見出し画像

本物の絵が一枚もないモネ展へ

ところざわサクラタウンで開催中の「モネ イマーシブ・ジャーニー 僕が見た光」展に行ってきました。日本でもあちこちで本物のモネ作品が見られますが、今回はあえて本物の絵が一枚もない体験型デジタルアート展示へ。

デジタルアート展示鑑賞は今回が初めてです。簡単にご紹介しますね。

本展示は、主に「デジタルアート展示」と「モネと印象派に関する展示」のエリアに分かれています。

まず、デジタルアート展示エリアへ。

本エリアでは、会場の壁や床一面にモネの作品が投影されます。モネの絵が10倍以上に拡大され、動きを伴って展示。映像に合わせた音楽も流れ、迫力満点です。

展示は約30分で一巡する仕組み。

当初、見える範囲がすべてだと思っていましたが、後ろ側にも違った作品が投影されていてびっくり。映像は壁一面、360度に映し出されます。

ちょうど空いたソファ席に移動した瞬間、今まで見えていなかったサン=ラザール駅が突然現れました。汽笛の音も聞こえて、まるで駅のホームに迷い込んだかのようです。

当初はどこまで投影に没入できるのか半信半疑でしたが、次第に引き込まれていきました。

何度も現れるモネの描いた景色。光あふれる風景の中で過ごしている、明るい表情の人々。フランス各地の名所が次々と映し出され、まるで旅をしている気分になれました。

床に座ったまま大聖堂を見上げ、セーヌ川を見下ろします。

一番のおすすめはモンマルトルの丘。本当に丘の上に立って、パリの街並みを眺めた気分になります。

モネが晩年を過ごしたジヴェルニーの庭も登場。庭に咲く花や揺れる木々、睡蓮が浮かぶ池。足元には木漏れ日の影が差し、見上げると青空が広がります。

美しい色彩にあふれた時間を過ごすことができました。


結果、デジタル映像展示コーナーには1時間半滞在しました。一巡目は動く絵画にただただ驚き、二巡目は視点を変えて新たな発見。三巡目はハンモック席でゆったりと揺れながら鑑賞。まるでゆりかごのよう。

目の前の木立が揺れ、足元に落ちる影も揺れ、モネの世界に入り込んだかのようでした。

映像展示を抜けると、後半は印象派の展示を模したコーナーがありました。ここでは周囲の人も会話を楽しんでおり、リラックスしながら鑑賞できました。美術館での静寂とは異なり、小さいお子さん連れでも気兼ねなく楽しめそうです。

美術館では、通常数分程度で次の絵に移りますが、ここでは何度もじっくり眺めることができました。映像展示で何度もアップになった部分を観察し、少し離れて全体を俯瞰します。

映像で他の景色と融合されていた部分を見つけることも、楽しみの一つでした。

「サン・タドレスのテラス」の原画
テラスを模した席で、海を眺めます


額に収まった絵画を鑑賞して、また新たな発見がありました。

映像の中で見た細部が、くっきりと記憶に残っていました。揺れる旗や水面を進む船など、頭の中に残っていた細部の印象が際立って見え、まるで別の作品のように新鮮に映ったのです。

立体的に浮き上がり、色合いや質感まで変わって見えた気がしました。子どもと映像を振り返り、まるで間違い探しを楽しむ感覚。対話を通して、新たな視点も生まれました。

映像で細部に注目し、絵画で全体を味わうこと。
細部と全体の対比が、終始心地よかったです。映像で分解された要素が、再集約されて絵が生まれたかの錯覚で、まるで画家が創作する過程を追体験できた感覚でした。

五感を駆使したこの展示は、鑑賞後も長く脳裏にイメージが残ります。想像以上にモネの世界に入り込めたように感じました。思えば、最近はインスタレーションを取り入れた作品展が増えています。絵画の楽しみ方も年々変わっているのですね。

国立西洋美術館で開催されているモネ展と合わせて鑑賞すると、さらに新しい発見があるかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?