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ケーキ屋さんの販売員が作文教室を開いた理由

私は3足のワラジを履いている。
会葬礼状ライター、企業研修講師
そして子ども向け作文教室の先生。


全てが「書く」に繋がる仕事をしているが
元々はケーキ屋さんで販売の仕事をする
主婦だった。


きっかけは一本のエッセイだ。
幼い頃から書くことが好き。
でも、子育て中は忙し過ぎて封印していた。


心の中のノートに記す日々が続く。書きたい
ことが溜まりに溜まったある日、私は娘の
成長についてエッセイを書き、投稿する。


それが新聞に載ったときは、小躍りなんて
もんじゃなかった。編集部から連絡があって
掲載されるまでの数日間はソワソワと
落ち着かなかったのを覚えている。


洗濯物をパンパンと叩いて干すときも
キッチンで味噌汁のお味噌を溶いているときも
活字になった紙面を想像してニヤついていた。
側から見たら、かなり気持ち悪い(笑)


曲がりなりにも、文章のプロに選んでもらえ
たのだ。ちょっと自信を持ってもいいのかなと
思った。そこからさらに数年後、秀作を集めた
本が出版され、私の作品も載せていただいた。


それを読んだ方が「これを仕事に活かして
みたら?」と声をかけてくださった。当時は
どう実現するか全くイメージがわかなかった
のだが、「書いてお金をいただく」よりも
やりたいことがあった。


それが「子どもに文章の書き方を教える」
だった。3人の子育てをする中で、ずっと
気になっていたことがある。


我が子の文章力のなさだ。持ち帰る作文を
読んで愕然とした。語彙力が乏しく、論点が
ズレていて、恐ろしく個性がない。


そのときの私の顔は、間違いなく
「ムンクの叫び」だったと思う。



当然、夏休みの宿題である読書感想文は鬼門。
小学生でも原稿用紙3枚半以上のノルマがあるが
日頃からそんな長文を書いたことのない我が子
たちは苦戦しまくった。


放っておくと8月31日まで手付かずになる。
それだけは何とか避けたいと思い、数日間に
分けてサポートした。小学3年生〜中学3年生
まで×3人分はキツいものがある。


まず、本を読ませるところからスタートするの
だから。そして、私もどうサポートするか
考えながら読まなければならない。


うぅ…アタシの読みたい本、読みたい(泣)



自分の子ども時代と比べて、文章を書く機会が
大幅に減っているとは感じていたが、心の
どこかで「学校で教えてくれてるでしょう」
と思っていた。というか、思いたかった。


でも、そこまで時間を割けていないのが
現実だったのだ。なんせ学校の先生は
めちゃくちゃお忙しい。
授業以外にやることが山のようにある。


配布用の印刷物を作り、宿題や提出物のチェック
をし、テストの採点をし、様々な行事の準備を
進め、職員会議やPTA活動にも参加し、そのうえ
毎年お上から新しい課題を出される。英会話やら
プログラミング、最近ならITサポートも。


時間と手間のかかる文章の指導は
「やるけど濃度の薄いもの」にならざるを得ない
のだろう。学習塾で一端を担うところもある
けれど、受験対策という内容が多いように思う。


もっと、書くことが楽しくなるような場所は
ないものか。だったら、私がやってみよう…
それが、教室を開いたきっかけだ。


とは言え、教員免許を持たない私がどうするのか。
学校にも塾にもできないことをしようと思った。
作文教室と聞くと、与えられたお題について
黙々と鉛筆を走らせるイメージがあるかも知れない。


でも、それなら私じゃなくてもできる。
とにかく「考える」「伝える」を楽しんで
もらおう。その先にきっと「書く」がある。
そう信じてスタートした。
立ち位置は「お母さん先生」だ。


勉強なんだけど、それとは感じさせないような
内容にしたい。だから、市販のドリルはほぼ
使わない。その代わり、たっぷり対話する。
うーん、うーんと考えてもらう。


こうなると、マンツーマンか少人数制でないと
行き届かない。職業としてのコスパは悪いかも
しれない(笑)でも、少しずつ少しずつ
子どもたちが変わり始めた。


結果として「国語の成績が上がりました」
「授業のまとめノートが書けるようになりました」
というお声を頂戴するようになった。学校の先生
から「どんな指導をされているのですか?」と
聞かれたこともある(笑)


何より嬉しいのが「作文教室、楽しい!」と
言ってくれること。全ては、大切なお子さんを
託してくださった親御さんたちのおかげだ。


お問い合わせは絶えないのだが、丁寧な指導を
したいので、もう新規の募集はストップしている。
学校のサポーターとして、地域の人がこういう
ことをする仕組みがあったらいいなと思う。


noteには文章の上手なママさんがたくさん
おられるので、人材はすぐに見つかりそう。
すぐにでもスカウトしたい人がたくさんいる(笑)


教室を開くとき、ある方にこんな言葉を頂いた。


「目の前の、たった一人の
お客様を大切に。」


たった一人に喜んでもらえなければ、多くの人
に選ばれることはない。ずっと胸に刻んでおこう。
初心の自分を見失わないように。

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