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映画 チャレンジャーズを観ての感想

※ネタバレ有 注意

パトリックとアート、幼なじみダブルス男子のブロマンス的な関係の間に、突如現れた女子テニス界のホープ、タシ。タシの圧倒的な魅力に男子ふたりはすぐに彼女に夢中になってしまった。テニスを通じて、友情以上恋愛未満の強い結びつきを持っていた男子ふたりを翻弄し、勝った方を選ぶと言い放った彼女。略奪愛?それが彼女のルール。ゲームの命運は彼女の手に握られた。


本作は監督の得意とするブロマンスや思慕の念が随所に散りばめられたファン垂涎の作品でありながら、それでいてテニスを通じた男女間の恋愛としても成立している作品というのが素晴らしい点である。(前情報のない旦那さんはブロマンスに気づかず、エンタメ作品として楽しんでいた。)


監督は過去作では大学生と大学教授の息子の恋愛や、アマゾネスな女子バレエの名門校など、動と静で言えば静的な印象が強かった。今回テニスゲームという動をモチーフに選び、アップテンポな音楽に乗せて、静的になりがちな恋愛模様をテンポ良く展開している。この塩梅がちょうど良い!そしてシーンに合わせた選曲が良い!わしの好きな音楽がいっぱい!監督の作品、音楽が良いと前々から思っていたが、本作で確信した!音楽の解釈が一緒や…!わ~い!最後のエンドロールの音楽と演出も超かっこいい〜!

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テニスのアフターパーティーで、タシが男子ふたりのブロマンス的な関係をすぐに察知し、その恋愛未分化だが友情という絆以上の結びつきの強さをあえて逆手にとって、テニスを絡めた略奪愛に持っていくあたりは当初彼女に恋愛の妙があったと言えよう。浜辺のシーンを回想しても、タシの方が早熟で自立心の強い女性であることが伺える。


テニスで勝ったパトリックは、才気煥発なタシをねじ伏せてやろう、と意気込んでいた。パトリックはタシ以前にも女の子と付き合っていた節があり、ホテルの受付のおばちゃんとの交渉術からしても、女性の扱いが上手いようだ。一旦はタシと別れたものの、タシが将来に不安を感じているシーンにタイミング良く現れ、タシのこころを巧みに揺さぶっている。余談だが、ホテル内にいたゲイカップルにキュートと言われていることからも、彼が魅力的な男性であることが見て取れる。

アートは対照的に、ふたりの恋愛が本当に本物なのか、遊びならふたりのためにならないから…と勝負に負けたにもかかわらず、卑怯にもパトリックとタシの不安を煽る。タシが怪我した後、タシにアートのコーチになってほしいと言ったシーンから、アートはタシのことを恋愛としても、テニスプレイヤーとしても思慕の念を抱いていたことが分かる。パトリックと比べて恋愛は一歩後ろから、タシに対しても憧れの女性として扱っている感じである。

パトリックとアートはジュニア時代からダブルスを組み、ふたりの阿吽の呼吸たるや、テニスコートでのバックの置き方、ラケットの取り出し方が一緒になっていたり、食堂でチュロスを食べるシーンで椅子を同じタイミングで引き寄せるなど、全く行動が一緒なのであった。子供の頃からテニスという同じ目標に向かって、一緒に汗をかき、苦楽を共にしたパトリックとアート。友情以上恋愛未満のふたりの精神的な結びつきは随所に散りばめられている。性の目覚めやその手ほどき。観客席でパトリック用に空けた隣の席を気にするアート。カレッジのテニスコートで再会し、無邪気に駆け回るふたり。彼らにはふたりだけの空間があった。

テニスコートで彼らがプレイしている時、タシはその空間に入り込めなかった。ふたりの勝ち負けは、最後まで彼女にも分からなかった。タシはパトリックとアートのブロマンス的な結びつきを軽く考えていたのかもしれない。

ブロマンス的な雰囲気(におわせ)は監督の過去作でも頻繁に用いられてきていたが、本作ではスポーツマンシップに則り、紛うことなきどストレートなブロマンスの世界観が繰り広げられている。枚挙に暇はないが、数々の名シーンにわしのこころは幾度となく躍った。いろんな意味で監督に感謝している。

余談だが、ロッカールームに桃が置いてあったのも、過去作を連想させるように、とのファンサービスであろう。

#チャレンジャーズ #challengers #ルカ・グァダニーノ


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