2点はどうしたの?」
ねぎらいの言葉もなく残念そうな顔で少女を見つめる。
「さっちゃんはやればできるのにね。」
少女はいい子で居続けた。
いつまでもいつまでもお母さんのマリオネットとして。
考えてもおかしいと思い反抗してもお母さんの喜ぶ顔は見られない。
少女は考える事を辞めた。
少女の周りには誰もいなくなった。
気がついたら家族しかいなかった。
少女は家を出た。
都会にとけ込んだ。
しかし周りには誰もいない。
家族もいない都会では少女は本当にひとりぼっちだった。
いい子の少女Sはビルの屋上で星を眺めていた。
「わたしもお星様になれるかな」
表情も感情もなくしていた少女は突然笑い出し大空へと駆け出した。
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