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interview Nate Smith:2024 outtake (5,500字)

ドラマーのネイト・スミスにインタビューをしたものをRolling Stone Japanに掲載した。ここではネイト・スミスとファンクの関係を丁寧に聞いて記事にしている。ファンク・ドラミング入門って感じで非常に面白いものができたと思う。

この取材では話の流れでいろんなトピックについて聞いたんだが、すっきりまとめるためにいろいろ省いた部分がある。そこも面白いのでせっかくだから、noteにアップすることにした。

個人的に聞きたかった『Kinfolk 2』の話ができたのは良かった。こういうトピックはあのタイミングでのRolling Stone Japanの記事にはハマらないが今、語られるべき重要なトピックなので、どこかでシェアするべきだと思う。

◉カート・エリング『SuperBlue:Guilty Pleasures』

――最近の仕事について聞きたいんですが、カート・エリングの『Guilty Pleasures』でもあなたはドラムを叩いていますね。あのプロジェクトもファンクを感じるものでした。

それを語るにはチャーリー・ハンターの話をしなければいけないね。彼は親指でベースを弾き、ネックでその他の部分を弾くというハイブリット・ギターを使った演奏スタイルを発明し、完成させた。とにかくすごい演奏をするんだ。チャーリーがいれば、バンドは簡単にファンキーになれる。そしてチャーリーはバンドをまとめる接着剤みたいな存在にもなる。

そして、カート・エリングはインプロヴァイザーとして、パフォーマーとして、全く恐れを知らない。ジャズ・シンガーとしてファンキーに歌うことも、ファンクの聴衆に向かってジャズを歌うことも恐れない。彼のその大胆さが僕は好きなんだ。そして、僕とチャーリーの間で起きている化学反応があのバンドをうまく機能させていると思うよ

◉ブリタニー・ハワード『What Now』

――あと、ブリタニー・ハワードのアルバム『What Now』も本当に素晴らしかったです。60年代、70年代的なの質感もありつつ、リズム面では複雑なフレーズが入っていたり。あのアルバムについても聞かせてください。

もちろん。あのアルバムについては是非語りたいんだ。そもそも僕はブリタニー・ハワードの大ファンだから。それに彼女と共同プロデューサーのショーン・エヴェレットとの仕事がすごく楽しかった。彼は録音やミックスのやりかたが天才的で、他に類を見ない。想像力が豊かなんだ。

そして、僕がブリタニーと一緒に仕事をするのが大好きな理由は、彼女の作品では、僕がドラマーとしてクリエイティヴに貢献できる場が用意されているから。彼女はスタジオにたくさんのデモを持って来る。そして、 “このパートを再現してほしい”って僕に指示をする。もちろん基本的には彼女が持ってきたパートを忠実に演奏しようとするんだけど、たまに自分っぽくなったりもして、デモと違うものになったりもする。でも、彼女はそれをすごく気に入ってくれるんだよね。彼女は、皆が自分らしくレコードに貢献できる空間を作る方法を知っている。だから、僕は彼女のプロジェクトが大好きなんだ

――前作もすごく自由なスペースがありましたよね。あなたの個性が活きていると感じます。『What Now』はドラムのフレーズだけでなく、音色や響き、テクスチャーにもこだわりを感じました。あなたはどんなことをやったのでしょうか?

あのアルバムはナッシュビルでレコーディングしたんだけど、ブリタニーから「色々なドラムを持ち込んでほしい」と言われたから、僕はナッシュビルのビンテージ・ドラムショップに行ったんだ。そして、3つのキット選んだ。大きなベースドラム、そしてジャズ用の小さなもの、そしてもう一つはその中間で20インチのベースドラム。レコーディング中は、その3つのドラムを行ったり来たりしながら叩いていた。大きなタムを使うこともあったけど、ジャジーにしたいときには小さなドラムキットを使うこともあった。つまりセッションごとにドラムを変えていたんだ。

そして、ここではレコーディングを担当したショーン・エヴェレットの話をする必要がある。彼がドラムをレコーディングする方法は、とても想像力に富んでいた。彼はスネアドラムにマイクを当てて、それをギターアンプに通したり、P Aに通したり、その両方に通したりして、部屋の中のマイクだけでは作り出せない質感を生み出していたんだ。彼はいつも何かしらを加えていた。だから、あのアルバムで聴けるドラム・サウンドには、彼のイマジネーションが大きく影響している。

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