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自由律俳句集「食べられる退屈」

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拙作自由律俳句集「食べられる退屈」の過去投稿分を集めました。
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2021年8月の記事一覧

【自由律日記】 「食べられる退屈」(39)

【自由律日記】 「食べられる退屈」(39)

 目の前でバスが出る 時刻表見づらい

 時化て波ばかりが踊り狂う

 音楽の正体を突き止めたくなる

 あの霧の中かもめはいくつ

 デジタルな言葉ばかりでは退屈

【自由律日記】 「食べられる退屈」(38)

【自由律日記】 「食べられる退屈」(38)

 試験監督中に尿意を催す

 バスで巡礼するな バスで

 グノシェンヌで眠れない

 聞き飽きた言葉で退屈になる

 試験中に便意を催す

【自由律日記】 「食べられる退屈」(37)

【自由律日記】 「食べられる退屈」(37)

 年賀状の写真に見慣れぬ子供

 のんびりしたくて新幹線に乗る

 本当に悲しい曲はメジャーコード

 先を越されてやりきれなくなる

 年賀状の写真に見慣れぬ犬

【自由律日記】 「食べられる退屈」(36)

【自由律日記】 「食べられる退屈」(36)

 ラグタイム聴きながら歩く

 床屋で居眠りした

 ラップ流れてスイッチを切る

 痒いのだか気持ちいゝのだか

 思わぬ場所で腹が鳴る

【自由律日記】 「食べられる退屈」(35)

【自由律日記】 「食べられる退屈」(35)

 誰も来るなと願う独りの露天風呂

 スピーカーの位置が気にかゝる

 踏み外した偽造の感覚

 気泡が破裂する前に逃げる

 誰もいない場所でくしゃみをする

【自由律日記】 「食べられる退屈」(34)

【自由律日記】 「食べられる退屈」(34)

 嗅覚がもたらす記憶が一番鮮明

 簡単に引っ越せると思った

 嫌いな歌ばかり流行る

 窓の外見て考えるのをやめる

 突然解放され戸惑う

【自由律日記】 「食べられる退屈」(33)

【自由律日記】 「食べられる退屈」(33)

 原文で小説を読む

 狭い田んぼに悠々と緋鯉泳ぐ

 靴の中の流動的で柔らかな感覚

 次のページに焼き芋の写真

 チャイコフスキーに痺れる

【自由律日記】 「食べられる退屈」(32)

【自由律日記】 「食べられる退屈」(32)

 廃駅に来ない列車を待つ時刻表

 無駄に積もった手紙に埋もれ

 闇雲に作れば良いというものでもない

 越えられない鉄橋の向こうから声

 楽して恥をかく