
自分がワクワクする未来に合わせて手段を選ぶ
こんにちは、freeeでプロダクト開発組織の"組織作り"を担当しているellyです。この記事は、freee DEI アドベントカレンダー「私とDEI」10日目の記事です。
普段は開発者の活躍を後押ししたり、組織全体を俯瞰してfreeeの取り組みを社内外で発信することが多く、あまり自分自身について詳しくお話しする機会はないのですが、今回はあえて自分の経験や考え方にフォーカスを当てて書いてみたいと思います。
あえて変化の大きい環境に身を置くことにした背景や、仕事や家庭といったあらゆる変化がある中でも、自分自身がワクワクする未来を実現するための”極端だけど効果があった私的ベストプラクティス”をご紹介します。
特に仕事とプライベートの両立に悩んでいたり、これから起こるかもしれないライフスタイルの変化を前に漠然とした不安があるといった方にとって、少しでも参考になったら幸いです。
組織作りとは?具体的に何をやっているのか
まず私が担当している仕事について簡単に説明させてもらいます。私はProduct Dev Successというチームのマネージャーを担当しており、プロダクト組織付の組織開発・人事といった役割で、一般的にはHRBP(HR Business Partner)と呼ばれる職種が世の中のイメージと近いと思います。
開発組織の大幅なスケールが始まりつつあったころ、私は中長期的な採用力強化の文脈からエンジニア組織の技術広報専任としてfreeeにジョインしました。その後、技術発信は開発組織を代表するカルチャーであり組織の重要な要素のひとつであること、そして組織の変化や進化を支えるために開発組織の組織作りをもっと統合的に強化していこうということで、2年ほど前にチームへ合流し、いまに至ります。
現在の具体的な業務を挙げていくと人事・評価制度、育成支援、異動やアサインの仕組み構築、組織ポートフォリオ設計、従業員エンゲージメント向上、コンディションケア、開発生産性向上、ナレッジマネジメント、財務管理、事業計画設計サポート、採用、組織ブランディング、社内イベント、会議体などの組織コミュニケーション設計、働き方アップデート、ダイバーシティ推進(ジェンダー、グローバル等)...などなど多岐にわたります。
端的にいうと、”プロダクト開発組織が良くなることならなんでもやる”で、実際にはこれらの業務は地味で泥臭い仕事が圧倒的に多く、組織開発やHRBPという言葉はなんだか私たちには格好良すぎる気がして(笑)、私の場合は”組織作り”という言葉が一番しっくりきており、よく使っています。
Product Dev Successチームの成り立ちや取り組みについては以下でVPoEの竹田が詳しく解説していますので、興味のある方はぜひご覧になってください。
VPoEが語るfreeeの開発組織作りのリアルな話
組織作りに「プロダクト開発のエッセンス」 を取り入れ、不確実性に向き合い続ける
freeeの場合、全社機能として人事、総務、労務、カルチャー推進といった組織や従業員を支える部門が存在しますが、全社の動きともアラインしつつ、プロダクト開発組織専任でそれらをより”開発者の目線”で深く考え実行していくのが私たちのチームの役割です。
freeeでは創業から急激に組織が拡大するに伴い、開発組織も同様にスケールし続けてきました。特に2021年頃からは年間の入社者が100名を超え、開発組織は非連続に大きく成長することとなりました。現在ではエンジニア、プロダクトマネージャー、プロダクトデザイナーなど様々な知見や経験を持った開発者が1000名以上在籍し、日々プロダクト開発に取り組んでいます。また、地方開発拠点の設立や、未経験者採用、グローバル採用など、組織の多様性もどんどん広がっています。

組織が急激にスケールすると、組織にはいろんなことが起きます。人もプロダクトもチームも急激に増え、役割やバックグラウンド、価値観の多様化、従業員同士の協力で成り立っていた情報伝達やコミュニケーションへの変化、いままでの仕組み・枠組みではカバーできないことなど、ハード面でもソフト面でも変えるべきことがたくさん生まれました。
変化の大きな会社で働くということ
前述の通り、freeeは規模こそ大きくなったものの、相も変わらず変化が多くそのスピードも速い組織です。
HRBPという仕事柄、日々たくさんの開発者に1on1で近況を聞いたり雑談したり、さまざまなワーキンググループに顔を出す機会が多いのですが、非連続な進化・変化が起きることが前提の組織だからこそ、自分自身のキャリアに対する悩みを持っていたり、将来的なライフイベントに対する漠然とした不安について話してくれる人もいます。
例えば、「仕事と育児をどうやったら両立できるか?」「将来子供を欲しいと思っているけど、そういったライフイベントを迎える前にどのような準備やキャリアを築いておくべきか?」といった質問をいただく機会も増えてきました。

この数年で開発組織の女性がかなり増えたことも嬉しいポイント。
そういったみんなが抱える不安や悩みは、私も例に漏れず抱えていて、毎日新しい変化やカオスのなかで、なんとかもがいて仕事をしています。
私のプライベートな環境はこのような状況です。
夫と4歳の子供との3人暮らし
夫婦は働き盛り真っ只中、子供は育ち盛り真っ只中
実家はいずれも遠方で、育児家事の面では気軽に頼れる人がいない
いち技術広報担当として入社しましたが、この3年で仕事の幅や役割の幅も大きく変化しました。それらの変化に対応したり乗りこなしてインパクトを発揮しようとするのは正直めちゃくちゃ大変だし、しんどいです。
なぜそういう環境に身を置くのか?
なんでわざわざ変化の大きいカオスな環境を選んでいるのか?ひとつ、私がこの道を選んだきっかけとして紹介したいエピソードがあります。
私は新卒時代は人材会社へ就職し、当時は営業企画や事業企画などを担当していました。freeeは2社目で、子供が生後間もない頃に、業界も仕事内容も違うこの環境へチャレンジすることを決意しました。
子供が生まれた当初、環境が一気に変わって、仕事とはまた全然違う未知の忙しさがありました。まわりは「せっかくの産育休で子供と過ごせる時間は貴重だからゆっくりしてね」「長く働き慣れた環境や仲間達の中に戻って少しずつリハビリがてら働くのが一番だよ」とアドバイスをくれる方がとても多く、自分自身も中堅社員として一定成果が出せる自信もあったし、代り映えしない毎日ではあるものの、いつかその安定的な見通しのつきやすい延長線上の道へ戻っていくつもりで日々を過ごしていました。”普通そんなもんだよね”と思っていました。
そんな私のたわいもない日常や仕事感を一通り聞いて、一人だけ正反対の意見をくれた人がいたのです。
「その未来はワクワクするの?自分がワクワクするほうを選ぶだけだよ」
それは前職の先輩で先輩ママでもありました。子育てしながら独立し事業を立ち上げている彼女。自分にとっては眩しい存在で、彼女にとってはたぶん何気ない一言だったと思うのですが、ふとシンプルに"あれ、自分にとってのワクワクってなんだ・・?"とその時に我に返りました。
たしかに言われてみれば、家族以外の人との会話が減っていることや、一日中子供とだけ過ごしている結果どんどん夫や周りの友達の仕事の話についていけなくなったり、そういった話自体面白く感じられなくなっていること、育休中にいつかやろうと思っていた自己学習的なものもいつの間にか遠ざかっていること、薄々自分で気づきながらも子供が小さいからというだけで無意識のうちに諦めたり言い訳していること、そういったことを改めて自覚したのです。
いつの間にか自分自身を主語として未来を考えなくなっている、そんなことにハッと気付かされました。
そこから、まずは行動あるのみ、いろんな人や会社の方に話を聞かせてもらうようになりました。
その中で、改めて私はやっぱり仕事はばりばりやりたいし、承認欲求だってあるし、仕事環境においては人とのコミュニケーションを重視していて、フラットだけど若干ウェットさが残るような企業カルチャーが好きで、いまの延長線上にはない全く違う仕事にトライしてみたいといったような方向性が明確になり、最終的には「新しい家庭環境で、新しい会社に身を置いて、一切知見のない新しい仕事に取り組む」という大変に極端(笑)でチャレンジングだけどなんかワクワクする、そんな選択をする決意をしました。
これは完全に余談ですが、そのころはコロナ禍だったこともあり、自宅からオンラインで転職活動をしていたのですが、freeeの最終面接では面接中に子供が泣きはじめてしまうというハプニングがありました。
これは一度仕切り直してもらうべきかとか、こんな状況を見て採用したいとは思ってもらえないだろう…と諦めかけていたのですが、当時のCPOが「子供をあやしながら面接を受けられるなんて、たしかに履歴書通りマルチタスクですね」とフォローしてくれて、そうやって私をユーモアを交えながら安心させてくれたこと、そのままフラットに話しをし続けてくれたことが大変にありがたかったし、本当にありのままの自分を見てくれている感じがして、本当に良い会社だな、と心から思って勝手に入社を決意しました(笑)
自分がワクワクして働き続けるための変化を乗りこなす私的ベストプラクティス
仕事の幅や役割もどんどん変化するなかで、"どうやったら仕事もプライベートも効率よくこなせるか?"は常に私の最重要アジェンダです。ここ数年試行錯誤するなかで、現時点での個人的ベストプラクティスをまとめてみます。大変に極端な事例なので賛否両論だと思いますが、もし誰かの参考になったら嬉しいですし、そういった変わった人もいるんだな、これもひとつの多様性だなという気持ちで読んでもらえるとありがたいです(笑)
①思い切って会社の近くに住む
いきなり究極の選択感があるのですが(笑)以下に挙げていくものの中でこれが私にとっては一番絶大な効果を生んでいると感じているものです。
家族の勤務先、子供の学校、家賃等の条件面、会社と生活圏は絶対に切り分けたい!といった志向など複雑な要件が絡み合うものなので、なかなか実現可能性は低いと思いますが、ただでさえ時間がないなかで時間をどれだけ有意義に使えるかはとても大事な要素だと思っています。
私の場合は会社も保育園も自宅も自転車で行き来ができる距離で、朝イチ保育園に預けてそのまま出社、お迎えのために中抜けする必要がなく18時頃まで会社で仕事をすることができます。
ミーティングにも基本的にオフラインで参加できるし、何より一度切り上げてまた仕事に戻ってキャッチアップしたり途中になっているタスクを思い出すということをしなくて済むため、思考が途切れることなくアウトプットできるのはかなり良いポイントだと思っています。
急な保育園からの呼び出しがあってもすぐに行けるというのも安心です。
②子供の生活リズムに合わせる
家族全員で同じ時間に寝て同じ時間に起きるスタイルです。かつては、寝かしつけをしてから夫婦でゆっくり話すとか、ちょっとタスクをするといった時期もあったのですが、思うように寝てくれないとストレスになったり、自分が寝落ちしてしまいやりたかったことがやれないことが多かったので、いっそ全員一緒にしてしまおう!と生活を変えてみました。結果的に夜早く寝て朝早く起きる、毎日8時間しっかり睡眠をとる健康的な生活を送ることができています。睡眠は本当に大事です!
③料理をやめてみる
料理を作ること自体はどちらかというと好きなほうではあるのですが、日々スーパーに行き、レシピを考えて、子供用と大人用の料理を作り、片付けをして..これが仕事をしながらだと時間的にもメンタル的にもけっこう辛いものがありました。
なので、現在はつくりおきのサービスを利用して毎週ごはんを届けてもらったり、簡単に調理ができるキットを利用したり、世の中の便利なサービスを全力で活用しています。毎日1-2時間が節約できていてその分ゆっくり食事や会話を楽しむことができています。料理を作りたいときにだけ作るというスタイルになったことでとても快適になりました。(が、味に飽きるかもしれないので検証中です)
④仕事もプライベートも両方全力
平日は仕事頑張ってるので土日は家でゆっくり過ごしたいとか、曜日問わずシームレスに仕事したいときにしたいとか、いろんな志向の方がいると思います。
私は仕事自体は好きなほうではあるのですが、それだけになってしまうと精神的にダメになってしまうタイプなので、平日は仕事にがっつり振る一方で土日は一切仕事を忘れて全力で遊ぶようにしています。
※ちなみに平日も、家に仕事を持ち帰ることはほぼありません。割り切って翌日に回します。
もちろん本当に疲れてしまったときは寝るのが一番なのですが、体力的な回復というよりは、全然違うことを考えて頭をほぐす時間が私にとっては必要なのだと思います。非日常な体験をしたりだとか、贅沢をしたりだとか、記憶に残ることをしたいです。
キャンプに行ったり温泉に行ったりホームパーティーをしたりしていることが多いのですが、平日と休日の頭の使い方を大きく変えることでリフレッシュできているのだと思います。
⑤保育サポートを活用する
実家が遠くて頼れる人がいないので、基本何かがあるときは夫か私のどちらかが子供と一緒に過ごしています。ただ、どうしてもやりたいことがあるときは思い切って託児サービスを利用しています。
直近だと、技術広報の仕事として技術書典17というイベントに参加していたのですが、イベントの主催者が託児サービスを無償提供してくれていて、大感激。子供を実際に連れていき、私は終日イベントに参加することができました。こういう配慮をしてくれる企業やイベントが増えるのはとてもありがたいですね。
託児サービスを利用するのはけっこうはじめ勇気がいると思う(私も不安だった)のですが、頼ってみるとなんて便利なんだ!と感動したり、サービスごとの特徴も分かってきたりして、自分にあったものが見つかってくるので一度思い切って試してみるというのは個人的にとてもおすすめです。
実際に、子供も新しいお友達や先生と一日楽しく遊んで、お迎えに行くとすっかりみんなと仲良くなって一緒に作った制作物を嬉しそうに見せてくれました。親や普段の保育園では体験できない新しい遊びや新しいお友達との出会い、そうやって子供がいろんな経験をして逞しくなっていくところも個人的には嬉しいポイントです。
⑥できる仕事の幅を横に増やしておく
私は新卒時代から企画職で、仕事は選ばず、声をかけてもらったら「じゃあやってみます」ととりあえず勧められるがままにやってみてきた人間です。どちらかというと周りが引き出してくれたものにのっかってきただけで偉そうなことは全く言えないのですが、その結果として現在は#営業企画 #事業企画 #財務 #計数管理 #人事 #組織開発 #カルチャー醸成 #ブランディング #採用 #ダイバーシティ推進 #プログラムマネージャーなどなど複数のタグ付けができるようになりました。
「やってみない?」と言われたら深く考えずにラッキー!と思ってまずやってみるくらいの心持ちで良いと思いますし、自分の興味のある分野のワーキンググループや社内コミュニティに入ってみたり、本業に加えて兼務でこういう仕事もやってみたいと提案してみる、というのも一つの手かなと思っています。(組織図上可視化されているとまわりからもより認知されるようになります)
いま担当している業務の延長線上でマネジメント経験を持っておかないと将来キャリア上困るのではないか、という不安を持っている人はけっこういると思うのですが、自分に複数タグがあると、例えばちょっとブランクでその分野の最新スキル・技術に追い付けなくなってしまったり、ポジションが他の人で埋まってしまったりしても、心持ちが全然違うはずです。
次はこっちの分野の比重を高めてみようと考えたり、領域を横に拡張することによってインパクトを増やすことも可能です。会社の人達から「そういえばこういう仕事のケイパビリティも持っているはずだな」と想起してアサインを考えてもらえる可能性も上がります。
⑦中長期的な難しい課題へ取り組む
中長期課題を解く仕事に身を置くことはとてもお勧めです。
家族や年齢のことを考えると急に家のことをやらないといけなくなったり、自分やまわりが体調を崩したり、自分の意思ではコントロールできないものの量が増えてきます。
日次や週次という単位で成果を出さないといけないとなると挽回するのが大変ですが、中長期の成果創出が必要な仕事においては、1日や2日で劇的に何かが変わることはそう多くはないので、ちょっとくらい思うように働けない期間があってもなんとかなります。その分抽象度が高く難しい取り組みや課題は多いと思いますが、そういった業務へ染み出す経験を早くから積んでおくというのは、のちのちとても役に立つと思います。
⑧はやくフィードバックをもらう、はやく人に頼る
自戒の念を込めて書いていますが、中長期的な課題を効率よく前進させていくためには「自分で持ちすぎない」というのがとても大事だと思っています。30-40%の進捗でも周りの人にライトに共有してフィードバックやアイディアをもらうこと、手戻りを減らすこと、やむを得ず自分が対応できないことが分かればすぐにまわりにフォローをお願いすること。これは責任を放棄するわけではなく、そのほうが結果的にチーム全体にも良い影響があることのほうが多いです。
すぐに成果が見えないからこそ長々と自分だけであれこれ考えてしまってボールを自分で持ち続けてしまうと、それによって手戻りが発生して結果想定していたよりも長く時間がかかってしまったり、自分は成果が出ていないんじゃないかと不安になったり苦しくなったりしてしまいます。自分の力だけに頼らず、まわりの人達に思い切って頼るという勇気が持てると良いのではないかと思います。
自分がワクワクする未来を考えて、それに合わせて手段を選ぶ
自分にとっての幸福感や優先したいことはその人自身の成長過程やまわりの環境によって、その時々で大きく変わるものだと思います。時にまわりとは違うこともあると思います。
同時に、世の中は確実に進化し、便利になり、多様化していきます。やりたいことを実現するためのHowはきっと探せば見つかります。(ちなみに私はいま子連れ語学留学サービスに興味深々です。)
そういった社会の進化の力も借りながら、一度制約をすべてとっぱらって、自分ファーストでワクワクする未来を考えてみる機会を作るというのはありかもしれません。
※開発組織における多様性の考え方や実際の開発者の属性についてはfreee 技術の日 2024にて「数字で見るfreee、組織の変化と働くリアル」というタイトルでお話ししていますのでぜひ興味のある方はこちらもご覧になってください。