BTSシュガのチケット闇がすごかった!ダイナミック・プライシングは日本を襲うのか?
シュガのD−DAYツアーは最高なるも、チケットは地獄案件
BTSシュガのソロワールドツアーである『SUGA | Agust D-DAY TOUR』
が世界をめぐりました。
8月にソウルでのコンサートを残していますが、よくぞソロで世界ツアーを乗り切ったと惜しみない拍手を送りたいです。
わたし自身は、初日のニューヨーク公演に行ってきました。
ぷがぷが、どんどん!
いやもう、これが予想曲線をぶち破ってのすばらしさ。
のっけから、新アルバム曲「ヘグム」代表曲の「デチタ」や「アガストD」と畳みかけるように進んで爆上がり。
攻撃的な高速ラップから、美しいメロディの曲まで手がけられる才気溢れるユンギさん。すばらしい!!!
ギターも弾ければ、ピアノも弾ける。踊りもうまい!
坂本龍一さんの映像も泣けたし、わたし自身は「アミグダラ」(扁桃体)に胸をわしづかみにされました。才能ありすぎ!
セクシーとカッコいいを掛けあわせて、そこにちょっぴりスイートさも合わせてみせる最高の舞台。
ユンギさんの音楽とライブに対する評価は、そのレベルの高さで、ダダ昇りでしょう。 大成功でしたね。
だが、しかし! このチケット販売が恐ろしかったのです。
ずばり闇。
もうライジングヘルかって闇ですよ、みなさん。
その名も「ダイナミック・プライシング」というシステムなのです。
これが日本でも導入されるんじゃないか? という不安に感じる方もいるでしょうから、実態をご説明しましょう!
HYBEが導入するダイナミック・プライシングシステム
BTSやセブンティーンなどが所属する事務所HYBEが株主むけに伝えたのが、「ダイナミックプライシングシステム」(需要によって価格が変動する方式)を導入するということ。
HYBE所属のアーティストは今後このシステムを採用していくとのことで、アメリカでは、さっそくD-Dayツアーと、TOMMOROWXTROGETHERの公演チケットでは、これが発動したのです。
今までとは、どう違うのか?
わたしはBTSのロス公演と、ラス・ヴェガス公演に行ったのですが、その時もチケットマスターで先行販売があり、しかしながらチケットは即効なくなるという状況だったのです。
そこでSUTB HUB(スタブハブ)という再販サイトでチケットを購入したんですが、なかなか値段がハネあがって滝汗でした。
それが正規の販売元であるチケマスがダイナミックにすると、どうなるのか。消費者にとって良い結果になるんでしょうか。
いやいやいや、それどころかD-DAYがとんでもない高額商品になったんですよ。
チケットの再販が禁止である日本と、合法であるアメリカ
まず前提として、日本ではチケットの再販が法律で禁止されていますよね?
転売ヤーはあくまで非合法なマーケット。
ところがアメリカでは、再販チケットが合法なのです。
合法的に、再販業者が入っていて、チケットを買ってリセールできて、その値段設定も業者の自由。
チケット販売はチケットマスターが独占していますが、再販業者は STUB HUB (スタブハブ) SEAT GEEK(シートギーク)など複数があり、売り手は複数の再販サイトで、チケット情報をポストしてもいいし、チケマスで再販してもオーケイ。
そもそもチケマスじたいが「再販オーケイ」という、胴元みたいなシステムなのです。
今回のユンギさんツアーでは、まず「アミ」のための先行セールがあったのです。
これはファンクラブ会員だけによる抽選で、わたしも申し込みましたが、みごと落選。
まわりも落選ばかり。
しかしながら友人Aさんは、プリセールに当たったのです。
すげー!クジ運強い!
その稀少な先リセールで、A子さんがチケットを買うことになったのです。
買っている間に値段が上がっていく鬼システム
人気公演の場合、チケットを買う人はチケマスのサイトにエンターしたところで、えんえんとキューを待たされるんですね。これは恒例のことで、まあ、オンライン上の待合室みたいなものです。
そしていざ順番になってチケットを買おうとしたところ、どんどん肝心のチケットがなくなっていくようで、彼女が漏らしたひと言が、これ。
「みなさん、これは闇です……」
えええええ。
なにかホラー映画のような展開!
地獄のチケット争奪戦から、ようやく生還したA子さんの話では、なんと買っている途中で値段がどんどん上がっていくというのです。
席が見つかってカートに入れても、同時に買う人がいて弾かれてしまう。
そして次の席を入れようとしても、さっきよりも値段が上がっている。
どんどん値段が上がっていくらしいんですよ、目の前で。
ひー!そんなの聞いたことがない!
これこそ「ダイナミックプライシング」システムで、需要の高いチケットは高くなるという仕組みなのです。
転売ヤーが再販すればこのくらいの値段になるだろう、という予想をAIが刻々と計算していくらしい。
それってタイタニック号が沈んでいくときに、救命器具が目の前で、「需要があるので高くなりまーす」と値上げしていくようなものじゃん。
まさか先行セールで抽選したファンが買っている段階から値上がりするとは。
恐ろしすぎるサドンデス・ゲーム。
なぜか再販サイトでは堂々とチケットが売られているナゾ
そしてチケマスではチケットは、たちまちソールドアウトになったのです。
ただしチケットが購入できたA子さんですら、実際のチケットが手もとに来るのはコンサートの3日前というシステム。転売できないように、ということなんでしょう。
そのいっぽうで、STUB HUB(スタブハブ) SEAT GEEK〔シートギーク〕では、堂々とチケットが再販されていたんですよ。
つまり再販業者は、一般的なファンより先に買えて、スタハブなどで再販できていたってことですね。
めちゃくちゃ不公平!
なぜそんなことが起きるのかというと、スタジアムが基本的にはスポーツのための施設であり、年間を通じてまとまった席数を抑えている業者がいるからだと考えられます。
航空チケットやホテルと同じですね。
今回、わたし自身は、ニューヨーク公演チケットをスタブハブで買ったのですが、すぐにチケットを渡すという連絡が来ました。
そしてその後チケットの値段が下がっていって、むしろ先行セールで買った人がソンするという値段設定になってしまったのです。
えええええー!
たしかにA子さんが買ったような神席(一階スタンド、約1000ドル)は、後からでは出なかったのですが、2階3階席は、値崩れに。
先行セールよりも、後のほうが安くなっているという地獄案件。
なんなんじゃ、それはー!
しかしそれについてチケマスが謝ったり、保障してくれたりわけでもなく、消費者がソンをかぶるという事態に。
今回はあまりの高騰に、一回かぎりチケマスが返金を受けましたが、ごく短い間のみの受付だったので、かなり懐が痛んだアミもいただろうと推察します。
だったら「ファン先行セール」の意味はあるの!????
はっきりいえば、まったくない、です。
テイラー・スウィフトのチケットは400万円超え
このダイナミックプライシングで、人気アーティストのチケットが高騰しているのは、アメリカでも問題になっていて、ことに大きな話題になったのが、テイラー・スウィフトのツアー。
なんとテイラーのチケットが、4万ドル(440万円)まで高騰するという騒ぎに。
ひええええ。車が買えるレベルじゃん!
これはさすがにアメリカでも問題視され、米上院反トラスト委員会による公聴会を開催して、チケットマスターの親会社であるライヴ・ネイションの代表取締役が呼ばれるという騒ぎにまで進展したのです。
かといって、お咎めなし。
なんら事態が変わっていません。
これほどチケマスがアコギな商売を続けていて、はたして独禁法に抵触しないのか、疑問なところです。
テイラーだと、巨大スタジアムの3階スタンド席、いちばんてっぺんでも1000ドル超え(約14万円)。
テイラーのチケットはチケマスではソールドアウトで出ていませんが、再販サイトではちゃっかり出ています。
テイラーのファンも若い女の子が主流だから、これはかなり親御さんが出しているケースも多いんでしょうね。
たとえば容易に想像がつくのが、家族会議で「テイラーに絶対に行きたい」とごねる娘。
「え、テイラーのチケットが2000ドル? あり得ない、そんな高いもの買ったら、夏の旅行に行けないぞ」
「要らない。旅行なんか行きたくない。テイラーがいい」
しーん。
凍りついて、目を合わせる両親。
みたいなね。
あるいはアメリカは離婚している家庭も多いわけで、そんな時に、娘からの「テイラーに行きたい」という泣きが入ったら、どうなるか。
離婚パパとしては、ここで点数を稼ぎたい! 娘のヒーローになりたい!
なにがなんでも買ってやる!
とポチるとかね。
このあたりはたんなる想像ですが、けっこうあり得るんじゃないかと。
そして日本でいえば、1000ドルのチケットは社会問題ですが、アメリカでは、けっこうあり得る値段。
ハリー・スタイルズでも、デュア・リパでも、リゾでも、良い席はそのくらいします。
ユンギさんも一階スタンド席は、1000ドルくらい。
フロア席では、2000ドルくらいはいっていました。
考えてみればイジョーな値段設定なんですが、今どきの人気アーティストの相場はこのくらいいくのがアメリカ事情なのです。
ビヨンセのチケットは、エリアごとに別日販売で混乱なし
そしてこのダイナミックプライシング制度ですが、実は決めるのはチケマス側ではなく、コンサート主催者側なのです。
ダイナミックプライシングを使うと、主催者側にとっても収入が増えるというメリットがあるからなんですね。
たとえば転売ヤーが100ドルで購入したチケットを700ドルで売っても、差額は業者の儲けになるだけ。
けれども、ダイナミックプライシングであれば、ピーク時の販売料金が、アーティスト側に入ることになるというわけです。
もちろんチケットが高くなるほど、チケマスもパーセンテージをがっちり取って儲かります。
つまり運営側としては、ダイナミックな方がダイナミックに儲かる! というわけですが、ファンにしてみれば、人気のライブほど、天井知らずの値段になるわけで、そんな無理ゲーはやめて欲しいところ。
ちなみにビヨンセのワールドツアーでは、エリアごとに販売日が分かれていたために混乱が起きず、わたし自身は運よくフィラデルフィアの先行セールに当たったので、とてもリーズナブルな値段で買えました。
買っている間に値段が上がるなんてことはなく、安心なチケット販売だったのです。
とすると、やはり運営側の方針が大きく左右するんじゃないかと、首をかしげたくなるところ。
日本でダイナミック・プライシング制度は黒船襲来になる?
はたして日本でも、この恐ろしいシステムが導入されるのか?
あくまで個人的な推測ですが、日本においては実施できないのではないかな、という気がします。
なぜなら日本ではチケット再販禁止制度があるから。
「転売ヤーが売ったらこのくらいになる」
という予想価格でチケットの料金が決められるダイナミックプライシングですが、そもそも再販が禁止という前提なのに、値付けをしたらおかしい。
そして日本の場合、アイドルのコンサートであれば抽選者しか買えなかったり、人気コンサートはチケットの枚数に制限があったり、あるいはチケットは一律料金が同じだけど当日まで席がわからないといったりした「規制」がありますよね。
つまり日本では「みんなが同じルールを守る」のがフェアだと考えられている。
いっぽうアメリカでは「買うのも、売るのも本人の自由」で、「自分が欲しいなら、金を出せば買える」のがフェアだと考えられているのです。
その「みんな平等主義」の日本で、いきなり「高く買う者勝ち」とはいかないだろうし、既存のチケット販売会社が許さないのではないかと思われます。
このHYBEの発表には、たちまちファンたちの間で大騒ぎになって、SNS上では「 #NoDynamicPrice 」というハッシュタグ運動が起きました。
日本でのダイナミック・プライシング導入に反対の人は、ぜひともSNSで反対したり、運営側にメールを送ったりしてみて下さい。
なぜか日本だけはコンサートでのカメラ禁止
また日本は独自の日本ルールがあるのも特徴で、コンサートでの撮影が禁止されていますよね。
今回のD−DAYワールドツアーで納得いかなかったのが、日本だけは「撮影禁止」であったこと。
アメリカのツアーでは当然、撮影していいし、そもそもユンギがみずからセルフィーを撮ってくれるというファンサービスもありました。これは日本以外の国でも同じ。
ところが日本では撮影禁止。
いったいなぜ?
アメリカでいえば、撮影や録音が禁止されているのは、クラシック音楽の演奏会や、メット・オペラ、あるいはブロードウェイやサーカスなどのショーなどで、これらは始めに「禁止事項」がアナウンスされます。
そもそもファンにしたら、録音状態の悪いクラシックやオペラなんて聞きたくもないでしょう。
いっぽうエンタメでは「プロカメラマンが使用するレベルのレンズや三脚使用」は禁止であるものの、一般観客のスマホ撮りはまったくオーケイ。
臨場感を伝えたいファンや、それを見たいファンがいるわけで、それが現代での最強のマーケティングになっている。
日本国内では影響力が強い事務所何社かが、アーティスト著作権保護のために禁止をしているんでしょうけれど、これはもはや時代遅れではないかと思います。
良きにつけ、悪しきにつけ、世界の流れのなかでガラパゴス化している日本のエンタメ事情ですが、ここ数年内にがらりと様相が変わるのではないかという予感がします。