「音楽」「演劇」「下ネタ」が最強!なロックミュージカル「ロッキー・ホラー・ショー」について
何に触れても、反射的にその意味や理由を考えることが習慣になっている。学生時代、授業でダリとブニュエルの無声短編映画「アンダルシアの犬」を見て「意味がわからない。」と感じたとき、そんなことに気づいた。人の言葉にも、仕事をしていても、芸術に触れても、ずっと意味を追いかけている。「何故?どうして?」に溺れてしまいそう。
いつも舞台を観劇すると、メッセージに触れて「今を大切にしよう」とか「愛する人を大切にしよう」とか、しみじみと思ってみたりなんかするのだが、「ロッキー・ホラー・ショー」を観劇した今回は違った。しみじみするかわりに、ウェイウェイ言ってた。私の中のパーリーピーポーの部分が。そして、なんだかすごく心が満たされて、優しい気持ちになった。「ロッキー・ホラー・ショー」の世界に浸っている間は、意味・理由の呪縛から、解き放たれる。問うことなく、ただ音楽が気持ち良いから踊り、下ネタがおかしいから笑っていた。
序盤での"Time Warp"は、振りをレクチャーされたから踊ってみるという感じだったが(本編前に振りのレクチャーがある)、終盤での再びの"Time Warp"では、もうすっかりその世界の虜になってしまっていて、前のめりで踊っている自分がいた。もう楽しくて楽しくて。
これで最後の"Let’s do the Time Warp again"という時には、もう切なささえあった。この時間、終わらないで。やめないで、Time Warp。追い詰めないで、夢を消さないで。ワナホージュータイ、よ。
「ロッキー・ホラー・ショー」の世界に、演者自身のキャラクターが垣間見えるところも好き。フルター役の古田新太さんが、劇中のやりとりのどさくさに紛れてコロンビア役の峯岸みなみさんに「あんた、飲み屋では坊主にした子って言われてるのよ」と言ったり、曲中に「昔、福岡での公演の後、飲み屋で酔ったおじさんが背中にサインを書けと言ってきたから松方弘樹と書いてやった」というエピソードを挟んでくる。そんなネタが繰り出されるたびに、一瞬、物語から現実に引き戻されるが、演者も観客もそれを面白がってニヤニヤしている。その一体感がたまらなかった。舞台が終わる頃にはキャスト全員のファンになっていた。また長文になりそうなので惜しみつつ省くけれども、YAZAWAのバンドメンバー紹介ばりに長尺でキャスト一人ひとりのチャーミングポイントについて語れる。
考えることは大切だと思うから、暮らしの中で思考の停止を促してくるもろもろには抗いたい所存だが、そういうことから解放されるひと時も必要。「音楽」「演劇」「下ネタ」がハイクオリティで詰まった総合芸術、古田新太主演の「ロッキー・ホラー・ショー」は、色んなしがらみから解放してくれる。嗚呼ありがとう、ありがとう!
楽し過ぎて疲れた!
その晩はぐっすり眠れた!
幸せの極み!
嗚呼ありがとう、ありがとう!
後方の席からでも肉眼で武田信治さんの美しい筋肉のカットが見えた。
バッド、ナウ!
レッツドゥーザターイムワープアゲイン!
共に踊ろうよ。