まだ見ぬカルボナーラを求めて
僕は多分カルボナーラが好きだ。多分というのは、カルボナーラを食べて舌鼓を打った経験が無いからである。でも多分好きなんだと思う。
まず、僕はチーズがとても好きだ。個体として食べるのはもちろん、溶けて混ざっているのも大好きだ。何か料理に変化をもたらしたい時に選択肢としてよく挙げるほどには、チーズに対し大きな信頼を置いている。そして僕は黒胡椒も好きだ。堅揚げポテトは当然ブラックペッパーだし、ステーキ肉には塩コショウも良いがブラックペッパーを好んでまぶす。あまり聞かないかもしれないが、唐揚げにふりかけるのも凄く合うと感じている。
パスタにベーコン、この組み合わせに、味付けとしてチーズと卵からなるソースと黒胡椒のアクセント。外れるわけがない。頭の中で想像するカルボナーラは紛れもなく絶品だ。
しかし、自分の想像する味のカルボナーラには未だに出会ったことがない。いつも頭の中に理想のカルボナーラを思い描きながら食べて、「まぁなんか、こんなもんか。」と微妙な感想を持つ。決して美味しくないと感じるわけではない。むしろ美味しいとは思う。だが、カルボナーラの本気はこんなものではないだろうとも思うのだ。
これは仮説だが、カルボナーラが庶民的すぎるところに僕が理想のカルボナーラに出会えない理由があると僕は考えている。スーパーに行けば安くカルボナーラのパスタソースは手に入るし、レシピを調べても「卵とチーズを混ぜるだけ」と手軽さがアピールされている。このあまりにも庶民的すぎる感じが、カルボナーラを陳腐なものにしているような気がしてならないのだ。思えば、僕はスーパーで買えるパスタソースや安価な店でしかカルボナーラを食べたことがない。もっと高価で手の込んだカルボナーラを食べれば、また違った感想を得られるのではないか。
そう思うと、今日では安く食べられる数多くの料理で、その料理の最大限のポテンシャルを味わったことがあるものはかなり少ないかもしれない。いいお店ではそこでしか食べられなさそうな珍しい料理ばかり行きがちたが、むしろカルボナーラやビーフカレーのような庶民料理の高級版を食べた方が、自分の中で比較することも出来るし高級感を楽しめるように思う。
まだ見ぬカルボナーラを求めて。少し背伸びをして、雰囲気のあるイタリアンに足を運ぼうと思った。