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愛はいつだってフラットじゃない

「本当に夫婦仲良いですよね!秘訣を教えてください」
このセリフを投げかけられるのは何回目…
いや何十回目だろうか。

父親の愛を感じられずに育った私は、
ずっと自分だけの居場所を求めていた。
16歳で家を出て、一人で生きていく決心をした時、
私には孤独が付きまとっていた。
だけど、その孤独の中で私は強くなっていった。
誰も頼れないからこそ、自分自身を守る力が必要だったし、その力を手に入れることができた。
そう思っていた。

でも、そんな私を本気で愛してくれる人が現れた時、
その強さはむしろ脆さになってしまった。
お互いに惹かれ合い、心から愛おしく思うほどに、
なぜか傷つけ合ってしまう。
彼の存在が大きくなるほど、自分が小さく感じることがあった。どんなに彼を大切に思っていても、
愛すれば愛するほど、言葉の端々でお互いを傷つけ、
遠ざけてしまうことがあった。

その時、ふと思い出したのが、大好きな映画
『冷静と情熱のあいだ』の中の一つのセリフ。
「人は一番好きな人とは一緒にはなれない」という言葉。その意味が、ようやく理解できた気がした。
愛が深まるほど、その裏側に潜む不安や恐れが大きくなるのだ。相手に対してこれ以上ないほどの思いを抱くことで、自分を守るための鎧が必要なくなり、
むき出しの心で向き合うことになる。
だからこそ、些細なことが心に刺さりやすくなるし、
感情がぶつかり合う。

でも、今では気づいている。
愛の中でぶつかり合うことは、決して悪いことじゃないということに。私たちは、愛する人と深くつながろうとするからこそ、時に不安や恐れを抱いてしまう。
そして、そんな不安を解消するために、
相手を試したり、距離を取ったりしてしまうこともある。
喧嘩をすることで、自分の中の弱さや恐れが浮かび上がってくるけれど、それは本当に相手を傷つけたいからではない。ただ、もっと深く理解してほしい、
自分の心を分かってほしい、という叫びなのだ。

だから、喧嘩をした時こそ二人の関係を見つめ直す
チャンスだと思う。
お互いを傷つけてしまう理由の裏には、
もっと深い愛や絆が隠れているのだから。
それに気づいた時、喧嘩は単なるぶつかり合いではなく
関係を深めるための過程になる。

傷つけ合うのは、それだけお互いを大切に思っている証拠だとも言えると思う。
だからこそ、その感情に正直になりつつ相手を理解しようとする努力が必要なんだと思う。
愛とは、時に美しくも残酷なものだけれど、
その揺れ動く感情こそが、私たちが本当に誰かを愛している証拠なのかもしれない。
私たちは、その愛の間に揺れながら少しずつ本当の自分を見つけ、相手と一緒に成長していく。

結局、傷つけ合うことさえも、私たちが愛を深めていくための一つの形なのかもしれない。

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