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オミナエシの花が咲く頃

女郎花と書いて「オミナエシ」。
秋に黄色い小花をたくさん咲かせる植物です。背丈が高く、中には私の身長を超えるものもあります。「秋の七草」としても親しまれています。

ふわふわとした小花に、鮮やかな黄色!
春のミモザと並んで、個人的に大好きな花です。

ふと思い出すのは、華道を習っていた頃のこと。先生が茶道部の顧問だったご縁で、先生のご自宅で華道を教わっていました。毎回、お花はお花屋さんが届けてくださるので、私は手ぶらで通っていました。

まずは自由花のおけいこ。周りの空間を活かし、作品の中に自然を感じられるように花をいけます。いけた後に先生が手直ししてくださるのも楽しみでした。

作品の後ろに山並みを、中央には池、その手前に可憐な花々を配置。主役が引き立つように、あえて花をいけない空間も残します。枯れた花や曲がった枝も活かしていけるのが華道の面白さです。

「手前の花から中央の池を抜けて、山並みまで風が吹き抜けるように」。それが先生の口ぐせでした。

ある日、私のいけた作品がどうにも上手くいかず、先生も調整に苦戦されていました。そのとき、先生は「今から庭に行って、オミナエシを2、3本切ってきなさい」とおっしゃったのです。

「庭ですか?」私は少し戸惑いながら、庭へオミナエシを取りに行きました。

作品の後ろに高くオミナエシをいけると、驚くほど作品にメリハリが生まれ、ダイナミックな印象に一変!遠くの山を模した花が、作品全体を立体的に仕上げてくれました。

作品が一気に垢抜けただけでなく、庭から摘んだ花をそのままいける工程がとても新鮮で、自然の一部を作品の中に取り入れることの意味を感じた瞬間でした。

今でもオミナエシの花を見るたびに、先生の言葉を思い出します。部屋を出て、既存の枠を超えることの大切さを。

より豊かな表現につながり、より豊かな生き方につながると信じられるのです。

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