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自由律俳句集「食べられる退屈」

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拙作自由律俳句集「食べられる退屈」の過去投稿分を集めました。
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2022年1月の記事一覧

【自由律日記】「食べられる退屈(76)」

【自由律日記】「食べられる退屈(76)」

 朝から晩まで自転車で逃げる

 雨だけは降るなとツーリングの空

 つれない猫 夢にも出て来ず

 経緯思い返す事さえ想像できぬ

 明日もきっと退屈だもっと寝て過ごそう

【自由律日記】「食べられる退屈(75)」

【自由律日記】「食べられる退屈(75)」

 豆腐屋のラッパもスピーカーから

 退屈が忍び寄る満員電車のあちこちで

 あるじなき手袋木の枝暖める

 退屈積もり尚重くなり

 幼きころなくした帽子思い出す

【自由律日記】「食べられる退屈(74)」

【自由律日記】「食べられる退屈(74)」

 走り出せども涙止まらず

 外見で損していると気づく夜

 悟られて敗北感

 諭されて敗北感

 彩る花も不要な月光

【自由律日記】「食べられる退屈(73)」

【自由律日記】「食べられる退屈(73)」

 俺の肩を叩くな

 本当に孤独を愛する人はいるのだろうか

 強がりも一週間程と見る

 決意の遠吠え闇に谺もせず

 その声関心もなく雑音のごとく

【自由律日記】「食べられる退屈(72)」

【自由律日記】「食べられる退屈(72)」

 酒こぼし考え改まる

 渋谷歩けばデカダンス感じ

 また酒こぼし開き直る

 する事もなくいたずらに冷蔵庫開ける

 人の感情の我儘なことよ

【自由律日記】「食べられる退屈(71)」

【自由律日記】「食べられる退屈(71)」

 手が臭くなるほど真鍮細工磨く

 遠くに見下ろす光気にかゝる

 物言わず静かに氷点が襲う

 今宵静かに呼吸する

 鉄気の多い温泉につかる

【自由律日記】「食べられる退屈(70)」

【自由律日記】「食べられる退屈(70)」

 真似するくらいならなり切る

 退屈一つ振り払いまた一つ

 つまらない奴に恐縮し過ぎた

 坊主好きでもお経は苦手

 寒村に路面電車を見た

【自由律日記】「食べられる退屈(69)」

【自由律日記】「食べられる退屈(69)」

 職業に貴賎無しと雖もあれとあれは

 やませという名の霧が白く立ちこめる

 ふざけた後の心苦しさは退屈のよう

 些細なトラブル続き事故は無し

 かっこつけて穴を掘る

【自由律日記】「食べられる退屈(68)」

【自由律日記】「食べられる退屈(68)」

 このコードを引き抜けば楽になる

 悪夢に目覚めると東の空白む

 やる事なす事全てが裏目

 夢は卒業アルバムにはさんだまゝ

 微睡みに風車の響き

【自由律日記】「食べられる退屈(67)」

【自由律日記】「食べられる退屈(67)」

 富士山から逃げおゝせ異国に入る

 波音に目を閉じて高田松原

 春風の中 いちごに恋寄せる

 心奪われて奪い返せず

 まっすぐ進めど波が足掬う