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【随筆日記】 煙草のこと

 雑感とは違ったエッセイのような物をたまには書いてみたいと思って「随筆日記」を設けた。一回目は煙草について。僕はかつて誰もが認める程の煙草好きだった。

 去年の今頃、入院をしたので自ずと煙草はやめられた。そりゃ二ヶ月以上も入院してれば煙草もやめられるというものだ。退院後も煙草には手は出さなかった。今から思えば自分でもタバコを吸おうと何故考えなかったのかわからない。何かのきっかけがあったらやめようかなと考えていて、そのきっかけがたまたま入院だったと言うことだ。

 僕の煙草好きは僕を知るごく限られた人たちの間では当然のこと。最後に吸っていたアメリカン・スピリットは葉の密度が高くて吸い切るのに普通の煙草の倍近くあったという理由で選んでいた。あの煙草は本来5分以上は煙草を楽しむ人向けに作られたものだとさえ思う。同じ価格帯の他の銘柄と比べると長く吸っていられる分かなりお得な煙草だ。

 葉巻、パイプからキセル、水パイプに至るまで何にでも手を出し、最高の煙草を求めてキューバにまで行くくらいの煙草好きだった。あまり人には話さない事ではある。

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 上の写真はハバナにあるパルタガスという葉巻メーカーの工場の看板である(1999年撮影)キューバではこの葉巻工場を見学し、町で「アバナス」と呼ばれる葉巻の安いサイズを探し、お土産にもアバナスの高級品を買った。パルタガスはこのアバナスの主たるメーカーの一つ。それと双璧を成すのが「ロミオイ・フリエタ」というメーカーだった。どちらも国内消費用にシガレットと呼ばれる紙巻きの煙草を出しており、特に廉価版はハバナでは簡単に手に入れられたがキューバの外に出るとます入手は不可能に近かった。

 ハバナ滞在中は1週間ほどアパートを借りて滞在していた。宿でもなく、ウィークリーマンションというものでもなく、やっぱりアパートという言葉が一番当てはまる。ここで昼も夜も好きな時にシガレットを吸い、気ままに散歩をしては市場を覗く日々を送った。大家のマヌエラという小母さんは英語のyesもわからない人だったけど息子のマリオは英語が話せるのでマリオを通して夜になるとよくおしゃべりを楽しんだ。そのマリオがとっておきのアバナスを一本くれたのだが、おそらく自分が一番おいしいと思った煙草はそれだったと思う。それもまたパルタガスのアバナスだった。

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 などという思い出話までできるくらいに煙草は好きだった。しかし時代の流れと何よりも自らの変化には勝てなかった。煙草を続ければ壊死した脊椎の再生はありませんよと言われればそれを無視してまで煙草を吸い続ける理由も見当たらない。

 ただ専門家が言うには禁煙は始めて6時間から効果が見えるとのこと。そして危険なのは24時間後と6ヶ月後だとも言う。さらに僕は2年続けていた禁煙をやめたというあまり自慢にはならない禁煙歴が複数回ある。たかだか一年やめたからと安心もできないのが正直なところ。

 最近になってまた煙草の値上がりがあったらしいが、今度は自分ごとでもないので詳しくも知らない。そんなに煙草にばかり税を乗せるのは喫煙人口を減らすという目的もさることながら、他にも理由があるからなのかな。もっと酒にも税金をかけろよと酒を全く飲まない立場として言いたい。

 このやり方は20世紀の時からカナダは特に露骨にやっている。嗜好品にかけられる税のことをシンタックス(罪の税)と呼んでいた。日本はまだまだそう言った面では激甘で、税金をかけるとすれば煙草にばかりかけている。だとすると僕もまた結構な納税者だったんだと思う。そして今はシンタックスに当たるものを全く払っていないことが寧ろ自慢にもなりそうだとも思い始めている◾️

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