【随筆日記】ストリートビューで追う47都道府県思い出の場所《茨城県》
茨城県八溝山日輪寺
茨城県民でもない限り、茨城県最高峰が八溝山だなんて事を知っている人も少ないだろうし、そもそもこの八溝山ってそれほどの知名度なのかもわからない。とにかくこの八溝山。山の北側は福島県。そのくらい関東地方でも端の端にある場所だ。しかしこの山からは直接富士山を見る事もでき、関東平野の広さをその目で確かめられる場所でもある。茨城県内だと筑波山から見る富士山が有名だが、この八溝山から見る富士はさらに遠く小さく見える。それもそのはずで富士山と筑波山の距離のさらに半分くらい北に向かったところに八溝山は位置する。
この八溝山にはいくつもの伝説があるが、その中でも日本武尊(やまとたけるのみこと)がこの山の森の深さを「ここより先は闇ぞ」と言った事から「闇ぞ」が「八溝」になったという言い伝えがあるほどだ。(と言う事は福島は闇だったという事なのか?)
この八溝山に写真の日輪寺がある。ご本尊十一面観音はなんでも空海の作だという言い伝えもあるくらいだ。この寺の開基の話には日輪寺ともう一つ月輪(がちりん)寺という寺もあったらしい。今はその名前しか伝わっていない。
このお寺は板東観音三十三カ所巡礼の札所でもある。確か二十一番だ。我が家は四国八十八カ所以外にも板東三十三カ所と秩父三十四ヵ所の二つの巡礼路も結願している。板東は二度お参りした。ということでこの八溝山も実は2度行っている。と言う理由でこのお寺を紹介しているが、その時につくづく思う事。
茨城県って半分より下しか使ってないんじゃないの?
というくらい、茨城県の名だたる観光スポット、大きな街は南側に集まっている。冒頭の冨士山のエピソードでもそうだが、筑波山なんてのはまだまだ茨城でも南の方にある。
そんな位置にあるのだからさぞかし行きづらい場所なのだろうと思うだろうが、その通り本当に行きづらい場所だ。話を板東巡礼に絞って言えばこの八溝山は麓に「遙拝所」というここからお参りもできますという場所がある。つまり実際に行くには躊躇してしまう場所である。遙拝所がわざわざあるんだし、冬場は山に入れなくなることもあってそこで御朱印をいただくこともできるのだが、この遙拝所を利用すると「八溝知らず」と言われ「八溝知らずの偽板東」と揶揄される。この言葉は肝心の一つを押さえなかった事から全てを台無しにすると言う意味を持っている。
じゃあさぞかし日輪寺は素晴らしい場所なのかと言えば。そのありがたさはやはりロケーションあってのことで、建物はけっこう近代的なコンクリート造りだ。ただ本堂でお経を読んでいるとなんとも言えぬ達成感がたとえ車でやって来てもひしひし感じる、それだけ人里離れた行きづらい場所でもある。あとは住職さんのお話が有り難かったかな。気さくな方だったことを思い出す。
茨城県にはそのほかにも板東の札所は数カ所あり、お堂が国宝の佐竹寺、笠間の佐白観音で知られる正福寺、そしてあじさいが有名な雨引観音の楽法寺など見所もある。それらの有名な寺を一つ一つ行くような機会もないが、巡礼となればそこはまとめて一気に見て回れるのも魅力。
ただ、我が家は二度回ったがこの日輪寺があまりにも遠くて3度目を考えた事がないのも正直な話である■