見出し画像

情熱より大切なもの

いつもの店で旦那と乾杯して数秒後、
「ね、ママ。K君に誰か紹介してあげてよー」
と娘に頼まれた。
k君、34歳、独身、経済的にも安定、真面目な好青年。
彼女が欲しいらしい。
急にそんな話を振られても、すぐに誰か思い浮かぶわけじゃない。でもその時、私の頭の中がピピピピピと誰かを探し出した。え、なんか彼氏欲しいって言ってた人いた気がする…。あー、そうだ!
「そろそろ落ち着きたい」って言ってたRちゃんの顔が浮かんだ。見た目は華やかだけど、彼女はどこか不器用で真面目なタイプ。

『バツイチで子供がいる子でいい子いるよ!』
と軽くK君に言ってみると、「全然!お願いします!」と秒で返事が返ってきた。
彼女にも話を振ったらokの返事。
ただ話が進んでいく中で、私の中には少し引っかかるものがあった。
K君は真面目で、経済的にも安定している。
でも、Rちゃんが以前愛していた男は、そういう「安全な選択」をするタイプではなかったのだ。
実際、私もRちゃんも、若い頃に選んだのは手のかかる
くそガキタイプだった。まぁ、ただ私たちの旦那たちがそうだっただけで…。

帰路に着きながらRちゃんに電話をかけ、
『K君、真面目でいい感じの人だよ』と話すと、
彼女は笑いながら「真面目なのが一番ですよね。飲み行ったら帰ってこないとか困りますよね笑!」と言った。
私も笑って『ほんと、そうだよね笑』と返す。
続けて『昔なら選ばないタイプかもしれないけれど、
今だからこそだよね』と私が話すと彼女も共感を示した。
若い頃、私たちの旦那たちはまるで5歳児のまま成長しきれないみたいな大人だった。
この男は変わらないと口で言ってはいても、
「いつか変わるかもしれない」と期待している自分がいたのかもしれない。

思い返せば、私たちの恋愛はまるで感情の嵐だった。
情熱が全てで、理性はどこか遠くに置き去りにされていた。今思えば、そんな無謀な愛にもどこか魅力を感じていたのだろう。でも、今は違う。
30代、40代になると、恋愛に対する見方が変わる。
もう情熱だけでは前には進めない。
私たちが今求めるのは、穏やかさと安心感。
かつての恋愛冒険レベルが120だったなら、今はレベル48くらいがちょうどいい。もう大きな波は必要なくて、
心が落ち着く関係が一番大事になってくる。

これは歳をとったからではなく、大人になったからだ。
私たちは、ただ情熱に振り回されるだけの愛ではなく、
そこに安心できる場所が必要だとわかった。
うちの夫も成長し、今では一緒に穏やかだけど
お互いを尊重できる日々を送っている。
愛の形が変わっても、それはただの「落ち着き」ではなく、真の愛を手に入れた証拠だと思う。

K君とRちゃんがどうなるかはわからない。
でも少なくとも、私たちはもう無謀な恋愛に飛び込む必要はなくなった。今の私たちが手に入れたいのは、若い頃には見えていなかった心から安心できる幸せだ。


いいなと思ったら応援しよう!