「好きなことで生きていく」の欺瞞
YouTubeのキャッチコピーに「好きなことで、生きていく」というのがあったと思う。
堀江貴文などの自己啓発系インフルエンサーも、好きなことだけで生きる云々とお決まりのように言うが、もちろんあれは信者向けの言葉であり、「好きなこと(だけ)で生きていく」のは現実には難しい。
先日、梅原大吾というプロゲーマーの動画を観ていたのだが、漫画家志望の人の「描きたいものは一般ウケしない。好きなものを描いて生計を立てていきたいが世の中それを許さない」といった悩みに対して、「そりゃそうだ、俺だってただ単に勝つだけなら強キャラ使って勝てば良いけど、それだとつまらない試合になるので、敢えてこれ使って勝ったら面白いしアツいよねってキャラで挑むわけで…(意訳)」というような返答をしていた。
eスポーツの第一人者であってもこうした考えを持って仕事しているのであり、勝つ事だけが目的ではなく、観客を楽しませようという視点を忘れてはいない。
前回の何者にもなれない人々の話にも通じるが、沈みかけのビジネスを抱えたままマルチやオンラインサロンに足を突っ込み、インフルエンサーやディストリビューターに憧れるような起業家は「どうやって人の目に留まるか」「自分のビジネスは本当に世の中から必要とされるものなのか」という基本的な事をあまり考えず、ひたすら「自分が出来る事」「自分がしたい事」をゴリ押ししている人が多いのではと思う。
「俺はまだ本気出してないだけ」という漫画の中で、主人公が会社員だった時代に甘いペンという商品企画を通そうとしていたというエピソードがある。
主人公が幼少期に鉛筆をよく齧っていたので、甘くすればきっと子供は喜ぶだろうという発想の元に生まれたのだが、当然ながらそのペンのお金を支払うのは親たちであり、子供が学校で常にペンを舐めている…という悪癖を身に着けさせたいワケがない。
結局、甘いペンの企画は流れるのだが、こうしたそもそも需要のないビジネスも継続すればなんとかなると勘違いして突っ走っている人も少なくないのだろう。
以前、自分を好き過ぎるあまり(?)、自分自身をコンテンツとしてのし上がっていこうとしていた人物がおり、ある意味興味深く見ていたのだが、やはり世の中から必要とされるコンテンツにはなれず、数年かけたセルフブランディング計画も現在はほぼ頓挫しているようだった。
なんとなく、2018年頃にわずかに流行ったがんそんという人物と被るのだが、行動力をウリにはするものの勢いはがんそんに遠く及ばず、企画は内輪ウケ止まりで新たな支持層も獲得出来ず、数十人ほどいた支持者(というよりはネッ友か)も時と共に数を減らしていったように見える。
まさしくインフルエンサーを目指すも叶わない者の地獄がそこにあった。
しばしば誤解している人がいるのだが、インフルエンサーとして自分そのものをウリに出来ている人はそれほど多くなく、実際には皆ほとんど武器を手にして戦っている。
それは楽器であったり、ダンスであったり、企画力であったり、知識力であったり、はたまた陰謀論であったりするのだが「ねぇみんな!私凄い人なので私という人間を見て、私の事をよく知って欲しい!」ではなんのニーズも満たしていない。
しかし別に揶揄するつもりはなく、間違いなく行動力という武器はある(しかしこの武器を持っている人は世の中に結構いる。1割ぐらい)ので、なにかしら掛け算で専用武器を作り、世のニーズを満たす事が出来ればチャンスはあるんだがな…と思う。
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